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第5話 オーディションの結果

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オーディション合格発表の日、俺は昼休みに音楽室へ向かう。

そわそわして待っていると、先生が3枚楽譜を持って、俺たちの目の前に立つ。

「じゃあ、楽譜を渡す人に、卒業式でピアノを弾いてもらうわ」

誰も何も話さない。

頼む。俺の名前を呼んでくれ……!

「1人目。……松木、お願いするわね。校歌、弾いてね」

「は、はい。ありがとうございます。精一杯頑張ります」

おっと、残念。

「うん、じゃあ2人目。……沖田、believeっていう曲をお願いね」

「わかりました。やらせてもらいます」

お、沖田さん!よかったね。まあ、当然か。

最後のひと枠。

俺が呼ばれなかったら……それでもいい。

ちょっとでも沖田さんと話せたから。

でも、お願いします!

神さま仏様、どうか幸運を……!

「3人目、一条。ぜひ、旅立ちの日にを弾いてくれへんか」

「……え?ぼ、僕ですか?」

「何ゆうてんの、あんたがダントツで上手いのはみんな納得やで。ほら、楽譜、受け取ってや」


周りの人は、なんとも言えない表情を浮かべている。


「あ、は、はい!ありがとうございます」

「一条くん、一緒に頑張ろうね」

楽譜を握り締めていると、沖田さんが話かけてくれた。

「お、沖田さん……それにま、松木?さんもよろしくお願いします」

「一条くん、ほんま、お硬いんやから」

「うち、松木ですー。名前くらいちゃんと覚えてくれる?」

「あ、はは、ごめん。松木さん、だよね。もう覚えたから」

先生が、パンっと手を叩く。

「で、選ばれへんかった3人もピアノ、これからも頑張ってや。松木に沖田に一条はちょっと残って。じゃあ解散……と」

そうして、俺たち以外は音楽室から退室する。


「昼休みも長ないから手短にいくで」

「はい」

「3人は毎日昼休みに音楽室で練習すること」

「はい」

「まず松木、このまま弾き込むこと。以上、よろしい」

「あ、はい。失礼します」

「そやな、沖田に一条も何もいうことないな。冗談抜きに私より校歌、弾くん上手いで」

「いや、そんなことないですよ。僕なんかまだまだ下手で」

「庇わんでいいで。先生、もっと悲しなるで……2人とも課題曲、頼むで!」

「はい!」

よっしゃあああ!

俺は沖田さんと念願叶って、急接近だぜ!

毎日昼休みに近くにいられる!……でも、一緒にただ単に練習するだけなんだよな。

現に、沖田さんとは教室に戻っていても一言も話さない。

まあ、沖田さんの取り巻きがいっぱいいるからな。

俺はちらっと彼女の顔を見るが、すぐにそっぽを向かれた気がした。

ちょっとショック……

「ほなはよ教室帰りや」

「失礼します」





教室の扉を開け、まっすぐ席へと向かい、次の授業の準備を始める。

「お、一条や、どうやった、オーディション?」

「通ったさ」

「おっしゃああ!やったな。これでお目当ての沖……」

「中村、お前を社会的に抹殺しようか?」

俺は、中村を威圧する。

「せえへんから、言わへんて」

「許す。発言は慎めよ」

「でも、よかったな。憧れるわ、こういうの!」

「まあな。音楽室で毎日昼休み、一緒に練習だってよ」

「めっちゃいいシチュエーションやんか。で、2人なん?」

「いや、隣の組の松木さんって子がもう1人」

「めっちゃ言いにくいけど、お邪魔虫やな!その松木さん」

「ば、バカ!おっきな声で言うなって」

「すまんな。これが俺の取り柄や!」

国語の先生が入ってきて授業が始まるチャイムも鳴り、前を向いて授業を受けた。




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