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#3 A fateful encounter 3 ~運命の出会い 3~
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世界に響き渡るほどの凶悪な叫び声に思わず耳を塞ぐと彼女を見た。
「今のは、なに!?」
「まぁ当然そうなるわよね」
彼女はこの鼓膜が破れるのでは思うほどの叫び声に一切動じる事なく、その声がする方角をジッと見つめながら言葉を続けた。
「シンは人間の魂を喰らうと言ったね。それは今でも行われている。時々日本でも海外でもニュースになったりしないか?不可解な失踪事件だったり飛行機だったりが突如として痕跡も無く消えてしまうような事件…」
「………」
「あの類いのほとんどがシンにマーキングされた事によって別の世界に連れて行かれてしまっているんだ。誰にも邪魔をされない環境で人間の魂を喰らうためにね。でも君の場合その場で魂を拘束して喰らおうとした。それは君が能力保持者でその魂が特別だから。そこに邪魔が入れば当然怒るよねって事」
「じゃ、じゃあ…」
「今叫んでるシンの標的は君であり、それを邪魔した私でもある」
彼女はそう言うと一歩前に踏み出した。
「君はこの事件に巻き込まれた力無き人間であり、それを守護するのが私たちの役目だから安心しなさい」
彼女は少年に力強く宣言をすると右腕を横に突き出した。
「《アニマ解放!!》」
その言葉を合図に突き出した右手に突如流動する何かが形を形成していき、次第に片手用の両刃直剣が彼女の右手に収まった。
「今のは特殊能力?」
目の前で起きた突然の出来事に興奮しながらそう聞くと、彼女は一瞬クスっと笑った。
「違うわ。これはただのナノテク」
彼女はそう言うと両刃直剣を持っていない左手を少年の方へ向けた。
「さぁ、どこかへ隠れていなさい。来るわよ…」
その言葉を皮切りに上空からデカイ何かが飛来してきているのがわかった。
少年は慌てて走り、建物の物陰から彼女の方を見るとそこには既に体長2メートルは軽く超えていそうな怪物が立っていた。
「……なにあれ…あの黒い影の面影全然ないじゃんか!!」
その叫びは直後に始まった戦闘の衝撃に掻き消されてしまった。
*
「あぁ…やっと、おでましね」
上空から飛来したシンが女性の目の前に着地すると激しい衝撃が起こり精神領域内の建物の窓ガラスが弾き割れた。
「現実世界に影響がないとは言え、気分の良いものではないわね」
そういうと彼女は両刃直剣を後ろに構え、地面を勢い良く蹴ると地面には淡い光が立ち昇った。
シンまでの距離はまだ若干遠いが彼女は両刃直剣を下から地面を抉りながら上に切り上げ鈍色の剣尖がシンの身体を斬りつける。
シンはその先制攻撃に怯み後ろに大きく下がろうとするが彼女の追撃は止まらなかった。
彼女は両刃直剣を軽々と正確に相手の身体を斬りつけている。
「これじゃあ全然能力者っぽくないわね」
ポツリとその言葉を残すと彼女の追撃が止んだタイミングで大きく後ろに飛びのいたシンに向かって両刃直剣を振りかぶり、投げつける。
彼女は親指を立て、人差し指と中指を伸ばし銃の形を作るとそれをシンに向けた。
「旋風の銃弾!!」
そう唱えると彼女の髪を靡かせながら指先に風が渦を巻きながら集まりだす。
「解放!!」
その言葉を合図に指先に集められた旋風が一気に解放され凄まじい速度でシンを目掛けて発射された。
シンは飛んできた剣槍をギリギリで躱すが直後に迫り来た旋風を躱す事ができず直撃した。
自分の目の前で行われる戦闘は一方的なものだった。
「……あれが能力…すごいや」
もっと近くで見たい、もっと近くであの世界を感じたい…
その感情が知らないうちに自分自身の行動に出ているなんて思わなかった。
あの一方的な戦いを見て、もう安全なのだと思った僕は徐々に建物の影から出ると金髪の彼女がシンに近づいて行っていた。
彼女はシンに近づきながら右手を構えるとシンに避けられてしまい地面に深く突き刺さった両刃直剣が、ガタガタと震えだし地面から抜けた。
そのまま勢い良く彼女が構えた右手に向かって飛んでいき綺麗に納まると右手に両刃直剣を携えシンに向かって歩みを進める。
旋風によって身体を若干抉られたシンは近づいてくる彼女を見て恐怖を感じながらどうにかこの状況を打開する方法を探した。
そしてシンは一点を見つめた。
「そろそろ終わりにしよう」
彼女がそういうとそれに応えるようにシンも凶悪な咆哮を上げた
「キギャアアアアアアァァァ!!!!!」
シンは咆哮を上げると彼女目掛けて瓦礫をもろともしない突進を繰り出してきたが、彼女はいとも容易くそれを避けた。
だがシンの突進は勢いを止める事なく後方へ進んでいく。
彼女はシンの先にあるものを見た。
「早く逃げなさい!!!!!!」
*
身体が動かない……
瀕死のシンと目が合ってしまった事により切れていたはずの何かが再び結ばれてしまったらしい。
あぁ…せっかく助けてもらったのに、自分のせいでまたこんな事になるのか。
見えるだけで力がないから、普段なら見て見ぬふりをして今まで関わらない様にしてたのにな。
「あーぁ…やっぱ僕らしくないことはするもんじゃないよね」
思わず口に出た言葉を最後にゆっくりと瞳を閉じようとした。
「そんなことはない。君は少なくとも一人の命を救ったんだ…」
目を開けると、そこには淡い光が立ち昇る右手を前に突き出し、シンの攻撃を片手で受け止め僕を守ってくれている彼女が凛と立っていた。
「…自分のした行動に誇りを持て!!」
「……っ」
彼女は空いている左手に力を込めると、右手の淡い光とは違い、力強い光が左手に集約されていくのがわかった。
「暴嵐裂破!!!」
彼女が力強く言葉にした直後、五つもの旋風が拳の周囲に形成されるとそれを身体に喰らいつくシン目掛けて放った。
拳がシンと接触した瞬間五つの旋風は巨大な竜巻となりシンを上空へ巻き上げながら一つの嵐となり爆ぜ、衝撃は凄まじい強風となって駆け抜けた。
あまりの強さに吹き飛ばされない様に倒れた態勢のまま地面にしがみついたが、彼女に目を向けるとこの強風の中でも凛々しく立ち続けていた。
風の勢いが弱くなっていく中、少年は影との繋がり切れ動ける様になりその場から弱々しく立ち上がった。
彼女は僕に背を向けたまま静かにだが力強く尋ねてきた。
「……君は、自分にあるその力をどうしたい」
少年はすぐに彼女の言葉にどうしたいか答えられず一瞬の沈黙が訪れる。
黒い影が見える様になっても、関わりたくないからとなにもしてこなかった。
でも今日、影のことを知った。知ってしまった…
「–––––––……僕は…どうしたかまだわからない。でも自分に力があって、何かできるかもしれないのに…しなかったら、そのせいで何か悪い事が起こったら、僕は自分のせいだと思う」
少年の言葉を聞いた彼女は振り返り、真っ直ぐ彼の目を見つめた。
「なら…私と共に来い!そしてその力について学び、理解しなさい!」
そういうと彼女は一歩踏み出し少年に向かって手を差し伸べる。
「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はエマ。エマ・ウォーカー」
少年も一歩踏み出すと差し伸べられた彼女の手を握りしめる。
「僕は旭日勇護。よろしく!」
二人は互いに見つめ合いながら交わされた手を強く握り合った。
「今のは、なに!?」
「まぁ当然そうなるわよね」
彼女はこの鼓膜が破れるのでは思うほどの叫び声に一切動じる事なく、その声がする方角をジッと見つめながら言葉を続けた。
「シンは人間の魂を喰らうと言ったね。それは今でも行われている。時々日本でも海外でもニュースになったりしないか?不可解な失踪事件だったり飛行機だったりが突如として痕跡も無く消えてしまうような事件…」
「………」
「あの類いのほとんどがシンにマーキングされた事によって別の世界に連れて行かれてしまっているんだ。誰にも邪魔をされない環境で人間の魂を喰らうためにね。でも君の場合その場で魂を拘束して喰らおうとした。それは君が能力保持者でその魂が特別だから。そこに邪魔が入れば当然怒るよねって事」
「じゃ、じゃあ…」
「今叫んでるシンの標的は君であり、それを邪魔した私でもある」
彼女はそう言うと一歩前に踏み出した。
「君はこの事件に巻き込まれた力無き人間であり、それを守護するのが私たちの役目だから安心しなさい」
彼女は少年に力強く宣言をすると右腕を横に突き出した。
「《アニマ解放!!》」
その言葉を合図に突き出した右手に突如流動する何かが形を形成していき、次第に片手用の両刃直剣が彼女の右手に収まった。
「今のは特殊能力?」
目の前で起きた突然の出来事に興奮しながらそう聞くと、彼女は一瞬クスっと笑った。
「違うわ。これはただのナノテク」
彼女はそう言うと両刃直剣を持っていない左手を少年の方へ向けた。
「さぁ、どこかへ隠れていなさい。来るわよ…」
その言葉を皮切りに上空からデカイ何かが飛来してきているのがわかった。
少年は慌てて走り、建物の物陰から彼女の方を見るとそこには既に体長2メートルは軽く超えていそうな怪物が立っていた。
「……なにあれ…あの黒い影の面影全然ないじゃんか!!」
その叫びは直後に始まった戦闘の衝撃に掻き消されてしまった。
*
「あぁ…やっと、おでましね」
上空から飛来したシンが女性の目の前に着地すると激しい衝撃が起こり精神領域内の建物の窓ガラスが弾き割れた。
「現実世界に影響がないとは言え、気分の良いものではないわね」
そういうと彼女は両刃直剣を後ろに構え、地面を勢い良く蹴ると地面には淡い光が立ち昇った。
シンまでの距離はまだ若干遠いが彼女は両刃直剣を下から地面を抉りながら上に切り上げ鈍色の剣尖がシンの身体を斬りつける。
シンはその先制攻撃に怯み後ろに大きく下がろうとするが彼女の追撃は止まらなかった。
彼女は両刃直剣を軽々と正確に相手の身体を斬りつけている。
「これじゃあ全然能力者っぽくないわね」
ポツリとその言葉を残すと彼女の追撃が止んだタイミングで大きく後ろに飛びのいたシンに向かって両刃直剣を振りかぶり、投げつける。
彼女は親指を立て、人差し指と中指を伸ばし銃の形を作るとそれをシンに向けた。
「旋風の銃弾!!」
そう唱えると彼女の髪を靡かせながら指先に風が渦を巻きながら集まりだす。
「解放!!」
その言葉を合図に指先に集められた旋風が一気に解放され凄まじい速度でシンを目掛けて発射された。
シンは飛んできた剣槍をギリギリで躱すが直後に迫り来た旋風を躱す事ができず直撃した。
自分の目の前で行われる戦闘は一方的なものだった。
「……あれが能力…すごいや」
もっと近くで見たい、もっと近くであの世界を感じたい…
その感情が知らないうちに自分自身の行動に出ているなんて思わなかった。
あの一方的な戦いを見て、もう安全なのだと思った僕は徐々に建物の影から出ると金髪の彼女がシンに近づいて行っていた。
彼女はシンに近づきながら右手を構えるとシンに避けられてしまい地面に深く突き刺さった両刃直剣が、ガタガタと震えだし地面から抜けた。
そのまま勢い良く彼女が構えた右手に向かって飛んでいき綺麗に納まると右手に両刃直剣を携えシンに向かって歩みを進める。
旋風によって身体を若干抉られたシンは近づいてくる彼女を見て恐怖を感じながらどうにかこの状況を打開する方法を探した。
そしてシンは一点を見つめた。
「そろそろ終わりにしよう」
彼女がそういうとそれに応えるようにシンも凶悪な咆哮を上げた
「キギャアアアアアアァァァ!!!!!」
シンは咆哮を上げると彼女目掛けて瓦礫をもろともしない突進を繰り出してきたが、彼女はいとも容易くそれを避けた。
だがシンの突進は勢いを止める事なく後方へ進んでいく。
彼女はシンの先にあるものを見た。
「早く逃げなさい!!!!!!」
*
身体が動かない……
瀕死のシンと目が合ってしまった事により切れていたはずの何かが再び結ばれてしまったらしい。
あぁ…せっかく助けてもらったのに、自分のせいでまたこんな事になるのか。
見えるだけで力がないから、普段なら見て見ぬふりをして今まで関わらない様にしてたのにな。
「あーぁ…やっぱ僕らしくないことはするもんじゃないよね」
思わず口に出た言葉を最後にゆっくりと瞳を閉じようとした。
「そんなことはない。君は少なくとも一人の命を救ったんだ…」
目を開けると、そこには淡い光が立ち昇る右手を前に突き出し、シンの攻撃を片手で受け止め僕を守ってくれている彼女が凛と立っていた。
「…自分のした行動に誇りを持て!!」
「……っ」
彼女は空いている左手に力を込めると、右手の淡い光とは違い、力強い光が左手に集約されていくのがわかった。
「暴嵐裂破!!!」
彼女が力強く言葉にした直後、五つもの旋風が拳の周囲に形成されるとそれを身体に喰らいつくシン目掛けて放った。
拳がシンと接触した瞬間五つの旋風は巨大な竜巻となりシンを上空へ巻き上げながら一つの嵐となり爆ぜ、衝撃は凄まじい強風となって駆け抜けた。
あまりの強さに吹き飛ばされない様に倒れた態勢のまま地面にしがみついたが、彼女に目を向けるとこの強風の中でも凛々しく立ち続けていた。
風の勢いが弱くなっていく中、少年は影との繋がり切れ動ける様になりその場から弱々しく立ち上がった。
彼女は僕に背を向けたまま静かにだが力強く尋ねてきた。
「……君は、自分にあるその力をどうしたい」
少年はすぐに彼女の言葉にどうしたいか答えられず一瞬の沈黙が訪れる。
黒い影が見える様になっても、関わりたくないからとなにもしてこなかった。
でも今日、影のことを知った。知ってしまった…
「–––––––……僕は…どうしたかまだわからない。でも自分に力があって、何かできるかもしれないのに…しなかったら、そのせいで何か悪い事が起こったら、僕は自分のせいだと思う」
少年の言葉を聞いた彼女は振り返り、真っ直ぐ彼の目を見つめた。
「なら…私と共に来い!そしてその力について学び、理解しなさい!」
そういうと彼女は一歩踏み出し少年に向かって手を差し伸べる。
「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はエマ。エマ・ウォーカー」
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