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第14話「心の在り処」
アルバ王国の使者が帰ってから、俺の中の何かが確実に変わった。
カイゼルに守られたあの瞬間、この獣人国は俺にとって単なる『生き抜くための場所』ではなくなっていた。いつの間にか、そこは俺の『帰る場所』になっていたのだ。
冷徹だと思っていた王の、あの剥き出しの激情。それはすべて、俺一人のために向けられたものだった。その事実が、凍っていた俺の心の奥をじんわりと溶かしていく。
求婚は、政治的な策略なんかじゃなかった。気まぐれでもない。
あの人は、本当に俺を……。
そう思うと、今まで避けていたカイゼルの顔をまともに見ることができなくなった。廊下ですれ違えば心臓が跳ね、執務室で二人きりになれば、その黄金の瞳に見つめられるだけで顔が熱くなる。
俺の変化に、カイゼルも気づいているようだった。彼は以前のように強引なアプローチはしてこなくなったが、その代わりにまるで宝物でも扱うかのように、俺に優しく接するようになった。
俺が夜遅くまで書庫で調べ物をしていれば、黙って温かい飲み物を差し入れてくれる。俺が子供たちに勉強を教えていれば、少し離れた場所から穏やかな表情でその様子を見守っている。
冷徹な王の仮面の下にある、不器用な優しさ。そして、俺にだけ向けられる真っ直ぐでひたむきな愛情。
その一つ一つが、俺の心に深く、深く染み込んでいく。
ある日の夕暮れ。俺は城のバルコニーで、王都の景色を眺めていた。活気のある街並み、笑い合う獣人の親子、黄金色の畑。すべて俺がこの国に来てから生まれた、あるいは守られた景色だ。
「ミコト」
静かな声に振り返ると、カイゼルが立っていた。彼は俺の隣に並び、同じように眼下の景色を見つめる。
「……良い国になりましたね」
俺がぽつりと呟くと、カイゼルは静かに首を横に振った。
「お前が、良くしてくれたんだ」
そして、彼は俺の方に向き直った。夕陽を浴びた彼の黄金の瞳が、真摯な光をたたえて俺を見つめている。
「ミコト。もう一度、言わせてくれ。俺の番になってほしい。政治のためでも、お前の知識が欲しいからでもない。俺が、お前という人間を心から愛しく思っているからだ」
何の飾りもない、ストレートな告白。
その言葉が、俺の心の最後の扉を静かに開いた。
ああ、もう駄目だ。
この人には、敵わない。
俺は、この人が好きだ。
冷たいと思っていた王。恐ろしいと思っていた獣人。生き残るためだけだったこの国。
そのすべてが、今はこんなにも愛おしい。
「……俺は」
震える声で、俺は口を開いた。
「俺は、魔力もない、力もない、ただの人間です。いつか、あなたの隣に立つには相応しくないと言われるかもしれない」
「俺が許さん」
カイゼルは俺の言葉を遮るように、きっぱりと言った。
「俺の隣に立つ者は、俺が決める。他の誰にも文句は言わせん」
その力強い言葉に、もう迷いはなかった。
俺は息を吸い込み、ずっと心の奥にしまっていた想いをようやく口にした。
「……俺も、あなたの隣に、いたいです。カイゼル」
そう言った瞬間、俺の身体は力強い腕で強く抱きしめられていた。カイゼルの胸の中から、彼の心臓の音がどくん、どくんと力強く響いてくる。それは俺の心音と、確かに重なり合っていた。
カイゼルに守られたあの瞬間、この獣人国は俺にとって単なる『生き抜くための場所』ではなくなっていた。いつの間にか、そこは俺の『帰る場所』になっていたのだ。
冷徹だと思っていた王の、あの剥き出しの激情。それはすべて、俺一人のために向けられたものだった。その事実が、凍っていた俺の心の奥をじんわりと溶かしていく。
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そう思うと、今まで避けていたカイゼルの顔をまともに見ることができなくなった。廊下ですれ違えば心臓が跳ね、執務室で二人きりになれば、その黄金の瞳に見つめられるだけで顔が熱くなる。
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冷徹な王の仮面の下にある、不器用な優しさ。そして、俺にだけ向けられる真っ直ぐでひたむきな愛情。
その一つ一つが、俺の心に深く、深く染み込んでいく。
ある日の夕暮れ。俺は城のバルコニーで、王都の景色を眺めていた。活気のある街並み、笑い合う獣人の親子、黄金色の畑。すべて俺がこの国に来てから生まれた、あるいは守られた景色だ。
「ミコト」
静かな声に振り返ると、カイゼルが立っていた。彼は俺の隣に並び、同じように眼下の景色を見つめる。
「……良い国になりましたね」
俺がぽつりと呟くと、カイゼルは静かに首を横に振った。
「お前が、良くしてくれたんだ」
そして、彼は俺の方に向き直った。夕陽を浴びた彼の黄金の瞳が、真摯な光をたたえて俺を見つめている。
「ミコト。もう一度、言わせてくれ。俺の番になってほしい。政治のためでも、お前の知識が欲しいからでもない。俺が、お前という人間を心から愛しく思っているからだ」
何の飾りもない、ストレートな告白。
その言葉が、俺の心の最後の扉を静かに開いた。
ああ、もう駄目だ。
この人には、敵わない。
俺は、この人が好きだ。
冷たいと思っていた王。恐ろしいと思っていた獣人。生き残るためだけだったこの国。
そのすべてが、今はこんなにも愛おしい。
「……俺は」
震える声で、俺は口を開いた。
「俺は、魔力もない、力もない、ただの人間です。いつか、あなたの隣に立つには相応しくないと言われるかもしれない」
「俺が許さん」
カイゼルは俺の言葉を遮るように、きっぱりと言った。
「俺の隣に立つ者は、俺が決める。他の誰にも文句は言わせん」
その力強い言葉に、もう迷いはなかった。
俺は息を吸い込み、ずっと心の奥にしまっていた想いをようやく口にした。
「……俺も、あなたの隣に、いたいです。カイゼル」
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