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第7章
後編
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再び、陽希が運転するブラウンクリスタルマイカのタントで、ヒヨリの住所として書かれていた場所へ向かう。古い車だけれど、ちゃんと走ってくれる。
そうして辿り着いた家屋は、静かな住宅地の一角にひっそりと佇んでいた。建てられた当時の流行を反映した、昭和のデザインがそのまま残されている。アイボリーのモルタル仕上げの外壁。所々に薄いひび割れが走り、長い年月が過ぎたことを語っているようだ。かつては艶やかだったはずのペンキも、今では日差しと風雨にさらされて色褪せ、全体にくすんだ印象を与えている。
切妻屋根は黒い瓦で葺かれており、まだしっかりと形を保っているものの、雨樋には落ち葉が詰まり、その周囲に苔が薄く広がっている。玄関には木製の引き戸があり、かつて丁寧に手入れされていた彫りのある装飾がまだわずかに残っている。
庭には、小さな木が数本植えられているが、その枝葉は自由気ままに伸び、明らかに人の手が長らく入っていない。雑草が足元を覆い、花壇だったと思われる場所には野花がランダムに咲いている。正面には小さな門があり、その鉄製の柱には赤茶けた錆。
「お待ちください、二人とも」
理人は、安全確認の為に、先んじてその庭に立って辺りを見回してくれる。それから、ため息を吐いた。
「水樹。ここには、もう……」
水樹にも分かっていた。理人がみなまで言う前に、頷いた、その時である。
「貴方たち、どちら様?」
背後から声を掛けられた。水樹は、自然と肩が跳ねたが、振り返ると、其処にいたのは七〇代と思しき女性だった。草刈りの道具と、雑草をまとめた袋を持っている。
「僕のおじが、昔、花村ヒヨリさんにお世話になったと話を聞いて……僕はおじにとても可愛がってもらって、そのおじが亡くなったので、故郷を巡っているところなんです」
水樹が嘘を、感動たっぷりの口調で伝えると、その七〇代の女性は不可思議そうに眉を顰め、首を傾げた。
「このうちにはね、五年前から誰も住んでませんよ。私は遠い親戚で、詳しいことは言えませんが」
「ヒヨリさんは、何処かへ引っ越されたんですか?」
「ヒヨリさんは、亡くなっています」
「嗚呼……五年前に訪ねていれば良かったね、水樹ちゃん」
陽希が肩を竦め、水樹が中折れ帽を手で押さえながら俯くと、更に女性は訝し気な顔をし、
「ヒヨリさんは、十一歳の夏に亡くなったんですよ」
「えっ……」
「ええ、川に落ちてね。おじさまがおっしゃってなかったんですか? 一体、いつのお知り合い?」
思わず言葉を失う水樹と陽希に、理人だけが冷静に、穏やかに、話を逸らしつつ立ち去るきっかけを作ってくれたらしい。気づいたらタントに戻っていた。理人が、あの場を取り繕うのに何を言っていたのか、水樹は全く聞いていなかった。そのくらい動揺していた。
そうして辿り着いた家屋は、静かな住宅地の一角にひっそりと佇んでいた。建てられた当時の流行を反映した、昭和のデザインがそのまま残されている。アイボリーのモルタル仕上げの外壁。所々に薄いひび割れが走り、長い年月が過ぎたことを語っているようだ。かつては艶やかだったはずのペンキも、今では日差しと風雨にさらされて色褪せ、全体にくすんだ印象を与えている。
切妻屋根は黒い瓦で葺かれており、まだしっかりと形を保っているものの、雨樋には落ち葉が詰まり、その周囲に苔が薄く広がっている。玄関には木製の引き戸があり、かつて丁寧に手入れされていた彫りのある装飾がまだわずかに残っている。
庭には、小さな木が数本植えられているが、その枝葉は自由気ままに伸び、明らかに人の手が長らく入っていない。雑草が足元を覆い、花壇だったと思われる場所には野花がランダムに咲いている。正面には小さな門があり、その鉄製の柱には赤茶けた錆。
「お待ちください、二人とも」
理人は、安全確認の為に、先んじてその庭に立って辺りを見回してくれる。それから、ため息を吐いた。
「水樹。ここには、もう……」
水樹にも分かっていた。理人がみなまで言う前に、頷いた、その時である。
「貴方たち、どちら様?」
背後から声を掛けられた。水樹は、自然と肩が跳ねたが、振り返ると、其処にいたのは七〇代と思しき女性だった。草刈りの道具と、雑草をまとめた袋を持っている。
「僕のおじが、昔、花村ヒヨリさんにお世話になったと話を聞いて……僕はおじにとても可愛がってもらって、そのおじが亡くなったので、故郷を巡っているところなんです」
水樹が嘘を、感動たっぷりの口調で伝えると、その七〇代の女性は不可思議そうに眉を顰め、首を傾げた。
「このうちにはね、五年前から誰も住んでませんよ。私は遠い親戚で、詳しいことは言えませんが」
「ヒヨリさんは、何処かへ引っ越されたんですか?」
「ヒヨリさんは、亡くなっています」
「嗚呼……五年前に訪ねていれば良かったね、水樹ちゃん」
陽希が肩を竦め、水樹が中折れ帽を手で押さえながら俯くと、更に女性は訝し気な顔をし、
「ヒヨリさんは、十一歳の夏に亡くなったんですよ」
「えっ……」
「ええ、川に落ちてね。おじさまがおっしゃってなかったんですか? 一体、いつのお知り合い?」
思わず言葉を失う水樹と陽希に、理人だけが冷静に、穏やかに、話を逸らしつつ立ち去るきっかけを作ってくれたらしい。気づいたらタントに戻っていた。理人が、あの場を取り繕うのに何を言っていたのか、水樹は全く聞いていなかった。そのくらい動揺していた。
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