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一学期期末テスト編
その27 勝利へのこだわり
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俺は前回の一学期中間テストで、パッとしない生徒を演じるために全てで平均以下の点数を取った。
座学、要するに筆記で五科目。
そして、〈剣術〉や〈体術〉といった実技で五科目。
全て、計算通りの点数だ。問題や試練の内容から、この学年だとどのくらいの平均点が出るのかを考えた上で、配点にも注意し、確実に狙って平均以下を収めた。
だが、今回は〈座学の帝王〉と呼ばれている猛者、九条ガブリエルと筆記で戦わなくてはならない。
くだらないことばかり考えているようで、俺も勝つための情報収集は行っている。
集めた情報によれば、九条はこれまでの定期テストで満点しか取ったことがないという怪物で、他の追随を許さない圧倒的な勉強量を誇っているらしい。
そんな相手と、俺は戦う。
「少し調子に乗り過ぎたか」
自室の椅子に腰掛けながら、ふふっと笑った。
そう、俺にはこの窮地を切り崩せるだけの自信と、実力がある。負ける気はしない。当然ながら、点数で彼を上回るには、全てで満点を取る、ということが必須事項だ。
そこでとっさに付けた二つの条件。
『──贔屓をしない、教師の審査員だ。試験の難しさを考慮して、相対的な数値で勝敗を決める──』
『この戦いに勝った者に、ルールを変えられる権利を与えてもらいたい』
これがこの戦いの勝敗を分けることになるということを、俺は知っている。
***
「オスカー」
翌朝。
セレナと久しぶりの通学だ。
寮に背を向け、仁王立ちしてセレナを待つ。まだグレイソン達も来ていない。二人きりになれるのは今くらいだろう。
何かを恐れるように、か細い声で俺の名を呼ぶセレナ。
「ちゃんと聞こえてるから安心しろ」
「……良かった……」
セレナは吸い寄せられたように、俺の手を取った。昨日お互いに体を抱き締め合ったことを思い出す。彼女にはそれが恥ずかしかったのか、ほんのりと赤くなって視線をそらした。
『おーい! オスカー!』
すぐに物陰からグレイソンが現れる。
彼は凄い。
実は俺よりも先にここに来て待っていたというのに、空気を読んでとっさに姿を隠したのだ。セレナとの件を片づけたことは彼にも言っていなかったわけだが、臨機応変に対応してくれた。
目だけでグレイソンに感謝の気持ちを伝える。すると、好青年はハンサムな笑顔でウィンクを返した。
なんて奴だ、グレイソンは。
『オスカー様! おくれてごめんなさいなのです!』
『オスカー君、今日もわたしがお弁当作ってきましたよ』
ここでクルリンとミクリンの双子姉妹もやって来る。
朝から元気そうで何よりだ。
「あの……一ノ瀬君、ミクリンさん、クルリンさん……ごめんなさい! 私、オスカーを三人に取られるんじゃないかと思って、その、嫉妬してて……」
深々と、セレナが頭を下げた。
しっかりと三人それぞれの目を見て、誠実に謝る。
「僕のことはグレイソンでいいよ、セレナさん。それに、僕もオスカーが好きだけど、独占するつもりはないから」
「むぅ。あたちはオスカー様をどくせんしたいのです」
「クルリン、独占って言葉の意味わかってるの?」
「あたちを子供あつかいするななのです! ムキー!」
「ありがとう、三人とも。普段は私が独占するけど、たまにはオスカーを貸してあげるから」
本当だったら感動的なシーンになるはずだ。
それなのに俺が一方的に恐怖を感じているこの状況は何だろう。
ひとまず、これでセレナの件はどうにかなった。彼女も少しずつ俺以外の生徒との人間関係を構築していくことができるだろう。仮に俺が隣からいなくなっても、なんとか生きていけるはずだ。
***
時は過ぎ、刻一刻と期末テストの日は近づいていく。
俺は日々の日課をこなすことに忙しかった。
放課後は姿をくらまして図書館に行き、テストの対策と読書を行う。闘技場に行ってグレイソンと剣術の訓練をすることも忘れてはいない。
二ヶ月もの間訓練に付き合ってくれていた桐生には、新しい練習相手が見つかった、と言ってある。
剣術を教えることになった、とは流石に言わなかったが、少し含みを持たせたので、彼も彼なりに考えていることがあるのかもしれない。
何度か俺達の訓練をこっそり見にこようとしていたが、気づいた俺がグレイソンに知らせ、ほどほどに剣を打ち合っている様子を見せておいた。
実技に関しては、問題なくテストを乗り切れる。
勿論全力で一位を狙いにいくわけではなく、ほどほどにやって平均よりちょっと上を目指すのだ。
このまま徐々に順位を上げていき、学年末テストの時になんとか一位が取れました!という感じに調整したいと思っていた。
「西園寺、勉強の調子はどうだ? まだ吾輩に勝つなどというくだらないことを言うか」
こうしてときどき九条が挑発しに来る。
それに対し俺は――。
「俺は勝利にはこだわりがある。ただ勝つだけで勝利とは言えない。本当の勝利とは、圧倒的な実力の差から生まれるものだ」
そう言い放って姿を消すことで、九条を逆に挑発していた。
『おのれ西園寺ぃぃぃいいい!』
こうして九条がだみ声で怒鳴るまでがセット。
わざわざ挑発をしに来るということは、本人も俺に対してある程度の恐怖を感じている、ということだ。
未知数である俺を恐れているからこそ、挑発をして様子を見なければ安心できない。相手を罵ることで一時的な優越感に浸り、自分に疑似的な自信をつける。
俺はその姿を見て残念に思っていた。
〈座学の帝王〉である九条ガブリエルも、そこまでだったということだ。
***
そして七月六日。
決戦の日がやってきた。
「オスカー、僕はキミの力を一切疑わない。でも、今回はかなり不利だと思うよ。相手は全ての科目で満点を取る可能性がある。仮に彼が満点を取っていたら、先生に審判してもらったとしても勝てないんじゃないかい? それに、キミが満点を取ったとしても、引き分けになるだけのような気がするんだけど」
「なに、俺は満点を取るつもりなどない」
グレイソンは俺よりも俺のことを心配していた。
もし俺が勝負に負ければ、この学園を去ってしまうことになるのだ。つまり、彼は神のように慕っている西園寺オスカーのいない学園生活を送っていくことになる。
それはクルリン、ミクリンに関しても同じこと。
二人も九条がどれだけ強敵かわかっているようだったが、まったく心配していなかった。
『オスカー様ならテカテカの人くらいかんたんに勝てるのです!』
『グレイソン君を変えたオスカー君なら、きっと勝てると信じてます。ちなみに、今日のお弁当も全部わたしが作りましたので、絶対食べてくださいね』
あれだけ自信満々に勝利を宣言しておいて言うのはあれかもしれないが、普通はもう少し心配するはずだ。この双子姉妹は盲目的に俺を信頼しているらしい。
ありがたくもあるが、逆にふたりが心配になってくるレベルだ。
ちなみに、九条との筆記勝負についてはセレナに言っていなかった。勝利を収めた後の楽しみに残している。
俺の余裕ぶった態度に、グレイソンは顔をしかめた。
「満点を取るつもりがない、どういうことだい?」
「そのままの意味だ。九十点以上を取ってしまえば実力がバレてしまう。違うか?」
「……でも、実力を隠す必要があるのなら、最初からこの不利な勝負を受ける必要がなかったはずだよ」
「その通りだ。なに、そのうちわかる」
俺が浮かべるのは余裕の笑み。
瞳の奥には勝利を確信した栄光の輝きしかない。
筆記試験は今日まとめて行われる。
〈神能学〉、〈勇者史〉、〈神話学〉、〈ゼルトル語〉、〈魔王学〉の五科目だ。
一年生も三年生も、受ける科目は同じである。
特に難しいのが〈勇者史〉で、範囲が広くて覚える用語が多い。
テストは自教室で行われる。
カンニングができないよう、この日だけは王国随一の魔術師が来園し、高度な〈対不正魔術〉を張ってくれるらしい。
つまり、俺にズルはできないのだ。
元来ズルなどするつもりはなかったが、この意味は正式に戦って〈座学の帝王〉を負かす必要がある、ということ。
これは盛り上がりそうだ。
手首をポキポキと鳴らし、羽ペンを構える。
とにかく適当な担任である白鳥スワンから、〈神能学〉の問題用紙と解答用紙が配られた。
『試験開始の鐘が鳴ったら始めま~す。あ、鳴りましたね。はい、始め~』
スワンの気だるそうな声は興を削ぐ。
だが、俺には関係ない。
生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉からの刺客、九条ガブリエルとの決戦が、今、幕を開けた。
座学、要するに筆記で五科目。
そして、〈剣術〉や〈体術〉といった実技で五科目。
全て、計算通りの点数だ。問題や試練の内容から、この学年だとどのくらいの平均点が出るのかを考えた上で、配点にも注意し、確実に狙って平均以下を収めた。
だが、今回は〈座学の帝王〉と呼ばれている猛者、九条ガブリエルと筆記で戦わなくてはならない。
くだらないことばかり考えているようで、俺も勝つための情報収集は行っている。
集めた情報によれば、九条はこれまでの定期テストで満点しか取ったことがないという怪物で、他の追随を許さない圧倒的な勉強量を誇っているらしい。
そんな相手と、俺は戦う。
「少し調子に乗り過ぎたか」
自室の椅子に腰掛けながら、ふふっと笑った。
そう、俺にはこの窮地を切り崩せるだけの自信と、実力がある。負ける気はしない。当然ながら、点数で彼を上回るには、全てで満点を取る、ということが必須事項だ。
そこでとっさに付けた二つの条件。
『──贔屓をしない、教師の審査員だ。試験の難しさを考慮して、相対的な数値で勝敗を決める──』
『この戦いに勝った者に、ルールを変えられる権利を与えてもらいたい』
これがこの戦いの勝敗を分けることになるということを、俺は知っている。
***
「オスカー」
翌朝。
セレナと久しぶりの通学だ。
寮に背を向け、仁王立ちしてセレナを待つ。まだグレイソン達も来ていない。二人きりになれるのは今くらいだろう。
何かを恐れるように、か細い声で俺の名を呼ぶセレナ。
「ちゃんと聞こえてるから安心しろ」
「……良かった……」
セレナは吸い寄せられたように、俺の手を取った。昨日お互いに体を抱き締め合ったことを思い出す。彼女にはそれが恥ずかしかったのか、ほんのりと赤くなって視線をそらした。
『おーい! オスカー!』
すぐに物陰からグレイソンが現れる。
彼は凄い。
実は俺よりも先にここに来て待っていたというのに、空気を読んでとっさに姿を隠したのだ。セレナとの件を片づけたことは彼にも言っていなかったわけだが、臨機応変に対応してくれた。
目だけでグレイソンに感謝の気持ちを伝える。すると、好青年はハンサムな笑顔でウィンクを返した。
なんて奴だ、グレイソンは。
『オスカー様! おくれてごめんなさいなのです!』
『オスカー君、今日もわたしがお弁当作ってきましたよ』
ここでクルリンとミクリンの双子姉妹もやって来る。
朝から元気そうで何よりだ。
「あの……一ノ瀬君、ミクリンさん、クルリンさん……ごめんなさい! 私、オスカーを三人に取られるんじゃないかと思って、その、嫉妬してて……」
深々と、セレナが頭を下げた。
しっかりと三人それぞれの目を見て、誠実に謝る。
「僕のことはグレイソンでいいよ、セレナさん。それに、僕もオスカーが好きだけど、独占するつもりはないから」
「むぅ。あたちはオスカー様をどくせんしたいのです」
「クルリン、独占って言葉の意味わかってるの?」
「あたちを子供あつかいするななのです! ムキー!」
「ありがとう、三人とも。普段は私が独占するけど、たまにはオスカーを貸してあげるから」
本当だったら感動的なシーンになるはずだ。
それなのに俺が一方的に恐怖を感じているこの状況は何だろう。
ひとまず、これでセレナの件はどうにかなった。彼女も少しずつ俺以外の生徒との人間関係を構築していくことができるだろう。仮に俺が隣からいなくなっても、なんとか生きていけるはずだ。
***
時は過ぎ、刻一刻と期末テストの日は近づいていく。
俺は日々の日課をこなすことに忙しかった。
放課後は姿をくらまして図書館に行き、テストの対策と読書を行う。闘技場に行ってグレイソンと剣術の訓練をすることも忘れてはいない。
二ヶ月もの間訓練に付き合ってくれていた桐生には、新しい練習相手が見つかった、と言ってある。
剣術を教えることになった、とは流石に言わなかったが、少し含みを持たせたので、彼も彼なりに考えていることがあるのかもしれない。
何度か俺達の訓練をこっそり見にこようとしていたが、気づいた俺がグレイソンに知らせ、ほどほどに剣を打ち合っている様子を見せておいた。
実技に関しては、問題なくテストを乗り切れる。
勿論全力で一位を狙いにいくわけではなく、ほどほどにやって平均よりちょっと上を目指すのだ。
このまま徐々に順位を上げていき、学年末テストの時になんとか一位が取れました!という感じに調整したいと思っていた。
「西園寺、勉強の調子はどうだ? まだ吾輩に勝つなどというくだらないことを言うか」
こうしてときどき九条が挑発しに来る。
それに対し俺は――。
「俺は勝利にはこだわりがある。ただ勝つだけで勝利とは言えない。本当の勝利とは、圧倒的な実力の差から生まれるものだ」
そう言い放って姿を消すことで、九条を逆に挑発していた。
『おのれ西園寺ぃぃぃいいい!』
こうして九条がだみ声で怒鳴るまでがセット。
わざわざ挑発をしに来るということは、本人も俺に対してある程度の恐怖を感じている、ということだ。
未知数である俺を恐れているからこそ、挑発をして様子を見なければ安心できない。相手を罵ることで一時的な優越感に浸り、自分に疑似的な自信をつける。
俺はその姿を見て残念に思っていた。
〈座学の帝王〉である九条ガブリエルも、そこまでだったということだ。
***
そして七月六日。
決戦の日がやってきた。
「オスカー、僕はキミの力を一切疑わない。でも、今回はかなり不利だと思うよ。相手は全ての科目で満点を取る可能性がある。仮に彼が満点を取っていたら、先生に審判してもらったとしても勝てないんじゃないかい? それに、キミが満点を取ったとしても、引き分けになるだけのような気がするんだけど」
「なに、俺は満点を取るつもりなどない」
グレイソンは俺よりも俺のことを心配していた。
もし俺が勝負に負ければ、この学園を去ってしまうことになるのだ。つまり、彼は神のように慕っている西園寺オスカーのいない学園生活を送っていくことになる。
それはクルリン、ミクリンに関しても同じこと。
二人も九条がどれだけ強敵かわかっているようだったが、まったく心配していなかった。
『オスカー様ならテカテカの人くらいかんたんに勝てるのです!』
『グレイソン君を変えたオスカー君なら、きっと勝てると信じてます。ちなみに、今日のお弁当も全部わたしが作りましたので、絶対食べてくださいね』
あれだけ自信満々に勝利を宣言しておいて言うのはあれかもしれないが、普通はもう少し心配するはずだ。この双子姉妹は盲目的に俺を信頼しているらしい。
ありがたくもあるが、逆にふたりが心配になってくるレベルだ。
ちなみに、九条との筆記勝負についてはセレナに言っていなかった。勝利を収めた後の楽しみに残している。
俺の余裕ぶった態度に、グレイソンは顔をしかめた。
「満点を取るつもりがない、どういうことだい?」
「そのままの意味だ。九十点以上を取ってしまえば実力がバレてしまう。違うか?」
「……でも、実力を隠す必要があるのなら、最初からこの不利な勝負を受ける必要がなかったはずだよ」
「その通りだ。なに、そのうちわかる」
俺が浮かべるのは余裕の笑み。
瞳の奥には勝利を確信した栄光の輝きしかない。
筆記試験は今日まとめて行われる。
〈神能学〉、〈勇者史〉、〈神話学〉、〈ゼルトル語〉、〈魔王学〉の五科目だ。
一年生も三年生も、受ける科目は同じである。
特に難しいのが〈勇者史〉で、範囲が広くて覚える用語が多い。
テストは自教室で行われる。
カンニングができないよう、この日だけは王国随一の魔術師が来園し、高度な〈対不正魔術〉を張ってくれるらしい。
つまり、俺にズルはできないのだ。
元来ズルなどするつもりはなかったが、この意味は正式に戦って〈座学の帝王〉を負かす必要がある、ということ。
これは盛り上がりそうだ。
手首をポキポキと鳴らし、羽ペンを構える。
とにかく適当な担任である白鳥スワンから、〈神能学〉の問題用紙と解答用紙が配られた。
『試験開始の鐘が鳴ったら始めま~す。あ、鳴りましたね。はい、始め~』
スワンの気だるそうな声は興を削ぐ。
だが、俺には関係ない。
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