帝王アラタの再転生

たまゆき

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1章

アラタ出陣

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アラタは城壁の上に立ち、敵兵を見渡す。

「6万と聞いていたが、実質は5万とちょっとぐらいじゃな。お嬢ちゃん、すまんがそこの紫殿を介抱してくれんかのう。」

階段を駆け上がってきた巴に言葉をかける。

「アラタ、どんな脚力してるのよ。壁を蹴って登るなんて…
今見たけど、紫様は無理がたたったのか意識を失ってるだけで怪我も無いし命に別状は無いみたい。
それにしても酷いわね。何人もの民を見せつけるように…しかもこっちが攻撃出来ないように人質にしてる…」

直視できないのか巴は目を背ける。

「異世界でもああいった、たぐいは居たからのう。わしの倫理観は既に異世界に染まっておるから、ああいった手合いは魔物として討伐させてもらう。」

自信満々にアラタは言ってるが、巴は敵の数を見て不安を隠せない。

「やっぱり貴方の【全能力向上】だけじゃあの数は無理よ。ここを全員で守るべきだわ。あなたのスキルがあればみんな戦えるし、粘れば諦めてくれるかも。」

希望的観測と理解しながら巴は最善を提案する。

わしの事を気遣っておる、優しい娘じゃな。
アラタは微笑みながら、真っ直ぐな1歩を踏み出す。
そこは既に空であり、落ちる!と思った巴が手を伸ばす。

「とりあえず民を助けてくるかのう。」

縮地しゅくち】【剣聖けんせい

アラタは巴の差し出した手の1歩先に進むと、スキルを使い消えた。

落ちた!と思った巴は身を乗り出し下を見る、そこにはあるはずのアラタの姿は無く、見上げると
敵陣の中にアラタの姿があった。




新狼帝国の兵士は何が起こったか理解出来ない。
人質にしていたジパングの民と兵の間に少年がいきなり出現したかと思ったら、
人質に槍をつきつけていた最前列の兵士の首が突如、空高く舞ったのである。

アラタは【剣聖】のスキルにより、目にも止まらぬ速さで抜刀し、新狼兵の肩から上を切り離す。

糸が切れた人形のように新狼兵が倒れた後に、まだあどけなさの残る少年が立っている
手には刀が握られているが、鈍い光を帯び血もついていない。

アラタは震えるジパングの民に優しく話しかける。

「さて間に合わず済まなかったのう。後ろから槍を突きつけてたどもはもう手出しできん。ゆっくりでいいから関所の方へ逃げるのじゃ。後ろから襲われる事は無いから安心しなさい。」

その言葉を聞いた民達は恐る恐る動きだすと、だんだんと関所の方に走りはじめた。

後ろの方で何やら敵将らしき者が叫ぶ。

「何をやっている!!逃がすな!追えー!!」

その言葉を聞き、お互いに顔を見合わせた新狼兵士と蒼狼、人狼は思い出したかのように動きだす。

新狼兵は目の前の理解出来ない少年に対する恐怖を打ち消すように雄叫びを上げようと息を吸い込む。

「だまれ」

まさに今出そうとした兵士達の雄叫びは止まり、視線は少年に釘付けとなる

「ふむ、【魔力解放まりょくかいほう】で魔力を乗せた言葉も有効か。そんな大声を出させんよ。関所に逃げている民が怯えるじゃろう。心配せんでもお主らは生かして帰さんよ。」

少年に1番近い兵士の首が数百舞う

「攻めてきた場合は徹底的に」

次の首が数百舞う

「さらに自分達以外を同じ人間とあつかわない者はもう魔物じゃて。」

さらに首が舞う

「戦争中と言えども礼節無くせば、自分が討伐されても文句は言えまい」

少年が話す度に首が胴から離れ、倒れていく兵士だったモノが増えていく

最後尾で董卓は、目を見開いて少年から目が離せずにいた。

馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!
なぜチンギスのような化け物が他にもいる!!
あの忌々しい矢を弾く不思議な力が割れて
ここからが、俺への天からの褒美の時間だったろう!!
ふざけるなふざけるなふざけるなぁ!

「誰かどうにかしろ!!あのガキを止めろ!誰でもいい!!」

董卓の言葉虚しく少年は少しずつ前に進む。
その度に兵士や狼の首が飛ぶ。

「ほう、将はあそこか。ずいぶん後ろに隠れおって。」

キーーーンッ

アラタがつぶやきながら刀をふるった時、アラタの力に耐えられなかったのか、刀は鋭い音とともに2つに折れた。

「やはり持たんかったか…良い刀か剣を探さねばのう」

その姿を見た董卓は喜色ばりながら叫ぶ

「馬鹿め!剣使いが剣を失うとは!今だ!!餓鬼を殺せ!!圧殺しろ!!」

その号令を合図に兵士も蒼狼も人狼も一斉にアラタに飛びかかった。

恐るべき子供が、物量に覆いかぶさられ姿が見えなくなった事に董卓は安堵する。

「兵士がずいぶん減ったがあんな化け物をここで仕留められた事は良しとしよう、あとは全員で進軍してーー」

「爆ぜよ」

董卓が言い終わる前に兵が密集している中心地から声がする。

その瞬間、大規模な爆発が起こる

火傷しそうなほど熱い空気が董卓のほほを撫で、密集していた兵が吹き飛んだ中心地の煙が晴れると、何事も無かったように少年が立っていた。

「ふむ。爆破魔法も使えるのう。魔力が薄いのか、若返ったせいなのか威力はそこまで無いが、まあ充分なようじゃな。」

董卓は何が起こったか分からずにいた。
あんなものは元いた世界でも見た事がない。
火を吹き全てを吹き飛ばす、何だあれは!

アラタは周りを見渡し 新狼国の兵士が恐怖に目を見開き、固まっている事を確認する。

(狼や人狼は恐怖を感じておらんが、命令を待っているようじゃ。どうやら何かに操られておるようじゃな。これぐらいにしておくか。)

「彼我の力の差は分かったじゃろ?わしも魔物と言えど、この世界に来てすぐに大量に殺したい訳じゃない。非道な事をせんと誓い、二度とこの辺りに近付かんのなら許してやる。即刻立ち去れい。」

恐怖を感じていた董卓はその提案に息をのむ。

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