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第8話 仕事を探せ

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「さて、みんな! 早速計画を立てよう!」
 デイブレイクの五人は会議を行っていた。

「ユハ帝国を超える国を作り、スペイゴール大陸に平和をもたらそう計画だ!」クリスが楽しそうに言った。

「センスのない名前だな」アキラは渋い顔だ。「もっとかっこいい名前は思いつかないのか?」

「そうだな……じゃあそれは後でじっくり考えることにするよ」

 嵐の前の静けさという言い訳もこれ以上はできなくなってきたので、デイブレイクはついに建国するための準備をしようとしている。

「とにかく、まずは建国に何が必要で、何をすればいいのか。これをはっきりさせよう」クリスが続けた。「スペイゴールの書は一通り読んでみた。僕は一夜にしてこの大陸のエキスパートになったわけだけど、建国の仕方は詳しく書いてなかったんだ」

「だよな」とアキラ。「ゼロから国を作ろう、なんてハードルがお高いねー」

「国なら、土地と国民がいるね」早速ランランが意見を出した。「村とか、小さな規模から始めないと」

「そうだな」クリスがうなずく。「政府や憲法、資金……いろいろ考えることがあるな」

「でも、楽しそうだ」アキラが言った。「暇つぶしにもちょうどいい」

 そうして一行は、時間をかけてじっくりと話し合った。



 ユハ帝国の議長、サハエル六世は憤慨ふんがいしていた。
「なんだと? 『デストロイヤー』が消えた?」

「はい、任務放棄のようです」伝達係が報告する。「もしあのエリア一面ががら空きであることを敵国に知られたら、大量の軍があそこから押し寄せてくることになります」

 議長はうなった。「別の杖士ブレイカーのチームを雇え。金ならいくらでも残ってる。デストロイヤーはさらに無能だったようだ。ハズレを引いたな」

「しかし、デストロイヤーもかなりの腕前で――」

「そんなわけないだろ! 早く行動しろ! 一流のチームの雇うように伝えておけ!」

「わ――わかりました」

 デイブレイクを追放してからというもの、帝国の治安がさらに悪化し、国民らの不満も高まっていた。また、ダークウルフやオークの侵入なども多くなり、少しずつ国民の命まで奪われていた。

「なんだこのざまは」議長は怒り狂った様子だ。「どいつもこいつも頭の悪い無能ばかりだ」



 建国に向けての会議も終わり、クリスとランランとジャックの三人は周辺の小さな村や土地を買収するため、資金集めに出かけた。
 ここまで食事もしっかりととって快適な生活をしていたが、追放されたことで資金はゼロだ。国を作るためにはまずお金がいる。

「どうやって資金を調達するの?」ランランが歩きながら聞いた。

「僕たちに向いていて、がっぽり稼げそうな仕事をするんだよ」クリスが答えた。「戦闘系の仕事だとかなり稼げるし、三人でやれば簡単にすむ」

杖士ブレイカーの需要は大きいが、それに対して供給は少ない」ジャックが言う。「俺たちはたくさんの国家に求められている」



 アキラとシエナはアジトに残って杖術じょうじゅつの訓練をしていた。

「おっ」シエナの攻撃をアキラがよける。

 二人の腕前はほぼ互角だ。しかし、使用している型が違う。
 アキラは攻撃と守備の両方に重きをおいて、素早い杖さばきで相手を翻弄するフォーム。それに対してシエナは攻撃に特化した王道のフォームだ。

 シエナのフォームは攻撃力においてかなりのスペックの高さを誇るが、体力の消耗が激しい。そのため、この訓練でも序盤はシエナが優勢だったのだが、半時間も戦い続けているとアキラが優勢になった。

「もっと早いうちに決着をつけておくべきだったな」アキラが言った。

「だって……相手が相手だもん」シエナは口ごもった。

「いやいや、杖術じょうじゅつはそんなに得意じゃないし、なんといってもランランにはどうしても勝てない」

 そういう意味で言ったわけじゃないのに。シエナはそう思ったが、何も言わなかった。

「ちょっと休憩するか」アキラが切り出す。「俺、体力が全然ないんだ」

「そんなことないでしょ」

「いやいや、ランランなんて一日の半分くらいぶっ続けで戦ってたからなー」アキラがため息をつく。

「またランランだ」シエナがつぶやいた。

「え?」

「いや、なんでもない」



「すみません、仕事を探しています」クリスが言った。

 クリス、ランラン、ジャックは大きな円形闘技場にきていた。ただただ歩いていたらばったり見つけたのだ。

「仕事だって?」闘技場の受付にはドワーフと思われる男が立っていた。「このハードな仕事がただの平民に――おっ、まさか! あんたら杖士ブレイカーなーのか?」
 ドワーフの男はマントを見てそう判断した。なんといっても、三人が羽織っているマントは、杖士ブレイカーにしか着用が許されていないものだ。

「ええ、そうです」クリスがうなずく。

「それはだーい歓迎ってやつよ!」ドワーフのテンションが異常に上がっている。「ぜーひ雇いたい! すーごい活躍を見せてくれたら、たーくさん報酬払うよー!」

「どんな仕事なんです?」クリスが聞いた。

「なーに、杖士ブレイカーにとっては簡単な仕事! ひとまずおーれについてきて!」
 ドワーフはテンション爆上げで三人を中に案内した。

「おーれはドワーフのバズ! あんた、名前は?」

「僕はクリス、彼はジャック、彼女はランランだ」クリスが答えた。

 バズは手をバンバンたたいて喜んだ。「知ってる、知ってる! これは期待できそーだ!」

 闘技場の客は満席で、フィールドでは剣を持った戦士たちが戦いを繰り広げている。
「わぉ」ランランが言った。「面白そう」

「そうか?」ジャックはあまり好きじゃなさそうだ。

「あーんたたちにはあそこで戦ってもらうよー!」バズが言う。「ただの戦闘じゃあなくて、エンターテイメントなんだ。だから、観客がたのーしめるように戦ってくれよー!」

 そうして三人は戦士たちの控室に連れていかれた。
 バズは三人を部屋に送ると、また受付のところまで戻っていった。

「あいつ、酔っ払ってるのか?」ジャックが低い声で言った。「なんだあの話し方」

「ああいう人なんでしょ」とランラン。「悪い人じゃなさそうだし、いいじゃん」

「ひとまず仕事をこなさないことにはわからないな」クリスが言った。「報酬をもらえれば――」

「本当にいいのか?」ジャックが聞く。「俺たちは杖士ブレイカーだ。むやみやたらと力を使うことは禁じられている」

「僕たちは自由な杖士ブレイカーだ、ジャック。お金を稼がないことには何もできない」

 それから少しすると、バズが三人を呼びに戻ってきた。「おーい! もう出番だよー!」

 クリスとランランはすぐに立ち上がりフィールドに出たが、ジャックはなかなか立ち上がろうともしなかった。

「おーい! 人間! 早く早く!」

 ジャックはしぶしぶ立ち上がった。



★ ★ ★



 ~作者のコメント~
 仕事を探すのは大変ですよね。
 彼らの円形闘技場での物語は次の回でも続きます。楽しんでくださいね。
 シエナもアキラの気を引きたいところです。みんなで応援しましょう。
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