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第10話「獅子王の求婚」
古代技術によって生み出された新しい鋼――『王鋼(おうこう)』と名付けられた――の復活を祝い、王城では盛大な宴が催された。広間には貴族たちが集い、国の一大快挙に誰もが興奮と喜びに満ちていた。
その中心にいるのは、もちろん俺だった。貴族たちが次から次へとやってきては、称賛の言葉を述べていく。
「賢者様、この度はまことにお見事でした!」
「あなたは我が国の英雄ですぞ!」
もみくちゃにされながら、俺は曖昧な笑みを浮かべることしかできなかった。こういう華やかな場は、どうにも苦手だ。
そんな喧騒の中、楽団の演奏が止み、カイゼルが立ち上がった。広間が静まり返り、すべての視線が玉座の王に集まる。
「皆、静まれ。今宵は我が国の新たな歴史の始まりを祝う宴である。そして、その礎を築いた者をここに紹介する」
カイゼルの視線が、真っ直ぐに俺を射抜いた。
「ミコト、こちらへ」
呼ばれるままに俺は玉座のそばへと進み出た。カイゼルは俺の手を取ると、驚く俺をそのまま玉座の隣――本来であれば王妃が座るべき場所に、座らせたのだ。
貴族たちが息を呑むのが分かった。俺自身、何が何だか分からずただ呆然とカイゼルを見上げる。
カイゼルは、広間にいる全ての貴族を見渡し朗々と宣言した。その声は、王の威厳に満ちていた。
「賢者ミコトを、我が生涯の番(つがい)として迎える!」
俺は耳を疑った。時が、止まったようだった。
カイゼルが何を言ったのか、一瞬理解できなかった。番? 生涯の? それはつまり、結婚するということか? 俺と、陛下が?
数秒の沈黙の後、広間は爆発したような騒ぎに包まれた。
「なっ……!」
「王が、人間を番にだと!?」
「しかも男ではないか!」
驚愕、困惑、そして一部からの反発。様々な感情が渦巻く中、俺は頭が真っ白になっていた。
(求婚……? なぜ? どうして俺が?)
これは王の気まぐれか? いや、あるいは俺という『国の宝』を完全に自分のものとして繋ぎ止めておくための、政治的な策略かもしれない。そうだ、きっとそうだ。愛情なんて、あるはずがない。
俺はパニックになりながら、カイゼルの腕を掴んだ。
「へ、陛下! お待ちください! 何を仰って……っ」
「黙れ、ミコト」
カイゼルは低い声で俺を制すると、その黄金の瞳で俺をじっと見つめた。その瞳には策略や気まぐれの色はなく、ただ、燃えるような真摯な光が宿っていた。
「これは王命であり、俺個人の偽らざる想いだ」
「し、しかし、私は男ですし、異世界人で……!」
「それがどうした。俺が選んだのは、お前だ」
あまりに真っ直ぐな言葉と眼差しに、心臓が大きく跳ねた。冗談や策略だとは思えない。この人は、本気だ。本気で、俺を番にすると言っている。
どうしよう。どうすればいい。
必死に断る言葉を探す俺の耳に、カイゼルのわずかに熱を帯びた声が届いた。
「もう、誰にもお前を渡す気はない」
それは全貴族の前で放たれた、獅子王による紛れもない所有宣言だった。俺は、その言葉の重みにただ立ち尽くすことしかできなかった。
その中心にいるのは、もちろん俺だった。貴族たちが次から次へとやってきては、称賛の言葉を述べていく。
「賢者様、この度はまことにお見事でした!」
「あなたは我が国の英雄ですぞ!」
もみくちゃにされながら、俺は曖昧な笑みを浮かべることしかできなかった。こういう華やかな場は、どうにも苦手だ。
そんな喧騒の中、楽団の演奏が止み、カイゼルが立ち上がった。広間が静まり返り、すべての視線が玉座の王に集まる。
「皆、静まれ。今宵は我が国の新たな歴史の始まりを祝う宴である。そして、その礎を築いた者をここに紹介する」
カイゼルの視線が、真っ直ぐに俺を射抜いた。
「ミコト、こちらへ」
呼ばれるままに俺は玉座のそばへと進み出た。カイゼルは俺の手を取ると、驚く俺をそのまま玉座の隣――本来であれば王妃が座るべき場所に、座らせたのだ。
貴族たちが息を呑むのが分かった。俺自身、何が何だか分からずただ呆然とカイゼルを見上げる。
カイゼルは、広間にいる全ての貴族を見渡し朗々と宣言した。その声は、王の威厳に満ちていた。
「賢者ミコトを、我が生涯の番(つがい)として迎える!」
俺は耳を疑った。時が、止まったようだった。
カイゼルが何を言ったのか、一瞬理解できなかった。番? 生涯の? それはつまり、結婚するということか? 俺と、陛下が?
数秒の沈黙の後、広間は爆発したような騒ぎに包まれた。
「なっ……!」
「王が、人間を番にだと!?」
「しかも男ではないか!」
驚愕、困惑、そして一部からの反発。様々な感情が渦巻く中、俺は頭が真っ白になっていた。
(求婚……? なぜ? どうして俺が?)
これは王の気まぐれか? いや、あるいは俺という『国の宝』を完全に自分のものとして繋ぎ止めておくための、政治的な策略かもしれない。そうだ、きっとそうだ。愛情なんて、あるはずがない。
俺はパニックになりながら、カイゼルの腕を掴んだ。
「へ、陛下! お待ちください! 何を仰って……っ」
「黙れ、ミコト」
カイゼルは低い声で俺を制すると、その黄金の瞳で俺をじっと見つめた。その瞳には策略や気まぐれの色はなく、ただ、燃えるような真摯な光が宿っていた。
「これは王命であり、俺個人の偽らざる想いだ」
「し、しかし、私は男ですし、異世界人で……!」
「それがどうした。俺が選んだのは、お前だ」
あまりに真っ直ぐな言葉と眼差しに、心臓が大きく跳ねた。冗談や策略だとは思えない。この人は、本気だ。本気で、俺を番にすると言っている。
どうしよう。どうすればいい。
必死に断る言葉を探す俺の耳に、カイゼルのわずかに熱を帯びた声が届いた。
「もう、誰にもお前を渡す気はない」
それは全貴族の前で放たれた、獅子王による紛れもない所有宣言だった。俺は、その言葉の重みにただ立ち尽くすことしかできなかった。
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