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勇者祭編
その91 豪傑なクラスメイト☆
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三つのグループが一次予選を終えた。
十五分という限られた時間の中で、刺客をできるだけ倒し、その得点を競う。
オスカーとアレクサンダーのいる四つ目のグループが、とうとう戦場へと足を踏み入れた。
すでに刺客との戦いを終え、観客席に上げられた生徒達。
グレイソンもその中のひとりだった。
(自分の力はしっかり出せた。これで予選落ちしていたとしても、後悔はない)
西側の客席にひとりで腰掛け、眼下に広がる、本物の街のような戦場を見回す。
上から見ても、そこは「街」だった。王都ゼルトル・シティの〈王国通り〉を連想させるかのようなメインストリート。酒場や劇場を模した建造物。
実はこの状態は、本物の建造物をこの闘技場に運んできた、というわけではなく、高度魔術による、創造物の集合体だ。
刺客に関しても同様だが、この勇者祭では、多くの上級魔術師の力を借りている。勇者と魔術師の連携は、この王国でかなり重要視されていることのうちのひとつに数えられる。
勇者パーティを組むとなれば、遠距離攻撃が可能で、味方にも治癒魔術や援護魔術をかけられるような魔術師がいなくては話にならない。
『そんなとこにいたか、一ノ瀬!』
自分のやれるだけのことはやり尽くしたと一時的に安堵しつつ、後に控えているオスカーやセレナ、テオ、若槻双子姉妹を心配しているグレイソン。
そんな彼に、芯の太い、豪傑な男の声がかけられる。
「キミは……獅子王君!?」
声でなんとなく察しつつも、背後を振り返ったグレイソンは、その人物を確認して改めて驚いた。
――獅子王レオン。
同じ〈1-A〉クラスで、高い実技の成績を誇る実力者。
上方向に豪快に逆立ったような黄土色の髪に、静かに構える王を連想させるほど落ち着いた同色の瞳。
大きな口の中には、牙のような、鋭く尖った歯が並んでいる。
まさに、美少年であるグレイソンとは対極に位置する、ハンサムな肉食の雄だ。
グレイソンとしては、レオンはかなりの強敵になると、ずっと警戒している人物でもあった。
普段、レオンはグレイソン達と関わることはない。
特定の誰かとつるむわけでもなければ、特定の誰かと対立することもない、いわば孤高の男子生徒。
だからこそ、観客席に上がってきていきなり話しかけられたことに驚きを隠せなかった。
「どうしたんだい?」
「はっは! 同じグループで戦っていれば、興味くらい出るだろう。お前の戦いは嫌でも目に入るわい! 見事だったぞ!」
レオンは豪快に声を上げて笑い、筋肉質な腕をがっとグレイソンの肩に回す。
「いやいや、そんなことはないよ。僕には周囲の生徒を観察するような余裕なんてなかったから」
「謙遜するな、一ノ瀬。前からお前の剣術の腕は高く評価してたからな!」
ドカッと、隣の席に腰を下ろすレオン。
グレイソンからしてみれば、周囲の生徒に興味がさなそうな彼の友好的な振る舞いは、意外なものだった。
「それで、お前が注目しているのは誰だ?」
レオンがほんの少し声を落とし、悪戯に微笑む。
答えはわかっている、そう解釈することもできた。
「勿論、オスカーだよ」
「ふっふん、オレの予想は当たってたわけだ。オレの目も節穴じゃあないぜ。お前だって西園寺と関わるようになって別人のように変わった。前のお前も嫌いじゃあなかったが、たまに鼻につくことはあったからな」
腕を組みながらずかずかと意見を言うレオン。
グレイソンは過去の自分を言及されて苦笑いを返す。
「あの頃の僕は、何もわかってなかった。キミはいつからオスカーの実力に気づいてたんだい?」
「入学式に決まってるだろ、と言いたいが、実は意外と最近だ。そうだな……お前があの三年の――名前は忘れたが――馬鹿でかい奴に殴られそうになって、西園寺がその拳を封じた時」
「結構、ていうか、かなり最近なんだね……」
「オレの目が節穴だった、ってところか、はっは!」
自虐するようにして豪快に笑うレオンだが、彼はオスカーの実力に気づけなかったわけではない。
そもそも、気にしていなかったのだ。
同じ学級の生徒など、レオンの関心の外だった。
興味がない、というのが正しい。エイダンによる襲撃事件で、欠伸をしていたのがいい例だ。
戦場では、オスカー達の、刺客との戦いが繰り広げられている。
「話は変わるが、この一次予選は得点制だ。境界線はどこだと思う?」
「うーん、ある得点を基準に決めるんじゃなくて、上位何十名っていう風になる可能性もある。最初に基準点を教えられなかったのも、終わってみてから人数を調整するためかもしれないね」
刺客を倒すことで得られるポイントを競うこの一次試験。
しかし、その開始前に基準点や通過人数は聞かされておらず、まったくの目安がないまま、ただ落ちないように得点を稼ぐ必要があった。
主催者側の狙いを考察する二人。
「お前は何点だ?」
「実は数える余裕もなかったんだ……ただ目の前の敵を倒すことだけに集中してたから」
「まあほとんどはそうだろうな! わからんでもない」
「でも、十点分を何体か倒したし、五十点分も一回だけ倒せた。少なくとも百五十点くらいは行ってるんじゃないかな」
「ほう、やるじゃないか! オレは百八十三点だ。計算が合っていればの話だがな」
レオンの点数を聞いても、グレイソンは驚かなかった。
決して不可能な得点ではない。
普段から不可能を可能にする男と一緒にいるせいか、感覚がおかしくなっている。
「それだけあれば、一次予選突破は確実だね。僕も多分、大丈夫だと思うよ」
その言葉に、レオンは頷いた。
「オレも今回ばかりは周りの奴の点数まで計算してたからな! せいぜい、百点程度が平均だと考えれば、オレもお前も余裕で突破だぜ! それで――」
黄土色の双眼を細め、盛り上がっている戦場を見つめる。
その中でも、彼の注目は――。
「――西園寺、お前はどうゴーレムを攻略する気だ?」
今も戦場で無難に戦っているオスカーに、レオンは問いかけた。
十五分という限られた時間の中で、刺客をできるだけ倒し、その得点を競う。
オスカーとアレクサンダーのいる四つ目のグループが、とうとう戦場へと足を踏み入れた。
すでに刺客との戦いを終え、観客席に上げられた生徒達。
グレイソンもその中のひとりだった。
(自分の力はしっかり出せた。これで予選落ちしていたとしても、後悔はない)
西側の客席にひとりで腰掛け、眼下に広がる、本物の街のような戦場を見回す。
上から見ても、そこは「街」だった。王都ゼルトル・シティの〈王国通り〉を連想させるかのようなメインストリート。酒場や劇場を模した建造物。
実はこの状態は、本物の建造物をこの闘技場に運んできた、というわけではなく、高度魔術による、創造物の集合体だ。
刺客に関しても同様だが、この勇者祭では、多くの上級魔術師の力を借りている。勇者と魔術師の連携は、この王国でかなり重要視されていることのうちのひとつに数えられる。
勇者パーティを組むとなれば、遠距離攻撃が可能で、味方にも治癒魔術や援護魔術をかけられるような魔術師がいなくては話にならない。
『そんなとこにいたか、一ノ瀬!』
自分のやれるだけのことはやり尽くしたと一時的に安堵しつつ、後に控えているオスカーやセレナ、テオ、若槻双子姉妹を心配しているグレイソン。
そんな彼に、芯の太い、豪傑な男の声がかけられる。
「キミは……獅子王君!?」
声でなんとなく察しつつも、背後を振り返ったグレイソンは、その人物を確認して改めて驚いた。
――獅子王レオン。
同じ〈1-A〉クラスで、高い実技の成績を誇る実力者。
上方向に豪快に逆立ったような黄土色の髪に、静かに構える王を連想させるほど落ち着いた同色の瞳。
大きな口の中には、牙のような、鋭く尖った歯が並んでいる。
まさに、美少年であるグレイソンとは対極に位置する、ハンサムな肉食の雄だ。
グレイソンとしては、レオンはかなりの強敵になると、ずっと警戒している人物でもあった。
普段、レオンはグレイソン達と関わることはない。
特定の誰かとつるむわけでもなければ、特定の誰かと対立することもない、いわば孤高の男子生徒。
だからこそ、観客席に上がってきていきなり話しかけられたことに驚きを隠せなかった。
「どうしたんだい?」
「はっは! 同じグループで戦っていれば、興味くらい出るだろう。お前の戦いは嫌でも目に入るわい! 見事だったぞ!」
レオンは豪快に声を上げて笑い、筋肉質な腕をがっとグレイソンの肩に回す。
「いやいや、そんなことはないよ。僕には周囲の生徒を観察するような余裕なんてなかったから」
「謙遜するな、一ノ瀬。前からお前の剣術の腕は高く評価してたからな!」
ドカッと、隣の席に腰を下ろすレオン。
グレイソンからしてみれば、周囲の生徒に興味がさなそうな彼の友好的な振る舞いは、意外なものだった。
「それで、お前が注目しているのは誰だ?」
レオンがほんの少し声を落とし、悪戯に微笑む。
答えはわかっている、そう解釈することもできた。
「勿論、オスカーだよ」
「ふっふん、オレの予想は当たってたわけだ。オレの目も節穴じゃあないぜ。お前だって西園寺と関わるようになって別人のように変わった。前のお前も嫌いじゃあなかったが、たまに鼻につくことはあったからな」
腕を組みながらずかずかと意見を言うレオン。
グレイソンは過去の自分を言及されて苦笑いを返す。
「あの頃の僕は、何もわかってなかった。キミはいつからオスカーの実力に気づいてたんだい?」
「入学式に決まってるだろ、と言いたいが、実は意外と最近だ。そうだな……お前があの三年の――名前は忘れたが――馬鹿でかい奴に殴られそうになって、西園寺がその拳を封じた時」
「結構、ていうか、かなり最近なんだね……」
「オレの目が節穴だった、ってところか、はっは!」
自虐するようにして豪快に笑うレオンだが、彼はオスカーの実力に気づけなかったわけではない。
そもそも、気にしていなかったのだ。
同じ学級の生徒など、レオンの関心の外だった。
興味がない、というのが正しい。エイダンによる襲撃事件で、欠伸をしていたのがいい例だ。
戦場では、オスカー達の、刺客との戦いが繰り広げられている。
「話は変わるが、この一次予選は得点制だ。境界線はどこだと思う?」
「うーん、ある得点を基準に決めるんじゃなくて、上位何十名っていう風になる可能性もある。最初に基準点を教えられなかったのも、終わってみてから人数を調整するためかもしれないね」
刺客を倒すことで得られるポイントを競うこの一次試験。
しかし、その開始前に基準点や通過人数は聞かされておらず、まったくの目安がないまま、ただ落ちないように得点を稼ぐ必要があった。
主催者側の狙いを考察する二人。
「お前は何点だ?」
「実は数える余裕もなかったんだ……ただ目の前の敵を倒すことだけに集中してたから」
「まあほとんどはそうだろうな! わからんでもない」
「でも、十点分を何体か倒したし、五十点分も一回だけ倒せた。少なくとも百五十点くらいは行ってるんじゃないかな」
「ほう、やるじゃないか! オレは百八十三点だ。計算が合っていればの話だがな」
レオンの点数を聞いても、グレイソンは驚かなかった。
決して不可能な得点ではない。
普段から不可能を可能にする男と一緒にいるせいか、感覚がおかしくなっている。
「それだけあれば、一次予選突破は確実だね。僕も多分、大丈夫だと思うよ」
その言葉に、レオンは頷いた。
「オレも今回ばかりは周りの奴の点数まで計算してたからな! せいぜい、百点程度が平均だと考えれば、オレもお前も余裕で突破だぜ! それで――」
黄土色の双眼を細め、盛り上がっている戦場を見つめる。
その中でも、彼の注目は――。
「――西園寺、お前はどうゴーレムを攻略する気だ?」
今も戦場で無難に戦っているオスカーに、レオンは問いかけた。
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