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第2話 伝説の勇者、大親友の魔王の家に泊まる
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スコットは今日限りでバイトを辞めた。
そこまでしろと言ったわけじゃないけど、なんかせっかくだし結構遠くまで行って放浪しようぜってことになった。
「とりあえず、今日はスコットの家に泊まるよ。ごめんねぇ」
「いやいや、遠慮しなくていいよ。1人だと寂しいからね」
「なんだ可愛いヤツだな~」
笑いながら、スコットの頭をぐりぐりする。
ローラン王国の誰もが怯える漆黒の魔王、スコット・マオウダゼは可愛らしい顔立ちをしている。
小柄だし、目も大きい。
俺が今19歳で、スコットは234歳。
たまにジェネレーションギャップを感じなくもないけど、まあそりゃあそうだよね。年の差200歳以上あるもん。
「えへへ、あっちゃんに頭ぐりぐりされるの、癖になっちゃったね」
「だって可愛いじゃん」
スコットは愛らしく頭の後ろをかくと、何かを思い出したように目を丸くした。
「そういえば、今日は僕の家にあっちゃんとは別の客人が来ることになってたんだ。いいかな?」
「もちろんいいよー」
魔王の家への客人。
誰だろう。
闇の帝王とかかな。
***
「お邪魔しまーす!」
スコットの家は王都のはずれ、元バイト先である酒場までは馬車で1時間以上かかる位置にある。
でも、俺たちは伝説の勇者と魔王。
そんな距離くらいダッシュで3分ってとこかな。
腐っても俺は王国1番の勇者だからね。魔王を倒してはないけど、本当に倒せないかどうかはわからない。
だって、絶対にスコットと戦うつもりがないから。
友達だもんな。
ライバル心とかも一切ないし。
スコット宅はこじんまりとした感じで、俺の元所属先である【黄金の輝き】の馬鹿みたいに広い豪邸とは正反対。
人間が暮らすにはこのくらいの方が過ごしやすいと思うよ。あ、こいつ人間じゃなかった。
「スコットってさ、見た目だけだと人間だよね」
「え、それって褒めてる?」
「うん。バイト先の店主からも怪しまれなかったし」
「一応魔王だって自己紹介したんだけどね。全然信じてもらえなかったよ」
そりゃあそうだ。
魔王は俺が倒したことになってるし、そもそも魔王がこんなフレンドリーだとは思われてないし。
「俺が魔王は無害な存在だって広めようか?」
「いや、いいよ。僕が死んだことになって人間たちが安心してるなら、そのままにしておけば大丈夫」
好青年だな、この魔王。
見た目はほんとに10代くらいのイケメン君。
きっとモテるよ。
スコットと雑談しながらハーブティーを飲んでいると、木製の重い扉がドンドンとノックされた。
「スコットさん、おれっす」
「オースティン、入って入って」
扉が開き、どこか勤勉そうな紫髪の青年が入ってくる。
この人は……。
「もしかして、魔王軍幹部の?」
「アーサーさんじゃないすか! 久しぶりっす」
「2ヶ月ぶりって感じ?」
「そうっすね。アーサーさんにはほんとお世話になったっす」
オースティンは魔王軍幹部を務めていた、超絶有能な騎士団長だ。
部下からも慕われていたし、同じリーダーという立場を任された人間として尊敬できる男だった。
まあ、彼は人間じゃなく魔族だけどね。
このレベルになると、そんなの大した違いじゃない。
「せっかくだし、オースティンも誘っとく?」
「いいね、彼が良ければ、だけど」
俺とスコットの会話に、首を傾げるオースティン。
「いやぁ、実は明日からスコットと世界を放浪することになったんだよ。オースティンも来る?」
「まじすか!? 最高っすね! おれも行くっす」
「即決か。いいね。それじゃあ、早速最初の目的地を決めよう。くじ引きでいいよね?」
***
セイラは必死にアーサーを追っていた。
アーサーが追放されてからさほど時間がたっていなかったのが幸いだ。
まだ街の中をうろついているはず。
「このあたりでアーサー・カイザーリングを見なかった?」
「あー、さっき笑顔でそこらへん歩いてましたよ。え、ていうかあなたは……セイラ・アリーエンスですよね! めっちゃ美人! 握手してください」
「は? 潰すぞ」
「あ、すみません」
その後も何度か聞き込みをし、アーサーが酒場に入ったという情報を得たセイラ。
そこの酒場に入ってみるも――。
「アーサーならもう出てったよ。旅に出るってさ」
「旅? どこへ?」
「どこかは聞いてないけど、ついさっきうちを辞めてったスコットっていう好青年と一緒に旅に出るらしくて――」
セイラはもう酒場を出ていた。
――アーサーが王都を出る。
「あのクズ、あいつのせいでアーサーが……」
もうアーサーには会えないかもしれない。
元々、アーサーは自由な性格だ。時々ふらっとどこかにいなくなることもあった。
そんなアーサーを王都にとどめていた勇者パーティ。
そこから、解き放ってしまったのだ。
「ライドのカスを殺す。そしてアーサーを取り戻す」
暗い夜道で、セイラは固く拳を握り締めた。
そこまでしろと言ったわけじゃないけど、なんかせっかくだし結構遠くまで行って放浪しようぜってことになった。
「とりあえず、今日はスコットの家に泊まるよ。ごめんねぇ」
「いやいや、遠慮しなくていいよ。1人だと寂しいからね」
「なんだ可愛いヤツだな~」
笑いながら、スコットの頭をぐりぐりする。
ローラン王国の誰もが怯える漆黒の魔王、スコット・マオウダゼは可愛らしい顔立ちをしている。
小柄だし、目も大きい。
俺が今19歳で、スコットは234歳。
たまにジェネレーションギャップを感じなくもないけど、まあそりゃあそうだよね。年の差200歳以上あるもん。
「えへへ、あっちゃんに頭ぐりぐりされるの、癖になっちゃったね」
「だって可愛いじゃん」
スコットは愛らしく頭の後ろをかくと、何かを思い出したように目を丸くした。
「そういえば、今日は僕の家にあっちゃんとは別の客人が来ることになってたんだ。いいかな?」
「もちろんいいよー」
魔王の家への客人。
誰だろう。
闇の帝王とかかな。
***
「お邪魔しまーす!」
スコットの家は王都のはずれ、元バイト先である酒場までは馬車で1時間以上かかる位置にある。
でも、俺たちは伝説の勇者と魔王。
そんな距離くらいダッシュで3分ってとこかな。
腐っても俺は王国1番の勇者だからね。魔王を倒してはないけど、本当に倒せないかどうかはわからない。
だって、絶対にスコットと戦うつもりがないから。
友達だもんな。
ライバル心とかも一切ないし。
スコット宅はこじんまりとした感じで、俺の元所属先である【黄金の輝き】の馬鹿みたいに広い豪邸とは正反対。
人間が暮らすにはこのくらいの方が過ごしやすいと思うよ。あ、こいつ人間じゃなかった。
「スコットってさ、見た目だけだと人間だよね」
「え、それって褒めてる?」
「うん。バイト先の店主からも怪しまれなかったし」
「一応魔王だって自己紹介したんだけどね。全然信じてもらえなかったよ」
そりゃあそうだ。
魔王は俺が倒したことになってるし、そもそも魔王がこんなフレンドリーだとは思われてないし。
「俺が魔王は無害な存在だって広めようか?」
「いや、いいよ。僕が死んだことになって人間たちが安心してるなら、そのままにしておけば大丈夫」
好青年だな、この魔王。
見た目はほんとに10代くらいのイケメン君。
きっとモテるよ。
スコットと雑談しながらハーブティーを飲んでいると、木製の重い扉がドンドンとノックされた。
「スコットさん、おれっす」
「オースティン、入って入って」
扉が開き、どこか勤勉そうな紫髪の青年が入ってくる。
この人は……。
「もしかして、魔王軍幹部の?」
「アーサーさんじゃないすか! 久しぶりっす」
「2ヶ月ぶりって感じ?」
「そうっすね。アーサーさんにはほんとお世話になったっす」
オースティンは魔王軍幹部を務めていた、超絶有能な騎士団長だ。
部下からも慕われていたし、同じリーダーという立場を任された人間として尊敬できる男だった。
まあ、彼は人間じゃなく魔族だけどね。
このレベルになると、そんなの大した違いじゃない。
「せっかくだし、オースティンも誘っとく?」
「いいね、彼が良ければ、だけど」
俺とスコットの会話に、首を傾げるオースティン。
「いやぁ、実は明日からスコットと世界を放浪することになったんだよ。オースティンも来る?」
「まじすか!? 最高っすね! おれも行くっす」
「即決か。いいね。それじゃあ、早速最初の目的地を決めよう。くじ引きでいいよね?」
***
セイラは必死にアーサーを追っていた。
アーサーが追放されてからさほど時間がたっていなかったのが幸いだ。
まだ街の中をうろついているはず。
「このあたりでアーサー・カイザーリングを見なかった?」
「あー、さっき笑顔でそこらへん歩いてましたよ。え、ていうかあなたは……セイラ・アリーエンスですよね! めっちゃ美人! 握手してください」
「は? 潰すぞ」
「あ、すみません」
その後も何度か聞き込みをし、アーサーが酒場に入ったという情報を得たセイラ。
そこの酒場に入ってみるも――。
「アーサーならもう出てったよ。旅に出るってさ」
「旅? どこへ?」
「どこかは聞いてないけど、ついさっきうちを辞めてったスコットっていう好青年と一緒に旅に出るらしくて――」
セイラはもう酒場を出ていた。
――アーサーが王都を出る。
「あのクズ、あいつのせいでアーサーが……」
もうアーサーには会えないかもしれない。
元々、アーサーは自由な性格だ。時々ふらっとどこかにいなくなることもあった。
そんなアーサーを王都にとどめていた勇者パーティ。
そこから、解き放ってしまったのだ。
「ライドのカスを殺す。そしてアーサーを取り戻す」
暗い夜道で、セイラは固く拳を握り締めた。
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