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第6話「痩せた土地を黄金の畑へ」
「輪作だと? 緑肥だと?」
カイゼルに呼ばれて集まった大臣たちは、俺が提案した新しい農業知識に困惑の表情を浮かべた。それもそのはずだ。この国では、同じ土地で同じ作物をただひたすら作り続けることしか知られていなかったのだから。
「毎年同じ作物を作ると、土地の特定の栄養素だけが失われていきます。それが『土地が痩せる』原因の一つです」
俺は彼らに分かりやすいように、土の栄養を食事に例えて説明した。
「違う種類の作物を順番に育てることで、土地の栄養バランスを保つ。それが『輪作』です。そして『緑肥』とは、特定の植物を育て収穫せずにそのまま畑にすき込むことで、土地そのものの栄養にする、いわば畑にご飯を食べさせてあげるようなものです」
俺の説明に、農政を司る猪の獣人大臣が疑わしげに鼻を鳴らした。
「馬鹿な! 食える作物をわざわざ土に返すなど、聞いたこともない!」
反発の声が上がるのは想定内だった。しかし、俺の後ろには今や最大の理解者となった王がいる。
「黙れ」
カイゼルの静かな一言で、議場は水を打ったように静まり返った。
「ミコトの言う通りにやれ。これは王命だ。北方の土地全てを使い、この改革を断行する」
王の鶴の一声で、大規模な農業改革プロジェクトが始動した。俺は指導者として北方の村に派遣され、現地の獣人たちに直接新しい農法を教えることになった。
最初は、誰もが半信半疑だった。『人間の賢者様』という評判は聞いていても、先祖代々続けてきたやり方を変えることへの抵抗は大きかった。
「本当にこんなやり方で、麦が育つのかよ」
「収穫できるはずのマメを土に埋めるなんてもったいねえ」
しかし、俺は諦めなかった。毎日畑に出て土に触れ、彼らと同じ目線で語り続けた。なぜこの植物を植えるのか、なぜこの順番なのか。その理論を根気よく、一つ一つ丁寧に説明した。俺の真摯な態度は、少しずつ彼らの頑なな心を開いていった。
そして、季節が巡り収穫の秋がやってきた。
結果は、誰の目にも明らかだった。
黄金色の畑を見渡し、獣人たちが歓喜の雄叫びを上げた。
「なんだこれは!」
「麦の穂が……金色に輝いてる! こんなに実が詰まった穂は見たことがない!」
北方の痩せた土地だったはずの場所は、見渡す限りの黄金色の畑に変わっていた。収穫量はこれまでの三倍以上。しかも、一粒一粒が大きくずっしりと重い。
村は、見たこともないほどの豊かな収穫に歓喜の声で沸き返った。村人たちは俺を胴上げし、感謝の言葉を口々に叫んだ。
「賢者様、ありがとう!」
「あんたは俺たちの救い主だ!」
その知らせはすぐに王都にも届き、国中が沸き立った。長年の懸案だった食糧不足問題に、解決の光が見えたのだ。この功績はこれまでのどんな改革よりも大きく、俺という人間の価値を絶対的なものにした。
王都に凱旋した俺を待っていたのは、玉座に座るカイゼルだった。彼は報告を聞き終えると静かに玉座から降り、俺の前に立った。
「よくやった、ミコト」
その声には、抑えきれないほどの満足と、そして俺に対する深い信頼が込められていた。
「褒美をやる。何が望みだ?」
「褒美など、滅相もございません。私は、自分の知識が役立っただけで満足です」
俺が固辞すると、カイゼルはフッと笑みを漏らした。それは俺が初めて見る、彼の心からの笑みだった。
「そうか。ならば、俺から与えよう。お前には王城内の書庫を自由に出入りする権限を与える。好きなだけ、その知識欲を満たすがいい」
それは、本好きの俺にとって何よりの褒美だった。
国中がミコトへの称賛で沸き立つ中、俺は静かに、この国に自分の確かな足場ができたことを実感していた。
カイゼルに呼ばれて集まった大臣たちは、俺が提案した新しい農業知識に困惑の表情を浮かべた。それもそのはずだ。この国では、同じ土地で同じ作物をただひたすら作り続けることしか知られていなかったのだから。
「毎年同じ作物を作ると、土地の特定の栄養素だけが失われていきます。それが『土地が痩せる』原因の一つです」
俺は彼らに分かりやすいように、土の栄養を食事に例えて説明した。
「違う種類の作物を順番に育てることで、土地の栄養バランスを保つ。それが『輪作』です。そして『緑肥』とは、特定の植物を育て収穫せずにそのまま畑にすき込むことで、土地そのものの栄養にする、いわば畑にご飯を食べさせてあげるようなものです」
俺の説明に、農政を司る猪の獣人大臣が疑わしげに鼻を鳴らした。
「馬鹿な! 食える作物をわざわざ土に返すなど、聞いたこともない!」
反発の声が上がるのは想定内だった。しかし、俺の後ろには今や最大の理解者となった王がいる。
「黙れ」
カイゼルの静かな一言で、議場は水を打ったように静まり返った。
「ミコトの言う通りにやれ。これは王命だ。北方の土地全てを使い、この改革を断行する」
王の鶴の一声で、大規模な農業改革プロジェクトが始動した。俺は指導者として北方の村に派遣され、現地の獣人たちに直接新しい農法を教えることになった。
最初は、誰もが半信半疑だった。『人間の賢者様』という評判は聞いていても、先祖代々続けてきたやり方を変えることへの抵抗は大きかった。
「本当にこんなやり方で、麦が育つのかよ」
「収穫できるはずのマメを土に埋めるなんてもったいねえ」
しかし、俺は諦めなかった。毎日畑に出て土に触れ、彼らと同じ目線で語り続けた。なぜこの植物を植えるのか、なぜこの順番なのか。その理論を根気よく、一つ一つ丁寧に説明した。俺の真摯な態度は、少しずつ彼らの頑なな心を開いていった。
そして、季節が巡り収穫の秋がやってきた。
結果は、誰の目にも明らかだった。
黄金色の畑を見渡し、獣人たちが歓喜の雄叫びを上げた。
「なんだこれは!」
「麦の穂が……金色に輝いてる! こんなに実が詰まった穂は見たことがない!」
北方の痩せた土地だったはずの場所は、見渡す限りの黄金色の畑に変わっていた。収穫量はこれまでの三倍以上。しかも、一粒一粒が大きくずっしりと重い。
村は、見たこともないほどの豊かな収穫に歓喜の声で沸き返った。村人たちは俺を胴上げし、感謝の言葉を口々に叫んだ。
「賢者様、ありがとう!」
「あんたは俺たちの救い主だ!」
その知らせはすぐに王都にも届き、国中が沸き立った。長年の懸案だった食糧不足問題に、解決の光が見えたのだ。この功績はこれまでのどんな改革よりも大きく、俺という人間の価値を絶対的なものにした。
王都に凱旋した俺を待っていたのは、玉座に座るカイゼルだった。彼は報告を聞き終えると静かに玉座から降り、俺の前に立った。
「よくやった、ミコト」
その声には、抑えきれないほどの満足と、そして俺に対する深い信頼が込められていた。
「褒美をやる。何が望みだ?」
「褒美など、滅相もございません。私は、自分の知識が役立っただけで満足です」
俺が固辞すると、カイゼルはフッと笑みを漏らした。それは俺が初めて見る、彼の心からの笑みだった。
「そうか。ならば、俺から与えよう。お前には王城内の書庫を自由に出入りする権限を与える。好きなだけ、その知識欲を満たすがいい」
それは、本好きの俺にとって何よりの褒美だった。
国中がミコトへの称賛で沸き立つ中、俺は静かに、この国に自分の確かな足場ができたことを実感していた。
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