探偵たちに歴史はない

探偵とホットケーキ

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第6章

後編

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「探偵社アネモネ」は、荒らされていた。
セキュリティーに関しては、個人情報を扱う職場であるため非常に強固なものだったが、工具らしきものを使われて、強引にドアや窓が破られていた。三人は、暫し茫然と立ち尽くすしかなかった。
何か盗まれたのか、壊されたのかは、後で警察を入れて確かめるしかないことは、三人ともすぐに分かった。ただ、明らかなことが一つだけある。
「……優子さんからいただいた資料が、根こそぎなくなっていますね」
水樹が呟くと、陽希がふらふらとテーブルに寄って行って、何もなくなっているテーブルを撫でた。
「どうしよう、優子さんが命懸けでくれた、大事な資料だったのに……」
理人が、そんな陽希に近寄って行って、その背を撫でる。だが、水樹は鼻を鳴らした。
「おどおどするんじゃありません。犯人の思うつぼですよ」
「だってー……」
「盗まれたということは、あの資料は重要だったということの、証明に他なりません。先ほどの文集の文面を、僕は暗記しています」
「文集の文面?」
陽希はインターネットを用いた調査に身を粉にしていた時だったので、聞いていなかっただろう。水樹は、覚えている文章を諳んじて、更に、その頭の文字だけを拾った。
「あの怪しげな作文の、それぞれの行の文頭の文字だけを拾うと、『ヴェルミル文明の秘密 ユリノキの下』となるのです」
「ゆりのき……? 百合って木に咲くんだっけ?」
「百合ではありませんよ、陽希。ユリノキはユリノキという植物です」
目を白黒させる陽希に、水樹はため息を吐く。本当に、興味のないことにはとんと興味がない奴だ。本棚から一冊の植物図鑑を取って来て、机上に広げる。其処には、ユリノキに関する記載が確かにあった。
「比較的、珍しい木です。更に、小学生の子どもが、この文章を残している。子どもの移動距離の範囲かつユリノキの下、というだけで、かなり場所は絞れるでしょう」
「後は、作文の作者である少女……『はなむら ひより』さんの消息を掴む必要がありますね」
「俺、調べてみる!」
陽希が早速事務所を飛び出して行きそうになるので、水樹はその腹のあたりに手を当てて制して、
「もう遅いですから、明日出直しましょう。事務所を荒らした犯人が、戻って来ないとも限りません」
と、首を左右に振った。その後、三人は警戒を交代で睡眠を取り、何とか無事に朝を迎えることができた。
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