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勇者祭編
その99 正しいモブの処理
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開始三分前を知らせる、学園長の声が聞こえた。
それからは、生徒同士での会話も徐々になくなっていく。
学園長はこの二次予選に参加しないらしい。
詳しい理由は教えられていないが、多分、強すぎるからだろう。
そうに違いない。
鳳凰イバンから漂ってくる強者の気配は、明らかに魔王セトを凌駕していた。
それに、学園長の不参加には俺も関係しているはずだ。
俺がきっかけとなって、優勝者特典である学園長との対決が認められたのだから。ここで学園長がしゃしゃり出るわけにはいかない。
『では一次予選を勝ち抜いた生徒諸君、楽しむのであーる!』
学園長の口調は実に愉快だ。
***
一次予選の時と同様に、王都の街を戦場に再現している。
生徒達は始まると同時に四方八方に飛び出し、自分の対戦相手を捜しにいった。
この戦いには捜索能力も必要だ。
他の生徒よりも先に、自分の目的を見つける。そうすれば、帯を奪うことだけに集中できるというわけだ。
(空間が広がっている?)
一次予選の時よりも戦場が広いということに気づく。
観客席からの声もあまり届いていない。
読書家の俺には、これが魔術によることだとすぐにわかった。
街を生み出すことも高度な魔術だが、空間を一時的に拡張させる魔術はそれよりもさらに高度で、さらには大人数の魔術師を要する。
大掛かりな演出、運営もわかっているではないか。
ここは王都。
そう考えると、建物の中も捜索対象になる。
いちいち通り過ぎる建物に注意を向けていたら、どれだけ時間がかかることやら……。
(俺に捜索系の神能はないし……)
それに、俺の神能はやたらと代償が大きい。もしくは条件が厳しい。
神能に頼らず、自分の磨かれた捜索能力に期待しよう。
右の方角から剣と剣の衝撃音が聞こえてきた。
俺でなければ聞き逃すほどの音――ということは、かなりの距離がある。
もうターゲットを見つけたのか、ライバル同士で潰し合いをしているのか。はたまたその両方か。
『おい、お前の標的は草薙なんだってな』
二次予選開始からだいたい三分くらいたった頃。
大通りから離れた小道を優雅に歩いていた俺に、敵意むき出しの声がかけられた。
声を聞いた俺は、すぐさま建物の屋根に飛び乗る。
「俺に何の用だ?」
「決まってんだろ。俺も草薙を狙ってる。だからお前を潰す、以上」
実に簡潔な説明だ。
気に入った。
声の主は三年の金髪男子。
俺がアレク達と話していた際、周囲をうろうろして挙動不審だった奴だ。俺は決して見逃さない。
「盗み聞きか。俺達の声が大きかった以上、それを責めるつもりはない」
「お前一年なのに調子乗ってるよな。西園寺オスカーだろ? 最近いろいろと話題になって、鼻が高いか?」
「いろいろと話題に……よし、順調だ」
俺の話題は三年にも広がっている。
今回はその事実が知れただけでも良しとしよう。
「それでは、俺は失礼する。君が俺より先に草薙のベルトを見つけられるよう祈ることにしよう」
「おい、ふざけてんのか? お前は今、ここで俺に潰されんの! 今の状況がピンチってことくらい、わかるだろ」
「なに、この状況はむしろ俺の望んだものだ」
前髪をかき上げ、絶妙に視線を逸らす。
こういったよくいる新人潰しの三年相手に、俺は最強ムーブをかますのだ。
痺れる。
久しぶりに味わうこの感覚。
「お前の頭がおかしいって噂、ほんとだったんだな」
思い描いていた噂とは違うが、まあいい。
「頭がおかしい――それは、俺が狂人ということか? それなら、大正解だ」
「は?」
油断大敵。
三年の先輩は反対側の建物の屋根に立っていた。
剣を構えているが、緊張感はなく、俺を小馬鹿にするような様子で肩の力を抜いている。
――ささっと片づけるか。
「――ひとりライバルが減ったことに感謝しよう」
この言葉は、彼が勇者祭で聞いた最後の言葉だ。
「な、なんで……」
一秒間の間に起きた出来事。
一秒前には屋根の上に立っていた彼が、一秒後には硬い塗装された道に倒れている。頭から流れる血。徐々に赤色が周囲を侵略していく。
「お前にひとつ頼みがある。西園寺オスカーの噂をもっと広げてくれ」
倒れた三年を見下ろしながら言ってみるが、もう気を失っているようだ。
台詞の選択としては悪くない。
「〈視界無効〉をここで使うことになるとは思わなかったが、まあいいだろう」
今回使ったのは自らの瞬発力と速さ、腕力、そして〈視界無効〉。
まず神能で相手の視界を奪う。
それはほんの一瞬だ。
だが、素早く反対側の屋根に移動し、相手の頭を殴るまでがセットだ。
哀れな三年は視界が戻ると目の前には地面。
俺の拳の衝撃で、そのまま屋根から落下していたのだ。頭を殴られ、重い頭から地面に落ちる。
普段から鍛えていない一般人であれば即死レベルなので、彼はそれなりに強い。二次予選まで勝ち上がっただけある。
「惜しい存在だ」
そう呟いてみるが、なんだかしっくり来ない。
惜しい、と言うには実力不足か。
残念だ。
このまま放っておきさえすれば、きっと救護が駆けつけて彼を治療してくれるだろう。そもそも、こうなったのは彼の責任だ。俺はこれ以上彼の心配をするつもりはない。
「ライバルはあとひとり……次は誰かな」
俺はもうひとりの草薙狙いに向け、キメ顔で囁いた。
それからは、生徒同士での会話も徐々になくなっていく。
学園長はこの二次予選に参加しないらしい。
詳しい理由は教えられていないが、多分、強すぎるからだろう。
そうに違いない。
鳳凰イバンから漂ってくる強者の気配は、明らかに魔王セトを凌駕していた。
それに、学園長の不参加には俺も関係しているはずだ。
俺がきっかけとなって、優勝者特典である学園長との対決が認められたのだから。ここで学園長がしゃしゃり出るわけにはいかない。
『では一次予選を勝ち抜いた生徒諸君、楽しむのであーる!』
学園長の口調は実に愉快だ。
***
一次予選の時と同様に、王都の街を戦場に再現している。
生徒達は始まると同時に四方八方に飛び出し、自分の対戦相手を捜しにいった。
この戦いには捜索能力も必要だ。
他の生徒よりも先に、自分の目的を見つける。そうすれば、帯を奪うことだけに集中できるというわけだ。
(空間が広がっている?)
一次予選の時よりも戦場が広いということに気づく。
観客席からの声もあまり届いていない。
読書家の俺には、これが魔術によることだとすぐにわかった。
街を生み出すことも高度な魔術だが、空間を一時的に拡張させる魔術はそれよりもさらに高度で、さらには大人数の魔術師を要する。
大掛かりな演出、運営もわかっているではないか。
ここは王都。
そう考えると、建物の中も捜索対象になる。
いちいち通り過ぎる建物に注意を向けていたら、どれだけ時間がかかることやら……。
(俺に捜索系の神能はないし……)
それに、俺の神能はやたらと代償が大きい。もしくは条件が厳しい。
神能に頼らず、自分の磨かれた捜索能力に期待しよう。
右の方角から剣と剣の衝撃音が聞こえてきた。
俺でなければ聞き逃すほどの音――ということは、かなりの距離がある。
もうターゲットを見つけたのか、ライバル同士で潰し合いをしているのか。はたまたその両方か。
『おい、お前の標的は草薙なんだってな』
二次予選開始からだいたい三分くらいたった頃。
大通りから離れた小道を優雅に歩いていた俺に、敵意むき出しの声がかけられた。
声を聞いた俺は、すぐさま建物の屋根に飛び乗る。
「俺に何の用だ?」
「決まってんだろ。俺も草薙を狙ってる。だからお前を潰す、以上」
実に簡潔な説明だ。
気に入った。
声の主は三年の金髪男子。
俺がアレク達と話していた際、周囲をうろうろして挙動不審だった奴だ。俺は決して見逃さない。
「盗み聞きか。俺達の声が大きかった以上、それを責めるつもりはない」
「お前一年なのに調子乗ってるよな。西園寺オスカーだろ? 最近いろいろと話題になって、鼻が高いか?」
「いろいろと話題に……よし、順調だ」
俺の話題は三年にも広がっている。
今回はその事実が知れただけでも良しとしよう。
「それでは、俺は失礼する。君が俺より先に草薙のベルトを見つけられるよう祈ることにしよう」
「おい、ふざけてんのか? お前は今、ここで俺に潰されんの! 今の状況がピンチってことくらい、わかるだろ」
「なに、この状況はむしろ俺の望んだものだ」
前髪をかき上げ、絶妙に視線を逸らす。
こういったよくいる新人潰しの三年相手に、俺は最強ムーブをかますのだ。
痺れる。
久しぶりに味わうこの感覚。
「お前の頭がおかしいって噂、ほんとだったんだな」
思い描いていた噂とは違うが、まあいい。
「頭がおかしい――それは、俺が狂人ということか? それなら、大正解だ」
「は?」
油断大敵。
三年の先輩は反対側の建物の屋根に立っていた。
剣を構えているが、緊張感はなく、俺を小馬鹿にするような様子で肩の力を抜いている。
――ささっと片づけるか。
「――ひとりライバルが減ったことに感謝しよう」
この言葉は、彼が勇者祭で聞いた最後の言葉だ。
「な、なんで……」
一秒間の間に起きた出来事。
一秒前には屋根の上に立っていた彼が、一秒後には硬い塗装された道に倒れている。頭から流れる血。徐々に赤色が周囲を侵略していく。
「お前にひとつ頼みがある。西園寺オスカーの噂をもっと広げてくれ」
倒れた三年を見下ろしながら言ってみるが、もう気を失っているようだ。
台詞の選択としては悪くない。
「〈視界無効〉をここで使うことになるとは思わなかったが、まあいいだろう」
今回使ったのは自らの瞬発力と速さ、腕力、そして〈視界無効〉。
まず神能で相手の視界を奪う。
それはほんの一瞬だ。
だが、素早く反対側の屋根に移動し、相手の頭を殴るまでがセットだ。
哀れな三年は視界が戻ると目の前には地面。
俺の拳の衝撃で、そのまま屋根から落下していたのだ。頭を殴られ、重い頭から地面に落ちる。
普段から鍛えていない一般人であれば即死レベルなので、彼はそれなりに強い。二次予選まで勝ち上がっただけある。
「惜しい存在だ」
そう呟いてみるが、なんだかしっくり来ない。
惜しい、と言うには実力不足か。
残念だ。
このまま放っておきさえすれば、きっと救護が駆けつけて彼を治療してくれるだろう。そもそも、こうなったのは彼の責任だ。俺はこれ以上彼の心配をするつもりはない。
「ライバルはあとひとり……次は誰かな」
俺はもうひとりの草薙狙いに向け、キメ顔で囁いた。
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