植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています

水凪しおん

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第12話「政略から純愛へ、永遠の誓い」

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「よくも……よくも、アレクシス様を……!」
 俺は地面に両手を突き、ありったけの意識を集中させた。
 俺の怒りに呼応するように、温室中の植物が一斉にざわめき始める。
【植物育成】スキル、全開。
「――僕の大切な人を傷つける奴は、絶対に許さない!」
 俺が叫ぶと同時に、床を突き破って巨大な蔦や木の根が姿を現した。それはまるで、意思を持った大蛇の-ように、侵入者たちへと襲い掛かる。
「な、なんだこれは!?」
「うわあああっ!」
 男たちは、あっという間に蔦に絡めとられ、身動きが取れなくなった。短剣も、蔦によって叩き落される。-温室中に飾られていた薔薇の蔓さえもが伸び、鋭い棘で男たちを締め上げた。
 それは、まるで悪夢のような光景だっただろう。
 俺は、自分の能力をここまで攻撃的に使ったのは初めてだった。だが、後悔はなかった。
 大切な人を守るためなら、俺はなんだってできる。

 侵入者たちが完全に無力化されたのを見届けると、俺はすぐにアレクシス様の元へ駆け寄った。
「アレクシス様、お怪我は!?」
 彼の左腕からは、まだ血が流れ続けている。俺は自分の服の裾を破り、きつく縛って止血した。
「……大したことはない。それより、君こそ無事か?」
 こんな時でさえ、彼は俺のことばかり心配してくれる。その優しさに、涙が溢れてきた。
「俺は、大丈夫です……!ごめんなさい、俺のせいで……」
「謝るな。君が無事でよかった。本当に……」
 そう言って、アレクシス様は血の滲んでいない方の腕で、俺を優しく抱きしめた。
 彼の温かい胸の中で、俺は安堵から体の力が抜けていくのを感じた。

 その後、侵入者たちは駆けつけた騎士たちによって捕縛され、エリアス王子の最後の悪あがきは、完全に幕-を閉じた。
 事件がすべて解決した後、月明かりが差し込む静かな部屋で、俺はアレクシス様の腕の傷の手当てをしてい-た。薬草をすり潰した軟膏を、丁寧に傷口に塗り込んでいく。
「ミナト」
 静寂を破り、アレクシス様が俺の名前を呼んだ。
 顔を上げると、彼は傷だらけの体で、それでも真摯な瞳で俺を見つめていた。そして、ゆっくりと俺の前に-片膝をついた。
「これは……?」
「ミナト。君と出会って、私の世界は色づいた。君の笑顔が、私の生きる喜びになった。君を守ることが、-私の使命になった」
 彼は俺の手を取り、その甲にそっと口づけをする。
「政略から始まった関係かもしれない。だが、私のこの気持ちは、誰にも負けない純愛だ。ミナト、君を愛-している。私の生涯をかけて君を守り、幸せにすると誓う。どうか、私と結婚してくれないか?」
 それは、今まで聞いたどんな言葉よりも甘く、誠実なプロポーズだった。
 涙が、ぽろぽろと頬を伝って落ちる。
「はい……!喜んで……!」
 俺が頷くと、アレクシス様は安堵したように微笑み、立ち上がって俺を強く抱きしめた。
 そして、ゆっくりと顔を近づけ、俺の唇に、深く、優しいキスを落とす。
 それは、二人の永遠を誓う、固い誓いのキスだった。
 こうして、社畜だった俺の異世界での人生は、世界で一番愛する人の隣で、最高のハッピーエンドを迎えた-のだった。
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