28 / 69
一学期期末テスト編
その28 自信と恐怖☆
しおりを挟む
〈座学の帝王〉は今回の筆記試験、万全の対策をして臨んだ。
これまでのテスト勉強とは比べ物にならないほど、注ぎ込めるすべての時間を、期末試験勉強に注いだ。それも、西園寺オスカーという、実力が未知数な一年生の存在があったせいだ。
(吾輩が圧倒的に有利だというのに、あの余裕は何だ?)
常にガブリエルの頭の中にあったのは、対抗心と不安だ。
勉強をしていれば不安になる暇などない。
そう思い、自信をつけるために勉強に明け暮れるも、やはりどこかに不安が残っているのだ。
満点を取れる自信はある。
一年生、二年生の頃にもやってきたように、日頃の授業で習ったことの一つひとつを取り逃がすことなく頭に入れれば、自ずと満点を取ることができるのだ。
(心配することなどない。あの少年は虚勢を張っているだけだ。プライドを守るため、自信のあるふりをしているだけだ)
筆を置き、何度も呼吸をし直す。
(本当に、あれは虚勢か? 西園寺は実力を隠しているのだぞ?)
自分の考えに問いかけるも、答えはない。
戦ってみなくては、オスカーを知らなくては、この不安が解消されることはないのだ。
『西園寺、勉強の調子はどうだ? まだ吾輩に勝つなどというくだらないことを言うか』
このように本人のところへ挑発をしに行くも──。
『俺は勝利にこだわりがある。ただ勝つだけで勝利とは言えない。本当の勝利とは、圧倒的な実力の差から生まれるものだ』
明らかにオスカーの方が格上だった。
三年生である自分が情けなく思えてしまうほどの、大人げない挑発への冷静な返し。
だが、それを素直に評価してしまうせいで、ガブリエルの中にある少年への敵対心はますます燃え上がるのだった。
『おのれ西園寺ぃぃぃいいい!』
自分らしくない叫び。
ここまで感情的になっていることに、ガブリエル自身も驚いた。それは〈座学の帝王〉としての自尊心があるからか、意中の相手である会長が絡んでいるからか。
オスカーに逃げられ、意気消沈するガブリエル。
(結局、吾輩には努力しかない。努力量で彼を上回らなくては)
自分を奮起させ、また勉強机に向かうのだった。
そして迎えた試験当日。
試験範囲の完全網羅、繰り返し反復した演習問題。一ヶ月ほどの猶予を全て試験対策に投じた結果、筆記試験終了の鐘が鳴るその時には、全て完璧に解き切ったという自信があった。
曖昧なところもない。
範囲外のところから出してくるようなイレギュラーなものもなかった。
これまでの経験上、満点は確実だ。この時点で自信に満ちていれば、彼の勝ちなのだ。
(あとは、西園寺の点数次第か。仮にも奴が全て満点だったのなら、引き分けになってしまうのか……いや、まさか。満点など、そう易々と取れるものではない)
試験が終われば、すぐに放課後だ。
ほとんどの生徒が疲れ果てて寮に帰る中、西園寺オスカーと九条ガブリエルは中庭の噴水で顔を合わせた。
少し遅れて現れたオスカー。
肩の力を抜き、余裕の表情で登場。
だが、自身の結果を疑わないガブリエルは、高圧的な態度と声で、オスカーを威嚇した。
「最後の試験、楽しんでくれたか?」
「最後の試験――それはつまり、俺が負けて退学する、ということか?」
「その可能性が限りなく高い、ということだ」
「そうか。お前は全てで満点を取ったか」
自信満々なガブリエルと向かい合っても、オスカーは自信を持ち続けたままだ。
筆記試験の結果が発表されるのは明後日。
明日の実技試験も終わり、教師陣に採点の余裕ができてからだ。
「せいぜい、明後日までの学園生活を楽しむといい」
ガブリエルはそう言い放ち、中庭から立ち去った。そこにあるのは確かな勝利への自信。そして努力から来た達成感。
それに対してオスカーは。
勝ち誇った様子で、噴水の水を浴びていた。
「引き分けはあり得ない。仮に九条が満点を取ろうと、俺の勝利は定まっている」
これまでのテスト勉強とは比べ物にならないほど、注ぎ込めるすべての時間を、期末試験勉強に注いだ。それも、西園寺オスカーという、実力が未知数な一年生の存在があったせいだ。
(吾輩が圧倒的に有利だというのに、あの余裕は何だ?)
常にガブリエルの頭の中にあったのは、対抗心と不安だ。
勉強をしていれば不安になる暇などない。
そう思い、自信をつけるために勉強に明け暮れるも、やはりどこかに不安が残っているのだ。
満点を取れる自信はある。
一年生、二年生の頃にもやってきたように、日頃の授業で習ったことの一つひとつを取り逃がすことなく頭に入れれば、自ずと満点を取ることができるのだ。
(心配することなどない。あの少年は虚勢を張っているだけだ。プライドを守るため、自信のあるふりをしているだけだ)
筆を置き、何度も呼吸をし直す。
(本当に、あれは虚勢か? 西園寺は実力を隠しているのだぞ?)
自分の考えに問いかけるも、答えはない。
戦ってみなくては、オスカーを知らなくては、この不安が解消されることはないのだ。
『西園寺、勉強の調子はどうだ? まだ吾輩に勝つなどというくだらないことを言うか』
このように本人のところへ挑発をしに行くも──。
『俺は勝利にこだわりがある。ただ勝つだけで勝利とは言えない。本当の勝利とは、圧倒的な実力の差から生まれるものだ』
明らかにオスカーの方が格上だった。
三年生である自分が情けなく思えてしまうほどの、大人げない挑発への冷静な返し。
だが、それを素直に評価してしまうせいで、ガブリエルの中にある少年への敵対心はますます燃え上がるのだった。
『おのれ西園寺ぃぃぃいいい!』
自分らしくない叫び。
ここまで感情的になっていることに、ガブリエル自身も驚いた。それは〈座学の帝王〉としての自尊心があるからか、意中の相手である会長が絡んでいるからか。
オスカーに逃げられ、意気消沈するガブリエル。
(結局、吾輩には努力しかない。努力量で彼を上回らなくては)
自分を奮起させ、また勉強机に向かうのだった。
そして迎えた試験当日。
試験範囲の完全網羅、繰り返し反復した演習問題。一ヶ月ほどの猶予を全て試験対策に投じた結果、筆記試験終了の鐘が鳴るその時には、全て完璧に解き切ったという自信があった。
曖昧なところもない。
範囲外のところから出してくるようなイレギュラーなものもなかった。
これまでの経験上、満点は確実だ。この時点で自信に満ちていれば、彼の勝ちなのだ。
(あとは、西園寺の点数次第か。仮にも奴が全て満点だったのなら、引き分けになってしまうのか……いや、まさか。満点など、そう易々と取れるものではない)
試験が終われば、すぐに放課後だ。
ほとんどの生徒が疲れ果てて寮に帰る中、西園寺オスカーと九条ガブリエルは中庭の噴水で顔を合わせた。
少し遅れて現れたオスカー。
肩の力を抜き、余裕の表情で登場。
だが、自身の結果を疑わないガブリエルは、高圧的な態度と声で、オスカーを威嚇した。
「最後の試験、楽しんでくれたか?」
「最後の試験――それはつまり、俺が負けて退学する、ということか?」
「その可能性が限りなく高い、ということだ」
「そうか。お前は全てで満点を取ったか」
自信満々なガブリエルと向かい合っても、オスカーは自信を持ち続けたままだ。
筆記試験の結果が発表されるのは明後日。
明日の実技試験も終わり、教師陣に採点の余裕ができてからだ。
「せいぜい、明後日までの学園生活を楽しむといい」
ガブリエルはそう言い放ち、中庭から立ち去った。そこにあるのは確かな勝利への自信。そして努力から来た達成感。
それに対してオスカーは。
勝ち誇った様子で、噴水の水を浴びていた。
「引き分けはあり得ない。仮に九条が満点を取ろうと、俺の勝利は定まっている」
62
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる