1 / 13
第1話 伝説の勇者、あっさりと追放される
しおりを挟む
「アーサー、お前にはこのパーティを抜けてもらう」
「……ん?」
俺がリーダーをしている勇者パーティ、【黄金の輝き】の本拠地。
魔王討伐で手にした大金をいっぱいつぎ込み、完成させた大豪邸。
そこのリビングで、俺は今、パーティ追放を言い渡された。
「えーっと……なんで?」
「いいか、オレはなぁ、セイラとヌーナが好きなんだよ」
「そうなの? だったら告ればいいじゃん」
セイラとヌーナはこのパーティの女剣士と治癒師だ。
どうやら俺を追放しようとしている盗賊のライド君は、この2人にクラッシュしているらしい。
別にいいと思うよ。
パーティ内恋愛禁止とか言った覚えはないしね。
勝手に付き合って、勝手に結婚してください。俺は応援するよ。
「あ? ふざけんな! あいつらは2人ともお前が好きなんだよ!」
「え! まじで?」
「ちょっと前に聞いた! クソっ! なんでお前なんだよ! そりゃあ魔王倒した勇者だし、金髪に碧眼とか超かっこいいし、頼りになるし、優しいし、気さくで話しやすいし、リーダーシップあるし、最高だけどよ! なんでお前なんだ!?」
「めっちゃ褒めてくれるじゃん……」
そんなべた褒めするのに、追放するの?
おかしくない?
「だからお前を追放してやる! もう魔王なんて死んだんだ! お前がパーティにいなくとも、オレたちだけでやっていける!」
「まあいいけどさ、2人には俺の追放理由なんて説明するの?」
「パンツだ!」
「は?」
「オレがさっき2人の部屋からパンツを盗んだ。その犯人をお前ってことにして、正義のヒーローであるオレが追放したことを事後報告する!」
幻滅したよライド君……。
俺の目の前では、ドヤ顔のライドが2人のパンツをぶん回している。アホか。
「わかったよ。俺は黙って追放されるから、そのパンツ窃盗事件の犯人にするのだけはやめてくれるかな?」
「ちっ……じゃあさっさと出てけ!」
「はーい」
というわけで、『元』伝説の勇者、アーサー・カイザーリングはパーティを追い出されましたとさ。
***
夜道を1人で歩く。
俺たちの本拠地は王都の中心地にあったので、しばらくは街灯に照らされた賑やかな街を歩くことになるだろう。
この追放事件の1番の被害者であるセイラとヌーナは大丈夫かな。
あの時は買い物に行っていた2人。
帰ってきてパンツ盗まれてたってわかったら、セイラとか特にブチ切れだよ。
***
「……今、なんて?」
「いや……だから、あのアーサーがお前たちのパンツを盗んでたところをオレが捕まえて、そのままパーティを追放してやったって言ってんだろ!」
「はぁ?」
【黄金の輝き】の本拠地。
先ほどアーサーが追放を言い渡されたリビングでは、鬼の形相をしたクール系美女に、ライドが踏みつけられていた。
冷酷な切れ長の瞳で、ライドを見下ろしている。
「どうせあんたが盗んだんでしょ! アーサーがそんなことするはずないじゃない! 死になさい!」
「オレを信じてくれよ! オレとお前の仲だろ?」
「あんたと仲良くなった覚えはない。死ね、このクズ!」
「違うんだってぇ……」
弱く、小さくなっていくライドの声。
彼の顔面を踏むセイラの視線は、時を刻むごとに冷たくなっていく。
「最低です、ライドさん……」
その光景を見つめるのは、ゆるふわ系美少女のヌーナ。
すっかりライドに幻滅している。
「この前はあたしたちのお風呂を覗こうとしてましたよね……」
「ヌーナ、もう心配はいらないわ。こいつは私が殺す」
「やめろって! オレはお前たちのためを思って――」
「もうしゃべるなカス。早くアーサーを連れ戻せカス。そしてお前がパーティから抜けろカス」
***
決めた。
俺、今日で勇者引退する。
そろそろ辞め時だと思ってたし、ライド君もちょうどいい時に追放してくれたな。ありがとよ。
ということで、これから無一文の俺はその暮らしだ。
再出発。
何もないけどいいじゃない。
のんびり旅をして、国を転々としながら生きていきたいね。
よし!
せっかくだし、あいつを誘ってみよう!
新しい生活を妄想して上機嫌になった俺は、あいつと会うためにアブラーバ横丁を走る。
目的地は王都で1番の酒場だ。
「どーも2日ぶりーっす」
「あれ、あっちゃん? 僕がここで働き出してからすっかり常連だね」
「いやいやぁ、今日はお前に大事なお知らせがあってだなぁ」
「僕に?」
酒場に入ると、黒髪の好青年が出迎えてくれた。
そう、彼こそ、漆黒の魔王、スコットなのである!
スコット・マオウダゼは、魔王なのに超いいヤツだ。
魔王討伐の時に初めて出会い、なんかちょっと話してみたらめっちゃ面白くて優しいヤツだった。
もうなんとなくわかると思うけど、俺は魔王を倒したわけじゃない。
魔王に酒場のバイトを勧めただけ。
そしたらスコットはすんなり了承。
魔王軍を解散させ、闇の騎士たちに新しい仕事先を紹介、自らも魔王の役職を退任し、王都ナンバーワンの酒場でバイトを始めた。
「なあスコット、さっき俺、パーティから追放されてさぁ、勇者引退することにしたんだよね」
「え、ほんとに?」
「そうそう、で、本題なんだけど、俺とお前で、引退旅行にでも行こうぜっ」
【ひとこと】
気ままに書き始めました。平和な世界ですね。
面白いと思っていただけたら、お気に入り登録、ぜひぜひよろしくお願いします!
「……ん?」
俺がリーダーをしている勇者パーティ、【黄金の輝き】の本拠地。
魔王討伐で手にした大金をいっぱいつぎ込み、完成させた大豪邸。
そこのリビングで、俺は今、パーティ追放を言い渡された。
「えーっと……なんで?」
「いいか、オレはなぁ、セイラとヌーナが好きなんだよ」
「そうなの? だったら告ればいいじゃん」
セイラとヌーナはこのパーティの女剣士と治癒師だ。
どうやら俺を追放しようとしている盗賊のライド君は、この2人にクラッシュしているらしい。
別にいいと思うよ。
パーティ内恋愛禁止とか言った覚えはないしね。
勝手に付き合って、勝手に結婚してください。俺は応援するよ。
「あ? ふざけんな! あいつらは2人ともお前が好きなんだよ!」
「え! まじで?」
「ちょっと前に聞いた! クソっ! なんでお前なんだよ! そりゃあ魔王倒した勇者だし、金髪に碧眼とか超かっこいいし、頼りになるし、優しいし、気さくで話しやすいし、リーダーシップあるし、最高だけどよ! なんでお前なんだ!?」
「めっちゃ褒めてくれるじゃん……」
そんなべた褒めするのに、追放するの?
おかしくない?
「だからお前を追放してやる! もう魔王なんて死んだんだ! お前がパーティにいなくとも、オレたちだけでやっていける!」
「まあいいけどさ、2人には俺の追放理由なんて説明するの?」
「パンツだ!」
「は?」
「オレがさっき2人の部屋からパンツを盗んだ。その犯人をお前ってことにして、正義のヒーローであるオレが追放したことを事後報告する!」
幻滅したよライド君……。
俺の目の前では、ドヤ顔のライドが2人のパンツをぶん回している。アホか。
「わかったよ。俺は黙って追放されるから、そのパンツ窃盗事件の犯人にするのだけはやめてくれるかな?」
「ちっ……じゃあさっさと出てけ!」
「はーい」
というわけで、『元』伝説の勇者、アーサー・カイザーリングはパーティを追い出されましたとさ。
***
夜道を1人で歩く。
俺たちの本拠地は王都の中心地にあったので、しばらくは街灯に照らされた賑やかな街を歩くことになるだろう。
この追放事件の1番の被害者であるセイラとヌーナは大丈夫かな。
あの時は買い物に行っていた2人。
帰ってきてパンツ盗まれてたってわかったら、セイラとか特にブチ切れだよ。
***
「……今、なんて?」
「いや……だから、あのアーサーがお前たちのパンツを盗んでたところをオレが捕まえて、そのままパーティを追放してやったって言ってんだろ!」
「はぁ?」
【黄金の輝き】の本拠地。
先ほどアーサーが追放を言い渡されたリビングでは、鬼の形相をしたクール系美女に、ライドが踏みつけられていた。
冷酷な切れ長の瞳で、ライドを見下ろしている。
「どうせあんたが盗んだんでしょ! アーサーがそんなことするはずないじゃない! 死になさい!」
「オレを信じてくれよ! オレとお前の仲だろ?」
「あんたと仲良くなった覚えはない。死ね、このクズ!」
「違うんだってぇ……」
弱く、小さくなっていくライドの声。
彼の顔面を踏むセイラの視線は、時を刻むごとに冷たくなっていく。
「最低です、ライドさん……」
その光景を見つめるのは、ゆるふわ系美少女のヌーナ。
すっかりライドに幻滅している。
「この前はあたしたちのお風呂を覗こうとしてましたよね……」
「ヌーナ、もう心配はいらないわ。こいつは私が殺す」
「やめろって! オレはお前たちのためを思って――」
「もうしゃべるなカス。早くアーサーを連れ戻せカス。そしてお前がパーティから抜けろカス」
***
決めた。
俺、今日で勇者引退する。
そろそろ辞め時だと思ってたし、ライド君もちょうどいい時に追放してくれたな。ありがとよ。
ということで、これから無一文の俺はその暮らしだ。
再出発。
何もないけどいいじゃない。
のんびり旅をして、国を転々としながら生きていきたいね。
よし!
せっかくだし、あいつを誘ってみよう!
新しい生活を妄想して上機嫌になった俺は、あいつと会うためにアブラーバ横丁を走る。
目的地は王都で1番の酒場だ。
「どーも2日ぶりーっす」
「あれ、あっちゃん? 僕がここで働き出してからすっかり常連だね」
「いやいやぁ、今日はお前に大事なお知らせがあってだなぁ」
「僕に?」
酒場に入ると、黒髪の好青年が出迎えてくれた。
そう、彼こそ、漆黒の魔王、スコットなのである!
スコット・マオウダゼは、魔王なのに超いいヤツだ。
魔王討伐の時に初めて出会い、なんかちょっと話してみたらめっちゃ面白くて優しいヤツだった。
もうなんとなくわかると思うけど、俺は魔王を倒したわけじゃない。
魔王に酒場のバイトを勧めただけ。
そしたらスコットはすんなり了承。
魔王軍を解散させ、闇の騎士たちに新しい仕事先を紹介、自らも魔王の役職を退任し、王都ナンバーワンの酒場でバイトを始めた。
「なあスコット、さっき俺、パーティから追放されてさぁ、勇者引退することにしたんだよね」
「え、ほんとに?」
「そうそう、で、本題なんだけど、俺とお前で、引退旅行にでも行こうぜっ」
【ひとこと】
気ままに書き始めました。平和な世界ですね。
面白いと思っていただけたら、お気に入り登録、ぜひぜひよろしくお願いします!
307
あなたにおすすめの小説
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった
黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった!
辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。
一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。
追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる