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八階 智天使

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 季節は冬になり、約束していた合宿の日が近づいてくる。行く場所の予報は雪で、降雪量はかなり多いみたいだ。俺らが住んでいる地域でも寒いけど、どれだけ寒い場所なんだろうか。
 準備をして、カバンに荷物を詰め込む。全て詰め終えた事を確認して、椅子に座る。なんだかんだ、皆が家に集まっていない日は珍しい気がする。
 「また年が明けそうだよね」
 「ええ、ここに来て二年が経過しようとしてますよ!」
 「本当に…いろいろあったよ」
 「ぼちぼち卒業ですよ?」
 「うわぁ…本当にそうだ。」
 来年から三年生になる。こんなに早く来るなんて思わなかったな…。もっといろいろな事をしたかった…とは思わない。実際、これでもいっぱいやれたほうだと思う。ぼっちを脱出できたから。
 これからどうしようかな…。三年になるって事は、今後の事を考えないといけないし。大学進学?就職?なんだろう。
 「私と一緒に天界で過ごすんですよね?」
 永久就職先が見つかりました。ただ…今すぐに行くってのも考えられないんだよね…。友達がいっぱい出来て、今が楽しいんだ。
 「返事は…後ででもいいんですよ?」
 「あ、答えちゃったか?」
 「大丈夫ですけど…卒業までには行きましょうね?」
 なるほどね。とりあえず…寝ます。明日早いでしょう?スキーに行って帰ってきたらまた考えよう。
 翌朝、荷物をまとめて二人で出かける。皆で新幹線に乗り込んで、座席に座る。荷物を下ろして一息ついた。
 「僕新幹線って初めてです!」
 「そうなの?新幹線って結構乗る事多い気がしたけど…?」
 「あんまり乗らなくないですか?」
 「親戚がどこに居るかとか関係してるんじゃね?」
 「そっか、そういうものか」
 「うちも乗らないかな。」
 新幹線はね、景色が変わるのが面白い!電車よりも早く景色が変わるけど。建物が多くある場所、自然が多い場所、雪が降ってる場所…いろいろある。
 三十分ぐらい走るとトンネルに入る。耳に何かが詰まったような感覚がする。息を飲み込んだりして、空気を抜いていたら…外は雪景色になっていた。
 「おお、すごい!綺麗だね」
 「俺らの住んでる方じゃこんなに降る事はないもんな」
 「ちょっと移動しただけでこんなになるんですね…!」
 駅に着いて、荷物を背負って下車する。ただいまの気温…-3度?!寒いわけだ?!こんなところに住めるんだな…。なんだろう…雪を見てると興奮してくる!!
 駅を出て雪にダイブする。冷たい!!しかも…埋まる!すごいな…ていうか、なんか道が濡れてる…?これ、何か出てるのかな?
 「水で雪を解かすんですよ?」
 「そうなの?!」
 「ええ、結構色々な所でやってますね」
 そうなんだな。感心しながら、送迎バスに乗り込む。ゲレンデまで連れて行ってくれるバスがあるみたいだ。
 数分走ったら、ゲレンデに到着する。雪山にリフトがついていて、建物が何件かある。謎の装置や板が立て掛かっていたり。
 「受付に行きましょうか」
 先を歩く笑夢に皆で着いていく。レンタルショップやチケット売り場、食堂など様々な店が並んでいる。チケット購入とレンタルを済ませて、更衣室で着替える。
 「さあ、行きましょうか!」
 「スノーボードにしたんだけど…痛い?」
 「無理に何かしなければ痛くはないですよ?」
 「そっか。」
 「なんだこれ?!歩きづらいな…」
 「そうだね…うちも転びそう…」
 「先輩方…気合です!」
結君?!意外と熱血タイプなの?!ルトはともかく…智一は器用に何でもできるイメージがあったんだけど、気の所為だったのか。
 「わたくし達だけスキーですのね?」
 「本当だ、スキーの方が良かった?」
 「いえ、別に大丈夫ですわよ?」
 「そうですね、どちらもこなせはするので」
 「流石すぎる。」
 「では、リフトに乗りましょうか。」
 軽く前提を聞いて、リフトで上に上がる。板…重すぎ!!片足に全部が乗っかってくる…。なんかの苦行か?!
 「しょうがないですよ、こればかりは」
 「慣れるものなの?」
 「さぁ…人によって違うんじゃないですかね?」
 「なるほどね…?」
 リフトで上まで上がったら、足を固定して立ち上がる。グラグラして立つことが出来ない。なんだこれは?!とんでもないぞ…?!
 「はい、まずは肇さんからです」
 「うん?」
 笑夢が手を出している。俺は両手で笑夢の手を取る。お、立ち上がれる?!キープする位置が何となくわかるぞ…?!
 「このままずるずる降りて行ってみましょう!」
 「分かった」
 言われた通りにすれば何となく滑れるな!こんな感じなんだな?面白いな…?あれ…?止まらないんだけど?!
 俺はそのまま下の方まで落ちて行った。不幸中の幸いで、意識はある。でもこれ…上がれないよな。
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