【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命

文字の大きさ
51 / 103
読書パーティー編

その51 読書パーティーの約束

しおりを挟む
 結局、エリザベスが俺に自身の問題を打ち明けることはなかった。

 十秒ほど抱きついていたかと思うと、はっと我に返ったようにして体を離し、何を話したらいいのかわからなくなっていた。

 俺は他にも面白い小説を教えて欲しい、と本題に戻し、せっかく作った雰囲気を壊すことにした。これ以上ごたごたしていても仕方ない。

 時間は有限だ。
 エリザベスの問題だけに時間を割くわけにはいかない。

 その後何冊か小説を紹介され、俺はそれを全部借りることに決めた。八冊ほどの本を抱え、図書カウンターに戻る。

「かなり長かったみたいだね」

 涼風すずかぜが感情のこもっていない声で言ってきた。

 ちゃんと本人の口から聞けたか、という俺にしかわからない目配せをする。それに対し俺は、駄目だった、と首を小さく横に振った。

 はぁ、と涼風が溜め息を漏らす。
 俺に失望しているのかもしれないが、人間の本心を聞き出すという作業は、思っている以上に根気のいることだ。信頼関係がしっかりと構築されていない限り、本心に到達することはできない。

「後輩君、読書パーティーに来るつもりない?」

 本の貸出手続きが終わり、俺が図書館を出ようとした時、まだ逃がさないぞと言わんばかりに、涼風が話を切り出した。

 涼風が俺を誘うというまさかの展開に、驚きを隠せないエリザベス。

 読書パーティーというのは、週に一回以上図書館を利用する生徒が参加できる、図書館での豪華な会食パーティーのことだ。
 実は図書館には奥に飲食スペースがあり、高級レストランの内装のようだと評価されている。ゼルトル王国が資金をたっぷり使った結果だ。ただ、普段から飲食スペースを使う生徒はほぼおらず、年に一度の読書パーティーのためだけに作られた、といっても過言ではない。

 読書パーティーは午後五時から始まり、読書家の生徒達が豪華なコース料理を楽しむ。

 その間は自分の好きな本の話をしまくり、誰が一番の読書家なのか、という静かな戦いの場でもあるそうだ。食事が終わると夜の九時まで読書をして優雅に時間を過ごし、寮に帰る。

 今年度の開催は八月十日。
 こう聞くとなかなか悪くないように思えるが、俺には参加を躊躇する問題があった。

「俺は食べるものにはこだわっている。会食に参加することはできないので遠慮しておこう」

 そう言って、やんわりと断ろうとするが――。

「またまた、そんな遠慮なんていいから」

 脅すような目で、絶対に参加しろ、という圧をかけてくる涼風。
 彼女が何を望んでいるのかはわかっている。読書パーティーを利用して、エリザベスの口から事情を聞き出せ、と。

 如月エリザベスを救うことができる存在が西園寺さいおんじオスカーだけだと思っているのなら、もう少し俺に対して優しく接して欲しいものだ。

「俺に出す料理は俺が指定した食材を使い、指定したように調理してくれるというのであれば、参加することも考えよう」

 腕を組み、偉そうに言う俺。

 きっと涼風はこんな俺の態度に相当お怒りだろう。どうしてただの・・・後輩がこんなに調子に乗っているんだ、と。

 だが、彼女の頼みの綱は俺だ。
 俺とエリザベスの関係は、涼風自身とエリザベスの関係よりもずっと深い。少なくとも彼女はそう思っているらしい。

 俺にエリザベスを救うように頼んだのも、エリザベスが心を許している相手が俺しかいないと思ったから、とのことだ。

 俺の条件を飲むしか、彼女に道はない。

「……わかった。うちが司書になんとか言っとくから」

「そうか」

「何か言いなさいよ」

「感謝する」

 今にも俺を殴りたそうな涼風だが、エリザベスに怪しまれても困る。殺意を隠し、わざとらしい笑顔を作った。

「それじゃあ、如月、後輩君の相手役パートナー頼んだよ」

「え? あたしが?」

「当たり前でしょ。うちがこいつと行くと思う? 勘弁してよ」

 俺はかなり嫌われているらしい。
 悪くない。好きか嫌いか人気が分かれる、というのも世界を動かす者の宿命だ。

「そ、そうなんだ。あたしはオスカーくんのこと、好きだけどなぁ――あ、いや、別に変な意味じゃなくて、尊敬してるというか……」

 一気に顔を赤く染めるエリザベス。
 また新鮮な表情を見ることができた。

「そうか。エリザベスと一緒だったら、悪くない」

 こうして、何度も涼風から睨まれたものの、エリザベスと読書パーティーの約束をすることに成功した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

【完結】オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。

エース皇命
ファンタジー
 異世界に来て3年がたった。  オレの所属する勇者パーティ、イレギュラーズは相変わらず王都最強のパーティとして君臨している。  エルフのクリス、魔術師のジャック、猫耳少女ランラン、絶世の美女シエナ。  全員チート級の強さを誇るけど、どこか抜けていて、アホ全開である。  クリスは髪のセットに命をかけて戦いに遅刻するし、ジャックは賢いもののとことん空気を読まない。ランランは3歩あるくだけで迷子になるし、シエナはマイペースで追い詰めた敵を見逃す。  そんなオレたちの周囲の連中もアホばかりだ。  この世界にはアホしかいないのか。そう呆れるオレだったけど、そんな連中に囲まれている時点で、自分も相当なアホであることに気づくのは、結構すぐのことだった。  最強のアホチーム、イレギュラーズは今日も、王都を救う! ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...