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第11話「最後のあがきと、公爵様の愛」
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エリアス王子が王位継承権を剥奪され、北の離宮へと送られて数週間が経った。
王都も落ち着きを取り戻し、俺の日常にも穏やかな時間が流れていた。
だが、破滅した者たちの最後のあがきは、俺が思っているよりもずっと執念深いものだった。
その夜、俺は温室で夜咲きの花の開花を待っていた。アレクシス様は急な来客の対応で、少し離れた母屋に-いる。
ふと、背後で物音がした。
振り返ると、そこには黒装束をまとった数人の男たちが立っていた。その手には、鈍い光を放つ短剣が握ら-れている。
「……誰ですか」
「エリアス王子殿下の命により、ミナト様には我々と一緒に来ていただく」
男の一人が、低い声で言った。彼らは、すべてを失ってもなおエリアス王子に忠誠を誓う、王子派の残党-だったのだ。
俺を攫って、どうするつもりだ。俺の能力を利用して、再起でも図るつもりなのだろうか。
絶体絶絶命。
俺は後ずさるが、すぐに背中が温室の壁にぶつかった。逃げ場はない。
男たちが、じりじりと距離を詰めてくる。
(ここまで、なのか……)
恐怖で体が震え、声も出ない。その時だった。
「――その汚い手を、彼から離せ!!」
温室のガラスの扉が派手に砕け散り、怒りに満ちた声と共に、アレクシス様が飛び込んできた。その手には、-抜き身の剣が握られている。その表情は、まさに「氷の公爵」の名にふさわしい、絶対零度の怒りに染ま-っていた。
「アレクシス様!」
「ミナト、下がっていろ!」
彼は俺を背後にかばうように立つと、侵入者たちと対峙した。
「公爵閣下……!?」
「私の愛しい人に、指一本でも触れてみろ。その命、ここで潰えると思え」
地を這うような低い声に、男たちは怯んだように後ずさる。だが、彼らも後には引けないのだろう。一人が-やけくそになったように、俺に向かって短剣を振りかざしながら突進してきた。
「ミナト!」
アレクシス様が叫ぶ。彼は俺の前に立ちはだかり、その身を盾にして俺を守った。
ザシュッ、という鈍い音。
アレクシス様の腕から、鮮血が飛び散った。
「アレクシス様っ!」
俺の悲鳴が、温室に響き渡る。
自分のせいで、この人が傷ついた。その事実が、俺の頭を真っ白にさせた。
――許さない。
俺の心の底から、今まで感じたことのないほどの、冷たい怒りが湧き上がってきた。
「君に指一本触れさせはしない!」
腕の痛みなど意にも介さず、アレクシス様は再び剣を構える。彼の背中が、こんなにも大きく、頼もしく見-えたことはなかった。
だが、もう彼一人に戦わせはしない。
俺も、ただ守られているだけのか弱い存在じゃないんだ!
王都も落ち着きを取り戻し、俺の日常にも穏やかな時間が流れていた。
だが、破滅した者たちの最後のあがきは、俺が思っているよりもずっと執念深いものだった。
その夜、俺は温室で夜咲きの花の開花を待っていた。アレクシス様は急な来客の対応で、少し離れた母屋に-いる。
ふと、背後で物音がした。
振り返ると、そこには黒装束をまとった数人の男たちが立っていた。その手には、鈍い光を放つ短剣が握ら-れている。
「……誰ですか」
「エリアス王子殿下の命により、ミナト様には我々と一緒に来ていただく」
男の一人が、低い声で言った。彼らは、すべてを失ってもなおエリアス王子に忠誠を誓う、王子派の残党-だったのだ。
俺を攫って、どうするつもりだ。俺の能力を利用して、再起でも図るつもりなのだろうか。
絶体絶絶命。
俺は後ずさるが、すぐに背中が温室の壁にぶつかった。逃げ場はない。
男たちが、じりじりと距離を詰めてくる。
(ここまで、なのか……)
恐怖で体が震え、声も出ない。その時だった。
「――その汚い手を、彼から離せ!!」
温室のガラスの扉が派手に砕け散り、怒りに満ちた声と共に、アレクシス様が飛び込んできた。その手には、-抜き身の剣が握られている。その表情は、まさに「氷の公爵」の名にふさわしい、絶対零度の怒りに染ま-っていた。
「アレクシス様!」
「ミナト、下がっていろ!」
彼は俺を背後にかばうように立つと、侵入者たちと対峙した。
「公爵閣下……!?」
「私の愛しい人に、指一本でも触れてみろ。その命、ここで潰えると思え」
地を這うような低い声に、男たちは怯んだように後ずさる。だが、彼らも後には引けないのだろう。一人が-やけくそになったように、俺に向かって短剣を振りかざしながら突進してきた。
「ミナト!」
アレクシス様が叫ぶ。彼は俺の前に立ちはだかり、その身を盾にして俺を守った。
ザシュッ、という鈍い音。
アレクシス様の腕から、鮮血が飛び散った。
「アレクシス様っ!」
俺の悲鳴が、温室に響き渡る。
自分のせいで、この人が傷ついた。その事実が、俺の頭を真っ白にさせた。
――許さない。
俺の心の底から、今まで感じたことのないほどの、冷たい怒りが湧き上がってきた。
「君に指一本触れさせはしない!」
腕の痛みなど意にも介さず、アレクシス様は再び剣を構える。彼の背中が、こんなにも大きく、頼もしく見-えたことはなかった。
だが、もう彼一人に戦わせはしない。
俺も、ただ守られているだけのか弱い存在じゃないんだ!
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