負けヒロインがダンジョンに落ちてたので連れ帰ってみることにした

睡眠が足りない人

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逃亡姫は負けヒロイン

十三話

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 ルヴァン宅 朝 ルヴァン視点

 「あの、料理に挑戦してみたいのですが宜しいですか?」

 姫様が家に来て三日目、朝食を食べ終えたタイミングで部屋から料理本を持っておどおどとしても良いかと尋ねてきた。
  ただ匿ってもらうだけの迷惑な存在になりたくなくて、家事をしようとしたが洗濯は失敗。であらばお次は、料理をして役に立ちたいという感じだろう。

 「別に構わないが、一応何を作るか聞いても良いか?」
 
  彼女のその気持ちは嬉しいので、止めると言う選択肢はないが、あまり難しいものを作るとなると別のメニューにした方がいいだろう。
 
 「オムレツと野菜のスープを作ろうと思ってます」

 オムレツの書かれたページを見せ、「どうでしょうか」と不安そうに首を傾げる。

 「…難しそうなものは多分ないよな?あぁ、いいぞ。ただし、初めてだろうから隣で危ないところがないか見させてもらうけど」

「ありがとうございます。一生懸命頑張りますね」

 パアッと顔を輝かせ、頑張るぞいと気合を入れる姫様。その姿に俺は何とも言えない不安を覚えた。


 冒険者ギルド 昼 ルヴァン視点

 「あのさ、ユナさん。料理で一番簡単に作れるものって何?」

 クエストをこなしギルドに依頼された素材を納品する際、不安に駆られた俺は料理上手なユナさんに何が簡単か質問した。

「どうしたんですか急に!?もしかして私の料理が口に合いませんでしたか?」

「いや、そういうわけじゃない。めっちゃ美味しい、毎日食べたいと思うくらいに」

「……毎日食べたい。これはつまり結婚の申し出。どうしましょう、私まだもうちょっと蓄えが欲しいので、待ってもらう?いや、籍を入れるだけなら…」

「おーい、ユナさん。どっか行かないでくれ」

 急にどこか別の世界へ飛び立ってしまったユナさんの前で手を振る。
 ユナさんが、こんなになるの珍しいな。

「ハッ!すいません。簡単な料理でしたっけ。やっぱりスープじゃないですかね。具を切って入れて水で茹でて、味を調味料で整えるだけなので簡単ですよ」

 すぐ戻ってきてくれたユナさんは、顔をほんのり赤らめさせスープが簡単だと答えてくれた。
 それは、姫様が作りたいと言っていた料理二種の内の一つで、俺はホッと胸を撫で下ろす。
 
 「そっか、答えてくれてありがとなユナさん。これで安心して見られそうだ。じゃあ、また後で」
 
「はい、また後で。…って、何で聞いたのかまだ聞いてません。待ってくださいルヴァンさん」

  後ろでユナさんが何か言っていたが、ギルド内の喧騒に掻き消され出口付近にいた俺には聞こえなかった。




 ルヴァン宅 昼 アリエス視点

 「お野菜を切って、お肉と一緒に鍋入れて、水を入れ火をつける。ある程度したらお塩をひとつまみと、ララの葉を一枚入れて、じっくり煮込む。よし、大丈夫完璧です。徹夜して何度も読み返したのですから、きっと」

 私はルヴァンさんが帰ってくる頃だと思い、料理本を開き手順をおさらいし直していました。
 「本を見ながら作れば良い」とルヴァンさんに言われており、その通りにすれば良いと頭で分かっています。
 ですが、昨日のように迷惑をかけてしまうという不安から、ついつい何度も本に目を通してしまうのです。
 二回目、三回目、四回目と読み返したところで、ルヴァンさんが帰ってきたようで家の鍵が空いた音が聞こえてきました。

 「お、おかえりなさい。ルヴァンさん」

 私は料理本を持って駆け足で部屋を出ると、ルヴァンさんお出迎えします。

「ただいま。言われた通りの食材と調味料を買ってきたぞ」

 そう言って、ルヴァンさんは両手で持っている大きな紙袋を軽く持ち上げてくれました。

 「ありがとうございます。あの、後は私が運びますよ。それ結構重いですよね?」

「いや、別にこれくらい大丈夫だ。俺が運ぶ。それより姫様は調理器具の準備を「もう、してます!」お、おう。じゃあ、調理台に食材を置いていくな」

 食い気味に返事をする私に、ルヴァンさんは少し戸惑いながらも買ってきた食材を調理台に並べていきます。
 私は、その一つ一つを確認し、間違いがないか、本で見た知識を使って鮮度を確認。
 何一つ問題がないことが分かったので、私は大きく深呼吸をしこれからする調理の為に気持ちを落ち着けます。

 「いきます!」

「おう、頑張れ」

 私は料理本を調理台から離れた位置に置くと、そう宣言しお野菜に手を伸ばしました。
 先ずは、水洗い。お野菜には土がついているのでそれを水魔法を使って丁寧に洗い流します。
 そして、洗ったお野菜をまな板に乗せ包丁で切ります。
  勿論この時、包丁を持ってない押さえている手は猫さんの手。ニャンニャンです。そう、私の左手は今猫さんなのです。

 ストン。……………ストン。………………………ストン。ぎこちないですが、しかし確実に野菜を切っていきます。

 「おぉ、ちゃんと出来てる」

 昨日の不器用な私を知っているルヴァンさんは、食材をきちんと切れていることに驚きの声を上げました。
 私も正直驚いています。
 不器用な私が出来るなんて。
 でも、これはたぶん剣を振っていた経験があるからなのでしょう。同じ刃物で危険性やどうやったら切れるかを知っているから出来ているのです。
 全ての野菜を切り終えると、私はそれらをお肉と水と一緒に鍋へ入れ魔道コンロの上に置き熱します。
 これでしばらくこちらは目を離して良いのでその間に、オムレツの準備。
 卵を割り、ボールの中に入れていきます。こちらは、案の定と言いますか殻が入ってしまいましたが、何とかスプーンを使って全部取り除けました。
 それをスプーンで塩と牛乳を入れ混ざます。しっかりと混ぜることが出来たので、一旦放置。私が鍋から長時間目を離したら危ないので、ここで作業を中断して鍋に集中します。
 そして、レシピ通り煮だってきたら塩とララの葉を入れて混ぜ味見してみました。

「…美味しい」

 美味しく食べられるものが出来てる。
 レシピ通りにしているとはいえとても不安だったので私は、ホッと胸を撫で下ろします。

「本当か?一応確認させてもらっても良いか?」

「はい、良いですよ」

 私はスープを少し掬い底の深い皿に入れルヴァンさんに渡します。

 「……本当だ、美味い。上手に出来てるぞ!姫様」

「ありがとうございます!」

 ルヴァンさんに褒められ私は嬉しくなってお礼を言います。
 誰かに料理を作って喜んでもらえて嬉しい。ようやく彼にお礼が出来る。

 「おい、姫様大丈夫か!?」

 そう思ったら、張り詰めていた緊張の糸が切れ私は意識を手放しました。



 


 
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