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勇者祭編
その101 二年生の優勝候補
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王都ゼルトル・シティを模倣した戦場。
荒くれ者の冒険者や賞金稼ぎの集まる場所である酒場で、三人の男達が向かい合っていた。
――誰も動かない。
お互いに次の動きを読もうとしているが、慎重になりすぎるあまり、誰も隙を見せないのだ。
俺もまた、新たに登場した二年生の実力者を警戒している。
名は綾小路ジャクソン。
グレイソンは彼について、剣を使わない、とか言っていたような。彼自身もよく意味がわかっていなかったが。
「こうしていつまでも立っているつもりか?」
永遠と感じられる沈黙を破ったのは、俺の低い声。
いつだって俺は先駆者となる。
「僕はそれでもいいかなー。だってちょっと疲れたし」
「西園寺オスカー、二年生の間でも最近話題になってきたっすね」
草薙の言葉には気軽さがあったが、綾小路のそれには一切の油断や気の緩みが見られなかった。本気で俺を警戒しているようだ。
それは俺だって同じ。
いつ横から攻撃が飛んでくるかわからない。
「どんな話題だ?」
不意打ちを警戒しつつ、話を続ける。
緊迫した状況の中、敵同士で冷静に話をするという強者ムーブをかますことができた。
「生徒会に目をつけられてるっていう話題っす。あの九条先輩を座学で破った一年生。あの天王寺先輩にライバル視されている一年生。肩書は脅威的っすね」
「そうかもしれない」
「でも肝心なのはそこじゃないっす」
「ほう?」
綾小路の握り拳は震えていた。
エイダンに負けないほどの、燃えたぎる闘志。
それを俺に対して向けている。
溢れ出る魔力。彼が二年生の中で最も警戒すべき存在。それを再認識させられるほどの、膨大な魔力量。
アリアには及ばない。
それでも、とっくに常人の域を超えている。
「どうして――ッ! どうしてオレをそこに入れてくれなかったんすか!?」
綾小路が叫んだ。
「仲間外れなんて酷いっすよ! オレもずっと一緒に戦いたかったんすから!」
「悪い」
思わず謝罪してしまいそうになるほどの勢い。
本気らしい。
実力のある者は自分を上回る脅威に怯えない。むしろ、歓迎する。自分が強いという自覚を持っているからこそ、さらなる高みを求めてしまう。
彼は紛れもない実力者だ。
(面白くなってきた)
静かに微笑む。この状況に相応しくない気の緩み。だが、その隙を突いてくる者はいなかった。その必要などないと、誰もが思っているから。
「こうして強者は巡り合い、高みを目指す旅は続いていく。いいだろう、綾小路。今後はお前の存在も気にかけておく」
「気にかけるだけじゃ不十分なんすよぉぉぉおおお!」
綾小路が飛びかかってきた。
本来は草薙を狙うべきだが、こうしてライバルとなった俺を潰そうと考えるのも筋だ。
草薙は、やっと少し休める、とでも言うように肩を落として息を整えていた。
「ただ飛びかかるだけで俺には勝てない」
「オレはそんな雑魚じゃないっ!」
綾小路が剣を抜く。
剣を使わない、という噂は嘘だったのか。
その剣で今にも斬りかかりそうな勢いだ。
素早く反応して剣で応戦する。
「どんな戦いをするか期待してたが、思っていたより単純だな。それともブラフか?」
「オレの神能を知らないみたいっすね」
「――ッ」
綾小路の剣を弾こうと、軽く手首をひねった瞬間、相手の攻撃の重みがグッとのしかかってきた。
明らかに威力が違う。
剣で出せるようなものではない。
「金槌か……魔術でも使ったか」
「まだまだこれからっすよ!」
相手の剣はすっかり剣でなくなっていた。
銀の輝きを秘めた金槌だ。
剣がまるで魔法のように変化し、込められた魔力の質力を最大化した。これが魔術でないのなら、彼の神能は武器変形。
これが剣から金槌だけの変化なのか、それとも別の武器にも変化させることができるのか。
「オレの神能〈武器錬術〉では武器を自在に変化させることができる。その中でも一番好きなのが金槌っす」
ご親切に解説してくれる綾小路。
情報というのは戦いにおいて勝敗のカギを握る重要な切り札。
それを手放したとしても、俺を倒せると判断したのか。
それか、まだ言及していない核となる情報があるのか。
通常、強力な神能には何かしらの条件がつく。武器を変化させるだけの力だが、使い方次第ではかなり厄介なものになる。
条件や制約がついていても不思議ではない。
「僕のことは忘れてくれていいからね~」
草薙が笑顔で言ってきた。
「好きなだけ休んでいるといい。だが、綾小路を片づければ、すぐにあなたのことを思い出す」
「言ってくれるねぃ」
「そうっすね。まずは西園寺オスカーを倒すのが先みたいっす」
本来の攻略対象である草薙を一旦忘れ、生徒同士の戦いを望む俺と綾小路。
綾小路の詳しい性格はわからない。
直感にはなるが、正々堂々とした振る舞いから、嘘はつかないように思える。
申し訳ないが、俺は嘘をついた。
――綾小路との戦いの最中に、無防備な草薙の帯を奪う。
実際の戦いの場で敵が待ってくれることはほぼない。
それぞれが目的を持ち、その両立ができない時点で、全員が敵だ。いつ、どこから攻撃が飛んでくるのかわからない。
さて。
綾小路をどう倒し、草薙をどう攻略するか。
こうしている間にも時間は過ぎていく。
だが、もう勝利の道がはっきりと見えた。
俺は必ずこの二次試験を突破する。
――勝利の計算に狂いがなければ、の話だが……。
荒くれ者の冒険者や賞金稼ぎの集まる場所である酒場で、三人の男達が向かい合っていた。
――誰も動かない。
お互いに次の動きを読もうとしているが、慎重になりすぎるあまり、誰も隙を見せないのだ。
俺もまた、新たに登場した二年生の実力者を警戒している。
名は綾小路ジャクソン。
グレイソンは彼について、剣を使わない、とか言っていたような。彼自身もよく意味がわかっていなかったが。
「こうしていつまでも立っているつもりか?」
永遠と感じられる沈黙を破ったのは、俺の低い声。
いつだって俺は先駆者となる。
「僕はそれでもいいかなー。だってちょっと疲れたし」
「西園寺オスカー、二年生の間でも最近話題になってきたっすね」
草薙の言葉には気軽さがあったが、綾小路のそれには一切の油断や気の緩みが見られなかった。本気で俺を警戒しているようだ。
それは俺だって同じ。
いつ横から攻撃が飛んでくるかわからない。
「どんな話題だ?」
不意打ちを警戒しつつ、話を続ける。
緊迫した状況の中、敵同士で冷静に話をするという強者ムーブをかますことができた。
「生徒会に目をつけられてるっていう話題っす。あの九条先輩を座学で破った一年生。あの天王寺先輩にライバル視されている一年生。肩書は脅威的っすね」
「そうかもしれない」
「でも肝心なのはそこじゃないっす」
「ほう?」
綾小路の握り拳は震えていた。
エイダンに負けないほどの、燃えたぎる闘志。
それを俺に対して向けている。
溢れ出る魔力。彼が二年生の中で最も警戒すべき存在。それを再認識させられるほどの、膨大な魔力量。
アリアには及ばない。
それでも、とっくに常人の域を超えている。
「どうして――ッ! どうしてオレをそこに入れてくれなかったんすか!?」
綾小路が叫んだ。
「仲間外れなんて酷いっすよ! オレもずっと一緒に戦いたかったんすから!」
「悪い」
思わず謝罪してしまいそうになるほどの勢い。
本気らしい。
実力のある者は自分を上回る脅威に怯えない。むしろ、歓迎する。自分が強いという自覚を持っているからこそ、さらなる高みを求めてしまう。
彼は紛れもない実力者だ。
(面白くなってきた)
静かに微笑む。この状況に相応しくない気の緩み。だが、その隙を突いてくる者はいなかった。その必要などないと、誰もが思っているから。
「こうして強者は巡り合い、高みを目指す旅は続いていく。いいだろう、綾小路。今後はお前の存在も気にかけておく」
「気にかけるだけじゃ不十分なんすよぉぉぉおおお!」
綾小路が飛びかかってきた。
本来は草薙を狙うべきだが、こうしてライバルとなった俺を潰そうと考えるのも筋だ。
草薙は、やっと少し休める、とでも言うように肩を落として息を整えていた。
「ただ飛びかかるだけで俺には勝てない」
「オレはそんな雑魚じゃないっ!」
綾小路が剣を抜く。
剣を使わない、という噂は嘘だったのか。
その剣で今にも斬りかかりそうな勢いだ。
素早く反応して剣で応戦する。
「どんな戦いをするか期待してたが、思っていたより単純だな。それともブラフか?」
「オレの神能を知らないみたいっすね」
「――ッ」
綾小路の剣を弾こうと、軽く手首をひねった瞬間、相手の攻撃の重みがグッとのしかかってきた。
明らかに威力が違う。
剣で出せるようなものではない。
「金槌か……魔術でも使ったか」
「まだまだこれからっすよ!」
相手の剣はすっかり剣でなくなっていた。
銀の輝きを秘めた金槌だ。
剣がまるで魔法のように変化し、込められた魔力の質力を最大化した。これが魔術でないのなら、彼の神能は武器変形。
これが剣から金槌だけの変化なのか、それとも別の武器にも変化させることができるのか。
「オレの神能〈武器錬術〉では武器を自在に変化させることができる。その中でも一番好きなのが金槌っす」
ご親切に解説してくれる綾小路。
情報というのは戦いにおいて勝敗のカギを握る重要な切り札。
それを手放したとしても、俺を倒せると判断したのか。
それか、まだ言及していない核となる情報があるのか。
通常、強力な神能には何かしらの条件がつく。武器を変化させるだけの力だが、使い方次第ではかなり厄介なものになる。
条件や制約がついていても不思議ではない。
「僕のことは忘れてくれていいからね~」
草薙が笑顔で言ってきた。
「好きなだけ休んでいるといい。だが、綾小路を片づければ、すぐにあなたのことを思い出す」
「言ってくれるねぃ」
「そうっすね。まずは西園寺オスカーを倒すのが先みたいっす」
本来の攻略対象である草薙を一旦忘れ、生徒同士の戦いを望む俺と綾小路。
綾小路の詳しい性格はわからない。
直感にはなるが、正々堂々とした振る舞いから、嘘はつかないように思える。
申し訳ないが、俺は嘘をついた。
――綾小路との戦いの最中に、無防備な草薙の帯を奪う。
実際の戦いの場で敵が待ってくれることはほぼない。
それぞれが目的を持ち、その両立ができない時点で、全員が敵だ。いつ、どこから攻撃が飛んでくるのかわからない。
さて。
綾小路をどう倒し、草薙をどう攻略するか。
こうしている間にも時間は過ぎていく。
だが、もう勝利の道がはっきりと見えた。
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――勝利の計算に狂いがなければ、の話だが……。
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