上 下
6 / 11

6話

しおりを挟む


「心眼、隠密、発動」

洞窟に入る際に、俺は姿を敵から認識されにくくなる隠密、そして暗闇でも周辺に何があるか見える心眼を使う。
これにより、光源が無くても普段と変わらずに行動ができるようになった。

「『影纏カゲマトい』」

さらに闇属性の魔法を使い、自身の身体を黒くし視認されにくくした。

「今できることはやったな。よし、行くか」

俺はそう言って自身に気合を入れて洞窟の中を進んでいった。

歩いてすぐに、物音が聞こえたので俺は音を立てないよう慎重に動き音源が何なのか確認する。
そこにはゴブリンが二匹おり何かの肉を食べていた。

食事に夢中なためこちらを振り向く様子はない。

「『二連デュアル影槍シャドウランス』」

俺は小さい声で魔法を唱える。それにより俺の体を包んでいる黒いものが変化して鋭い1mくらいの長さの槍に形を変え、ゴブリン達の脳天目掛け飛ばす。
さっき倒したゴブリン達同様頭は綺麗に貫通しており二匹とも絶命している。

それを確認した俺は、再び魔法でゴブリン達を土に埋めて隠蔽した。

これを何回もする可能性があると思うと、面倒になってきたがノーアラートで行くと決めたのは俺なので、文句は口に出さず先に進んだ。

俺の面倒くさいという気持ちが届いたのか、かなり広い場所に出てそこにはこれ以上道は無かった。ゴブリンの数は20.ボブゴブリンが10.ゴブリンジェネラルが2体いた。

チマチマやるのは面倒くさいとは思ったけど、流石にこの量を一度に相手するのもだるい。
上級魔法なら、残りの精神力的に1発は打てるこれで一気に全滅させるかと考えていると、俺の目にとある物が目に入った。一人の女性がゴブリンの足元に倒れいるのを。ゴブリンは人間の女を捕らえ犯し繁殖することの出来る魔物だ。ということは既に苗床にされて精神が壊れた可能性もあるだだろう、だがもし無事なら何とかしたいと思う。そしてあわよくばぐふふっ………。
幸い、鑑定したゴブリンジェネラルはレベルが2上がった俺よりもステータスは低かったので、身体強化で筋力値と速力、耐久力を上げれば今までの戦闘経験的には圧倒できるはずだ。
だが、ある程度どう戦うは決めておく。そうしないともし女性が生きていた場合盾にされて面倒なことになるからだ。

「上級魔法を使わないなら、先にジェネラルをやるか。あいつは俺の中級魔法じゃ一撃で倒せない。ボブゴブリンが剣を持ってるからそれを奪って一直線にジェネラル狙う感じで行くか。他は魔法で人質を取られても何とかできるし」

大体の作戦を決めた俺は、ふぅと息を吐いてこれから始まる戦闘に集中した。

俺は足元に転がっていた石を俺が狙うボブゴブリンの反対の位置に投げる。

ガンッ!

「「「ギィャア?」」」

俺の視線誘導にまんまとゴブリン達は引っかかりそちらを向いた。
その隙を逃さず俺は、身体強化を使ってボブゴブリン目掛け全力疾走。
身体強化を使ったことで、50mあった距離はものの1秒で無くなる。俺はボブゴブリンの首を両腕を掴んで締め声を上げられる前に首の骨を折り殺す。
それによりボブゴブリンは脱力し右手に持っていた剣を手放した。俺はそれを直ぐ掴み予定通りゴブリンジェネラルの元に向かう。

「『付与エンチャント:鋭利化、斬撃強化』」

付与魔法を使って、一撃で確実に骨ごと両断できるほどの性能にまで剣を強化。ジェネラルの胴体ごとぶった斬り一体を屠る。

「「ギィャア!?ギィャギャ」」

ジェネラルが死んだことで、ようやく自分達が襲われているのに気付いたゴブリン達は周囲を混乱しながらも索敵し始めた。
だが、まだ俺の位置はゴブリン達にはバレていない。俺は最後の脅威である残りのジェネラル目掛けて強化した剣を全力投擲。

「ギィャア!」

俺の投擲した剣はゴブリンの右腹に突き刺さり、ジェネラルは悲鳴を上げた。

チッ!剣を投げるのは始めての試みだったから狙った場所に行かなかったか。俺は止めを刺すべくジェネラルに突撃しようとしたが、直進しようとしたタイミングで目の前にゴブリンが現れ思いっきりぶつかってしまい体勢を崩す。

「クソ、邪魔するなよ雑魚が!」

俺はそのゴブリンに毒突きながら、片手を地面に付いて体勢を無理矢理整え蹴りを喰らわし壁まで吹き飛ばす。

「ギィャア!」

だが、あのゴブリンに時間を割かれたせいでジェネラルが俺を発見し仲間に位置を知らされゴブリン達に囲まれてしまった。これじゃあジェネラルに止めを刺しに行けない。
このタイミングで人質を取られたら不味いと思い、俺は先程髪が見えた場所を見るとそこには一人の美少女がスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。

「は?」

俺は彼女を見た瞬間、間抜けな声が出てしまった。
戦場に似つかわしくない、熟睡をしていることだけで無くゴブリンがこちらに向かってくる際、少女が進行方向に居たのだが、ゴブリンの足は少女に当たることなくすり抜けたことの二つに対する驚きの声だ。

だが、理屈は分からないが人質を取られる可能性がないのならやりようが変わってくる。

「『迅雷ジンライ_』」

俺は雷の身体強化魔法を発動させ、筋肉を雷で刺激し人間に定められているリミッターを外す。ゴブリンの隙間を高速で通り抜けジェネラルの元に向かう。ジェネラルが剣を抜いて構え、迎撃態勢を取っているが問題ない。
ジェネラル真っ正面から突撃してくる俺に向けて大振りに振るった横薙ぎを身体を低くして避ける。
そして俺はガラ空きになったジェネラルの胸元に飛び込み剣が刺さって出来た傷に手を無理矢理突っ込み魔法を発動させる。

「『暴風ストーム』」

俺の手を起点に発動した中級風魔法、ジェネラルの体内に暴風が発生し爆散させた。一撃で倒せないと先程言ったがこのように体内に直接ぶち込めば中級魔法でも倒せることには倒せる。でも、魔法アタッカーがここまで接近することはないのでこの世界で出来るのは俺含め数十名しか居ないだろう。

(これで最大脅威は取り除いた。消費の激しい雷の身体強化魔法を使ったことで精神力が残り三割か。残りは近接で終わらそう)

並列思考のおかげで、即座に次の行動を決めた俺はジェネラルが爆散した際にその場に落ちた剣を回収して、ゴブリンの集団に突っ込んだ。

付与魔法の効果は持続しているため、ゴブリン達をバター切るかのように上半身と下半身をおさらばさせていく。

だが、ゴブリン達も黙っているはずもなくボブゴブリン達が大きな棍棒で殴りかかって来た。俺は冷静に剣の腹で受け流し飛び蹴りを喰らわし、他のボブゴブリンの棍棒を回避。

「『閃光フラッシュ』」

俺は目を瞑って光魔法を発動俺を起点にスタングレネードと同等くらいの閃光が発生させる。

「「ギィャア!?ギィャ」」

事前に何が起こるか分からないゴブリン達は閃光に目をやられ、顔を手で覆い苦しみ出した。
その隙に俺は残りのゴブリン達を葬り、戦闘は終わった。

どかっ、戦闘による精神力の消費が激しかったことと、今までアドレナリンが出ていて気にならなかったが雷魔法で無理矢理リミッターを外したことで筋肉が悲鳴を上げており、俺は戦闘終了を確認したと同時にその場に座り込んだ。

「ッツウ!足が痛え。雷魔法で身体強化するのはもう少しレベルが上がってからだな」

俺は痙攣する足を摩りながら、自身が目指す場所は遠いと思い知る。

「さて……何で精霊がこんな場所に居るんだ?」

背後から自身に近づいてくる少女の方に顔を向け俺は尋ねた。

(何故ここには絶対に居ないはずのが居るのかと)


しおりを挟む

処理中です...