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第18話「涙の告白」
王城への帰路は、悪夢のようだった。騎士たちに担がれたカイゼルは、一向に意識を取り戻さない。俺はただ、彼の血で汚れた自分の手を見つめ無力感に打ちひしがれることしかできなかった。
城に到着するとすぐに王宮の侍医たちがカイゼルの治療に当たり、俺は寝室から締め出された。扉の向こうからは、緊迫した声や慌ただしい足音が聞こえてくる。
その一つ一つが、俺の不安を煽った。
(俺のせいで……俺を庇ったから……)
もし、このままカイゼルが死んでしまったら?
そう考えた瞬間、全身の血が凍るような感覚に襲われた。涙さえ出なかった。ただ、心臓を氷の手に鷲掴みにされたような苦しさだけが俺を支配していた。
彼を失うかもしれない。その恐怖の中で、俺はようやく自分の本当の気持ちを自覚した。
感謝や尊敬なんかじゃない。この国に居場所をくれたことへの恩でもない。
俺は、カイゼルを愛しているのだ。
一人の男として、どうしようもなく彼に惹かれ、その隣にいることを望んでいる。
その単純な事実に気づいた時、俺の目から堰を切ったように涙が溢れ出した。
どれくらいの時間が経っただろうか。ようやく治療を終えた侍医が出てきて、「峠は越えました。あとは、ご本人の生命力次第です」と告げた。
許可を得て寝室に入ると、そこにはベッドの上で静かに横たわるカイゼルの姿があった。肩には分厚い包帯が巻かれ、その顔は蝋のように白い。聞こえるのは、浅く苦しそうな呼吸音だけ。
俺は彼のベッドの脇に椅子を引き寄せ、力なく垂れていた彼の手をそっと両手で握りしめた。
その日から、俺の看病が始まった。食事も喉を通らず、眠ることも忘れてただひたすら彼のそばに座り続けた。
「カイゼル……お願いだから、目を覚まして……」
彼の手に額を押し付け、何度も、何度も祈った。
三日目の朝。陽光が部屋に差し込む頃、俺が握っていたカイゼルの指がぴくりと動いた。
ハッとして顔を上げると、彼の瞼がかすかに震えている。そして、ゆっくりとその黄金の瞳が現れた。まだ焦点は合っていないが、確かに彼は目覚めたのだ。
「……み……こと……?」
掠れた声で、彼が俺の名前を呼んだ。
その瞬間、安堵とこの数日間の恐怖、そして愛しさが一度に押し寄せてきて、俺の涙腺は完全に壊れてしまった。
「よかった……! 目が、覚めたんですね……!」
俺は彼の手にすがりつき、子供のように泣きじゃくった。
「本当に、よかった……! もう、会えないかと思った……!」
カイゼルは、まだ弱々しい手つきで俺の頭を撫でようとしてくれる。その優しさが、さらに俺の涙を誘った。
俺は涙でぐしゃぐしゃの顔を上げて、ずっと心に秘めていた想いを、ありったけの気持ちを込めて彼に告げた。
「好きです、カイゼル……! 好きなんです……! だから、お願い……どこにも行かないで……俺を、一人にしないで……!」
それは、生まれて初めての魂からの告白だった。
城に到着するとすぐに王宮の侍医たちがカイゼルの治療に当たり、俺は寝室から締め出された。扉の向こうからは、緊迫した声や慌ただしい足音が聞こえてくる。
その一つ一つが、俺の不安を煽った。
(俺のせいで……俺を庇ったから……)
もし、このままカイゼルが死んでしまったら?
そう考えた瞬間、全身の血が凍るような感覚に襲われた。涙さえ出なかった。ただ、心臓を氷の手に鷲掴みにされたような苦しさだけが俺を支配していた。
彼を失うかもしれない。その恐怖の中で、俺はようやく自分の本当の気持ちを自覚した。
感謝や尊敬なんかじゃない。この国に居場所をくれたことへの恩でもない。
俺は、カイゼルを愛しているのだ。
一人の男として、どうしようもなく彼に惹かれ、その隣にいることを望んでいる。
その単純な事実に気づいた時、俺の目から堰を切ったように涙が溢れ出した。
どれくらいの時間が経っただろうか。ようやく治療を終えた侍医が出てきて、「峠は越えました。あとは、ご本人の生命力次第です」と告げた。
許可を得て寝室に入ると、そこにはベッドの上で静かに横たわるカイゼルの姿があった。肩には分厚い包帯が巻かれ、その顔は蝋のように白い。聞こえるのは、浅く苦しそうな呼吸音だけ。
俺は彼のベッドの脇に椅子を引き寄せ、力なく垂れていた彼の手をそっと両手で握りしめた。
その日から、俺の看病が始まった。食事も喉を通らず、眠ることも忘れてただひたすら彼のそばに座り続けた。
「カイゼル……お願いだから、目を覚まして……」
彼の手に額を押し付け、何度も、何度も祈った。
三日目の朝。陽光が部屋に差し込む頃、俺が握っていたカイゼルの指がぴくりと動いた。
ハッとして顔を上げると、彼の瞼がかすかに震えている。そして、ゆっくりとその黄金の瞳が現れた。まだ焦点は合っていないが、確かに彼は目覚めたのだ。
「……み……こと……?」
掠れた声で、彼が俺の名前を呼んだ。
その瞬間、安堵とこの数日間の恐怖、そして愛しさが一度に押し寄せてきて、俺の涙腺は完全に壊れてしまった。
「よかった……! 目が、覚めたんですね……!」
俺は彼の手にすがりつき、子供のように泣きじゃくった。
「本当に、よかった……! もう、会えないかと思った……!」
カイゼルは、まだ弱々しい手つきで俺の頭を撫でようとしてくれる。その優しさが、さらに俺の涙を誘った。
俺は涙でぐしゃぐしゃの顔を上げて、ずっと心に秘めていた想いを、ありったけの気持ちを込めて彼に告げた。
「好きです、カイゼル……! 好きなんです……! だから、お願い……どこにも行かないで……俺を、一人にしないで……!」
それは、生まれて初めての魂からの告白だった。
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