氷の騎士と浄化のオメガ~「出来損ない」と追放された僕ですが、最強の騎士団長様に拾われて、運命の番としてとろとろに溺愛されています~

水凪しおん

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第7話「運命の番と魂の交わり」

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 意識が闇に沈む直前、僕の脳裏に響いたのは、遠い日の記憶。
 そうだ、僕は死ぬ間際、神様に出会ったんだ。
『新しい世界で、穏やかに生きたい』
 そう願った僕に、神様は言った。
『その願い、叶えてあげましょう。ただし、あなたには使命があります。あなたの魂の片割れ……運命の番を見つけ、彼を深い闇から救うのです。そのために、この力を授けましょう』
 神様が僕の胸に触れると、温かい光が体の中に流れ込んできた。
 浄化の力。
 これは、レオンを救うために与えられた力だったんだ。

 ――ユキ。
 誰かが、僕の名を呼んでいる。
 温かくて、優しい声。

 ――俺の声が、聞こえるか。

 この声は、レオンだ。
 どうして、彼の声が?

 ――お前の魂が、俺を呼んでいる。

 ゆっくりと目を開けると、そこは地下牢ではなかった。
 一面に広がる、光り輝く花畑。夢の中だろうか。
 そこに、レオンが立っていた。

「レオン……?」
「そうだ、俺だ」

 彼は僕のそばに寄り、優しく頬に触れた。その手は温かく、確かな感触がある。

「どうして……ここに?」
「お前が呼んだからだ。俺たちは、運命の番だからな。魂が、繋がっている」

 運命の番。
 その言葉が、すとんと胸に落ちてきた。
 ああ、そうか。だから僕は、初めて会った時から、彼に惹かれていたんだ。

「俺は、呪われている」

 レオンは、静かに語り始めた。
 彼の家系に代々伝わる、瘴気の呪い。その呪いは、運命の番と結ばれることでしか解けないのだと。

「俺は、ずっとお前を探していた。だが、呪いの影響でフェロモンを感じにくくなり、お前がそばにいても、すぐには気づけなかった。……すまない」

 謝らないで。僕の方こそ、自分の使命を忘れていた。

「俺は今、お前が捕らわれている砦に向かっている。だが、敵の結界が強力で、中に入れない」
「そんな……」
「ユキ。お前の力で、内側から結界を破ってくれ。できるか?」

 僕に、そんなことができるだろうか。
 魔力を封じる枷をはめられているのに。

「できる。お前なら」

 レオンは、僕の手を強く握った。

「思い出せ。お前の力は、俺と繋がっている。俺を想え。俺を救いたいと、強く願え」

 彼の蒼い瞳が、まっすぐに僕を見つめている。
 その瞳を見ていると、不思議と力が湧いてくる。
 そうだ、僕は彼を救うために、ここにいるんだ。
 僕が強く頷くと、レオンは満足そうに微笑み、僕の額にそっと口づけをした。

「信じている」

 その言葉を最後に、彼の姿は光の中に消えていった。

 はっと意識が覚醒する。
 僕はまだ、冷たい地下牢の床の上にいた。しかし、絶望はもうない。
 僕は枷に繋がれた両手を、胸の前で合わせた。
 目を閉じ、レオンのことだけを想う。
 彼の笑顔、彼の声、彼の温もり。
 彼を救いたい。彼に会いたい。
 その想いが、僕の体の中で熱となっていく。枷が、じりじりと熱を発し始めた。

「な、なんだ!?」

 見張りの兵士が、異変に気づいて叫ぶ。
 僕の体から、金色の光が溢れ出す。魔力を封じるはずの枷が、光に耐えきれず、砕け散った。
 力が、解放される。

「そんな、馬鹿な……!」

 駆けつけてきたアルベルトが、信じられないものを見る目で僕を見ている。

「兄さん。もう、あなたの思い通りにはさせない」

 僕は立ち上がり、まっすぐにアルベルトを見据えた。
 その時、砦全体が大きく揺れ、外から轟音が響き渡る。
 レオンが、結界を破ってくれたのだ。

 地下牢の扉が、凄まじい勢いで破壊される。
 舞い上がる粉塵の向こうに、逆光を背負って立つ、銀色の騎士の姿があった。

「……レオン!」
「ユキ! 無事か!」

 彼は僕の元へ駆け寄ると、力強く抱きしめてくれた。
 再会を喜ぶのも束の間、アルベルトが操る闇の魔術師たちが、僕たちに襲いかかってくる。

「ユキ、俺のそばを離れるな」
「うん!」

 僕たちは、背中合わせで敵と対峙する。
 レオンが剣で道を切り開き、僕が浄化の光で瘴気を打ち消す。
 二人の息は、ぴったりと合っていた。まるで、ずっと昔から、こうして共に戦ってきたかのように。
 全ての敵を打ち倒し、残るはアルベルトだけになった。

「出来損ないのお前が……! この俺を、邪魔するなぁ!」

 逆上したアルベルトが、隠し持っていた短剣で僕に襲いかかってくる。
 僕は咄嗟に身を庇うことができない。
 しかし、その刃が僕に届くことはなかった。
 僕を庇ったレオンの腕が、短剣を深々と受け止めていたのだ。

「レオン!」
「……っ、この程度、かすり傷だ」

 彼はそう言ったが、傷口から黒い瘴気が立ち上っている。短剣には、強力な呪いがかけられていた。
 レオンの体に、呪いと瘴気が一気に流れ込み、彼の意識を奪っていく。

「ぐ……ぁ……っ!」

 彼はその場に膝をつき、苦しみ始めた。首筋の黒い痣が、全身に広がっていく。
 呪いが、暴走しているのだ。

「レオン! しっかりして!」

 僕は彼のそばに駆け寄り、必死に浄化の光を送る。
 しかし、暴走した呪いはあまりにも強力で、僕の力だけでは抑えきれない。

「……ユキ……離れろ……俺に、喰われるぞ……」

 理性を失いかけたレオンの瞳が、赤く染まる。
 離れるなんて、できるはずがない。
 僕は覚悟を決めた。

「レオン……僕を、受け入れて」

 僕は彼の首筋に顔を寄せ、そっと歯を立てた。
 番いの儀式。
 オメガがアルファのうなじを噛むことで、二人の魂は完全に一つになる。

「……っ、ユキ!」

 レオンの理性が、一瞬だけ戻る。
 その隙に、僕はありったけの浄化の力を、彼の体へと注ぎ込んだ。
 僕たちの体を、眩い光が包み込む。
 混じり合う、二つの魂。
 彼の苦しみが、僕の中に流れ込んでくる。僕の温かい光が、彼の闇を溶かしていく。
 光の中で、僕たちは求め合うように唇を重ねた。
 それは、永遠を誓う、魂の交わりだった。
 光が収まった時、レオンの体から、全ての瘴気は消え失せていた。
 長きにわたる呪いが、完全に解けた瞬間だった。
 僕たちは、見つめ合い、そして、どちらからともなく、再び深く口づけを交わした。
 もう、何も僕たちを引き裂くことはできない。
 僕たちは、ようやく本当の意味で、一つになったのだ。
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