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勇者祭編
その77 ファーストコンタクト☆
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〈剣術〉の授業が終わり、生徒が次の授業への移動を始めた。
〈1-A〉は〈ゼルトル語〉の授業。
教室までは〈闘技場ネオ〉からすぐなので、時間に余裕がある。
オスカーの剣技に可能性を見出した天王寺テオは、なんとかして彼と話がしたいと思っていた。
同じ学級に所属していながら、一度も話したことのない相手に話しかける――それも、相手は西園寺オスカー。
何かと不思議な生徒だ。
どんな反応が返ってくるのか予測できない。
それに――。
(兄上が、西園寺くんに目をつけてたし――)
生徒会幹部であるエイダンの西園寺襲撃事件も記憶に新しい。
完全に実力主義であり、全力主義のエイダンが彼の実力を認め、その上で勝負を持ちかけたのだとすれば――西園寺オスカーこそ、弱い自分を変えてくれる存在だ、と。
テオは確信に近い感情を持つ。
「あの、西園寺くん――」
闘技場から出た廊下。
隙をうかがって接近を試みるも、オスカーの周囲を取り囲む四人の生徒達。
(一ノ瀬グレイソン……)
そもそも、少し前からおかしいとは思っていた。
実力も備えていて、女子から多大な人気を誇るグレイソンが、ある時を境にオスカーにばかりくっついているのだ。
何かがあったとしか思えない。
(二階堂さんに、若槻姉妹まで……みんな西園寺くんのところに……)
どうして周囲は何も疑問視しないのだろう。
テオは首を傾げる。
西園寺オスカーという少年には何かがある。そして、それは多くの人を惹きつける魅力を誇っている。
(もっと早くから気づくべきだった)
一生の後悔と言わんばかりに頭を抱え、再び接近する。
「あ、あの――ッ」
「どうした?」
――良かった。やっと言葉が届いた。
そうテオが安心した矢先、あることに気づく。
(さっきまであそこに――)
視線の先にオスカーはいなかった。
ずっとグレイソン達に囲まれ、廊下をグングン進んでいたオスカー。視線の先にいたはずなのに、今は――。
――すぐ後ろにいる。
「――ど、どうやって?」
「なに、ちょっとした手品だ。気にするな」
余計に気になるんですけど、と思いながら、テオはひとりだけで後ろに立っているオスカーに振り向く。
エイダンほど体格がいいわけではないが、百八十CМほどの身長を持つテオからすれば、百六十CМのオスカーはかなり小柄で愛らしささえ感じた。
こうして近くで見ても、溢れ出る魔力や実力者の雰囲気は感じ取れない。
人畜無害な少年、といったところか。
それは意図してオーラを封じ込めているのか、それとも戦えばわかる系の強者か。テオは勝手に想像を膨らませる。
「それで、俺に何か話があるんだろ?」
オスカーが優しく微笑む。
(思っていたより話しやすそう)
この微笑みは、テオの中で張り詰めていた緊張を一瞬にして緩める威力を持っていた。それも彼の能力であれば凄すぎる、と再びテオは感激する。
「実は、その……」
「焦る必要はない。もし時間がかかるようなら、また別の時にでも時間を作ってゆっくり話せばいいだけだ」
「西園寺くん……」
深い意味はないが、テオは胸がドキッとするのを感じた。
きっとオスカーは女子からモテるのだろう、と勝手に決めつける。だから学年一の美少女であるセレナを彼女にできるのだ、と。
実際はそんな事実などないのだが、これは一年生の間で噂になっていることでもある。
「それで――」
オスカーが急に表情を変え、声を低くした。
二人を取り巻いていた柔らかい雰囲気が、一瞬にして冷たく張り詰めたものに変貌を遂げる。
「――気づいたのか?」
よく耳をすませなければ聞き逃してしまうほどの声で、オスカーが問うた。
ゾクッと。
喉元に刃物を当てられたかのように。
テオの心臓が止まる。
もうオスカーは勘づいているのだ。
実力を見破られてしまったことに。そして、それを知った自分を殺すつもりだ、と。テオは思った。
「その反応を見る限り、気づいてしまったようだな」
オスカーの顔に笑みが戻る。
そこに警戒していた殺意はなく、テオはそっと胸を撫で下ろした。
どこか感心したような様子さえ感じるオスカーの微笑み。そして、彼がまた口を開いた。
「君は天王寺テオ――天王寺エイダンの弟か?」
「お、おれの名前、知ってたの?」
「当然だ。クラスメイトの名前くらい覚えてる。それで、君が俺に話したいことは、エイダン絡みのことか?」
「いや……違う、けど……」
直接的にエイダンに関わるわけではない。
しかし、その動機はエイダンに直結してしまうものだ。どう説明すればいいのか迷っていると――。
「時間切れか」
オスカーが天を仰ぐ。
とはいっても、ここは廊下なので、空は見えない。
そのままテオの右肩にそっと左手を添えた。
「また改めて話をしたい。俺の実力に気づいた件も含め」
「そ、それじゃあ、今日の昼休み、ボルケー神殿に来て。それと、おれ、エイダンとはあんまり仲が良くないんだ……だから、その……」
「詳しい事情はその時に聞こう。風が俺を呼んでいる」
「え?」
オスカーが霧になる。
その光景は、少し前に見た、学園長の鳳凰イバンが退場する時とよく似ていた。
(西園寺くん……)
テオは、その後もぼーっとオスカーの幻影を眺め続けていたため、〈ゼルトル語〉の授業に遅刻した。
《キャラクター紹介》
・名前:天王寺テオ
・年齢:17歳
・学年:ゼルトル勇者学園1年生
・誕生日:7月6日
・性別:♂
・容姿:前髪を下ろした赤髪、紅目、笑った時のえくぼ
・身長:182cm
・信仰神:炎の神ボルケー
〈1-A〉は〈ゼルトル語〉の授業。
教室までは〈闘技場ネオ〉からすぐなので、時間に余裕がある。
オスカーの剣技に可能性を見出した天王寺テオは、なんとかして彼と話がしたいと思っていた。
同じ学級に所属していながら、一度も話したことのない相手に話しかける――それも、相手は西園寺オスカー。
何かと不思議な生徒だ。
どんな反応が返ってくるのか予測できない。
それに――。
(兄上が、西園寺くんに目をつけてたし――)
生徒会幹部であるエイダンの西園寺襲撃事件も記憶に新しい。
完全に実力主義であり、全力主義のエイダンが彼の実力を認め、その上で勝負を持ちかけたのだとすれば――西園寺オスカーこそ、弱い自分を変えてくれる存在だ、と。
テオは確信に近い感情を持つ。
「あの、西園寺くん――」
闘技場から出た廊下。
隙をうかがって接近を試みるも、オスカーの周囲を取り囲む四人の生徒達。
(一ノ瀬グレイソン……)
そもそも、少し前からおかしいとは思っていた。
実力も備えていて、女子から多大な人気を誇るグレイソンが、ある時を境にオスカーにばかりくっついているのだ。
何かがあったとしか思えない。
(二階堂さんに、若槻姉妹まで……みんな西園寺くんのところに……)
どうして周囲は何も疑問視しないのだろう。
テオは首を傾げる。
西園寺オスカーという少年には何かがある。そして、それは多くの人を惹きつける魅力を誇っている。
(もっと早くから気づくべきだった)
一生の後悔と言わんばかりに頭を抱え、再び接近する。
「あ、あの――ッ」
「どうした?」
――良かった。やっと言葉が届いた。
そうテオが安心した矢先、あることに気づく。
(さっきまであそこに――)
視線の先にオスカーはいなかった。
ずっとグレイソン達に囲まれ、廊下をグングン進んでいたオスカー。視線の先にいたはずなのに、今は――。
――すぐ後ろにいる。
「――ど、どうやって?」
「なに、ちょっとした手品だ。気にするな」
余計に気になるんですけど、と思いながら、テオはひとりだけで後ろに立っているオスカーに振り向く。
エイダンほど体格がいいわけではないが、百八十CМほどの身長を持つテオからすれば、百六十CМのオスカーはかなり小柄で愛らしささえ感じた。
こうして近くで見ても、溢れ出る魔力や実力者の雰囲気は感じ取れない。
人畜無害な少年、といったところか。
それは意図してオーラを封じ込めているのか、それとも戦えばわかる系の強者か。テオは勝手に想像を膨らませる。
「それで、俺に何か話があるんだろ?」
オスカーが優しく微笑む。
(思っていたより話しやすそう)
この微笑みは、テオの中で張り詰めていた緊張を一瞬にして緩める威力を持っていた。それも彼の能力であれば凄すぎる、と再びテオは感激する。
「実は、その……」
「焦る必要はない。もし時間がかかるようなら、また別の時にでも時間を作ってゆっくり話せばいいだけだ」
「西園寺くん……」
深い意味はないが、テオは胸がドキッとするのを感じた。
きっとオスカーは女子からモテるのだろう、と勝手に決めつける。だから学年一の美少女であるセレナを彼女にできるのだ、と。
実際はそんな事実などないのだが、これは一年生の間で噂になっていることでもある。
「それで――」
オスカーが急に表情を変え、声を低くした。
二人を取り巻いていた柔らかい雰囲気が、一瞬にして冷たく張り詰めたものに変貌を遂げる。
「――気づいたのか?」
よく耳をすませなければ聞き逃してしまうほどの声で、オスカーが問うた。
ゾクッと。
喉元に刃物を当てられたかのように。
テオの心臓が止まる。
もうオスカーは勘づいているのだ。
実力を見破られてしまったことに。そして、それを知った自分を殺すつもりだ、と。テオは思った。
「その反応を見る限り、気づいてしまったようだな」
オスカーの顔に笑みが戻る。
そこに警戒していた殺意はなく、テオはそっと胸を撫で下ろした。
どこか感心したような様子さえ感じるオスカーの微笑み。そして、彼がまた口を開いた。
「君は天王寺テオ――天王寺エイダンの弟か?」
「お、おれの名前、知ってたの?」
「当然だ。クラスメイトの名前くらい覚えてる。それで、君が俺に話したいことは、エイダン絡みのことか?」
「いや……違う、けど……」
直接的にエイダンに関わるわけではない。
しかし、その動機はエイダンに直結してしまうものだ。どう説明すればいいのか迷っていると――。
「時間切れか」
オスカーが天を仰ぐ。
とはいっても、ここは廊下なので、空は見えない。
そのままテオの右肩にそっと左手を添えた。
「また改めて話をしたい。俺の実力に気づいた件も含め」
「そ、それじゃあ、今日の昼休み、ボルケー神殿に来て。それと、おれ、エイダンとはあんまり仲が良くないんだ……だから、その……」
「詳しい事情はその時に聞こう。風が俺を呼んでいる」
「え?」
オスカーが霧になる。
その光景は、少し前に見た、学園長の鳳凰イバンが退場する時とよく似ていた。
(西園寺くん……)
テオは、その後もぼーっとオスカーの幻影を眺め続けていたため、〈ゼルトル語〉の授業に遅刻した。
《キャラクター紹介》
・名前:天王寺テオ
・年齢:17歳
・学年:ゼルトル勇者学園1年生
・誕生日:7月6日
・性別:♂
・容姿:前髪を下ろした赤髪、紅目、笑った時のえくぼ
・身長:182cm
・信仰神:炎の神ボルケー
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