氷の騎士と浄化のオメガ~「出来損ない」と追放された僕ですが、最強の騎士団長様に拾われて、運命の番としてとろとろに溺愛されています~

水凪しおん

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第6話「囚われの身と絶望の淵」

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 ワイバーン討伐のため、僕とレオン、そしてゼクスを含む数名の騎士たちは、東の森へと向かった。
 鬱蒼と茂る木々が陽の光を遮り、森の中は昼間だというのに薄暗い。淀んだ空気には、濃い瘴気の匂いが満ちていた。

「ユキ、気分は悪くないか?」

 馬上で隣を歩くレオンが、心配そうに僕を気遣ってくれる。

「大丈夫です。……なんだか、この森に入ってから、体の中から力が湧いてくるような気がして……」

 それは本当だった。瘴気が濃ければ濃いほど、僕の中の浄化の力が活性化するような、不思議な感覚があった。

 森の奥に進むと、開けた場所に巨大な影が蠢いていた。
 翼を持つ、巨大な竜。ワイバーンだ。その体からは、黒い瘴気がもくもくと立ち上っている。

「総員、戦闘準備!」

 レオンの号令と共に、騎士たちが一斉に剣を抜く。
 しかし、ワイバーンの力は想像を絶していた。鋭い爪の一振りで屈強な騎士が吹き飛ばされ、口から吐き出される瘴気のブレスが、大地を黒く汚染していく。

「ユキ! 俺の後ろにいろ!」

 レオンは僕を庇いながら、果敢にワイバーンに立ち向かう。
 しかし、あまりにも濃い瘴気のせいで、騎士たちの動きは鈍り、レオンですら消耗していくのが見て取れた。
(僕が、なんとかしないと……!)
 僕は本で読んだ知識を思い出し、意識を集中させた。
 僕の中の力を、解き放つんだ。
 手のひらに、温かい光が集まっていくのを感じる。

「お願い……みんなを守って……!」

 僕がそう叫ぶと、手のひらから放たれた光が、金色のドームとなって僕たちの周りを包み込んだ。
 光に触れた瘴気が、霧散していく。騎士たちの顔に、生気が戻った。

「すごい……本当に、瘴気を浄化した……」

 ゼクスが驚きの声を上げる。
 レオンも一瞬こちらを振り返り、僕に力強く頷いてみせた。
 僕の力で、戦況は好転するはずだった。
 しかし、その時、予想外の事態が起こる。

「グオオオオオオッ!」

 ワイバーンが、僕を標的に定めたのだ。
 浄化の光を放つ僕を、脅威だと認識したらしい。

「ユキ、危ない!」

 レオンが叫ぶと同時に、ワイバーンの巨大な尻尾が、僕がいた場所を薙ぎ払った。
 僕は間一髪で馬から飛び降りたが、受け身を取り損ねて地面に激突し、意識が朦朧とする。
 遠のく意識の中、僕に駆け寄ろうとするレオンの姿が見えた。
 だが、それよりも早く、別の影が僕の体を攫っていく。

「なっ……!?」

 僕を捕らえたのは、黒いローブを纏った複数の男たちだった。

「このオメガは、我々がいただく」

 男たちの一人がそう言うと、彼らの足元から黒い霧が湧き出し、僕たちの姿を包み込む。
 転移魔法だ。

「ユキッ!!」

 レオンの悲痛な叫び声が、遠くに聞こえた。
 それが、僕が最後に聞いた彼の声だった。

 目が覚めた時、僕は冷たい石の床の上に寝かされていた。
 薄暗い、地下牢のような場所だ。手足には、魔力を封じる呪いのかかった枷がはめられている。

「目が覚めたか、浄化のオメガ」

 声がした方を見ると、そこに立っていたのは、僕の兄、アルベルトだった。

「兄さん……!? どうして……」
「どうして、だと? お前のような出来損ないが、騎士団長なんかに見初められ、もてはやされているのが、気に食わなかったからに決まっているだろう!」

 アルベルトの目は、嫉妬と憎悪で濁っていた。
 黒いローブの男たちは、アルベルトと手を組んでいたのだ。僕の力を手に入れ、国を転覆させようと企む、闇の魔術師の一団だった。

「お前のその忌々しい力、我が物にしてくれるわ!」

 アルベルトはそう言うと、僕の胸に手をかざし、呪文を唱え始めた。
 僕の中の力が、無理やり吸い出されていく。激しい痛みに、意識が遠のいていく。
(レオン……助けて……)
 心の中で、必死に彼の名を呼ぶ。
 でも、もう届かない。
 僕の力は奪われ、利用されるだけ。
 希望が、絶望に塗りつぶされていく。
 暗闇の中、僕の意識は、静かに沈んでいった。
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