【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん

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第5話「最強の用心棒」

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 アッシュとの同居生活は、意外にも順調だった。彼は言葉数は少ないけれど、約束通り、本当によく働いた。力仕事はすべて引き受けてくれたし、僕が一人では大変だった畑の拡張も、彼の手にかかればあっという間だった。

 ただ、彼が一体何者なのかは、依然として謎のままだった。

 その正体を知ることになったのは、同居を始めて一週間ほど経った日のことだ。
 その日、僕たちの畑に招かれざる客が現れた。
 ズシン、ズシンという地響きと共に森から現れたのは、巨大な猪型の魔物、グレートボアだ。体長は僕の背丈の倍はあり、鋭い牙が二本、天に向かって突き出している。その目は血走り、明らかに僕の畑の野菜を狙っていた。

「ひっ……!」

 僕は恐怖でその場に立ちすくんでしまった。あんなものに襲われたら、ひとたまりもない。
 グレートボアが僕めがけて突進してきた、その瞬間だった。

「フィン、下がってろ」

 いつの間にか僕の前に立っていたアッシュが、静かな声で言った。彼の表情は普段と変わらず無愛想なままだったが、その灰色の瞳には冷たい光が宿っていた。
 アッシュはゆっくりと腰に差していた古びた剣を抜く。それは、彼がいつも身につけている、どこにでもありそうな変哲もない剣だ。
 しかし、彼がその剣を鞘から引き抜いた瞬間、信じられないことが起こった。

 ごうっと風が吹き荒れ、古びた剣身がまばゆい光を放ち始めたのだ。錆びついていたはずの刀身は、まるで純銀のように輝き、神々しい紋様が浮かび上がる。それは、かつて魔王を滅ぼしたとされる伝説の『聖剣』へと姿を変えた。

「――消えろ」

 アッシュが短く呟き、聖剣を軽く一振りする。
 次の瞬間、まばゆい閃光が走り、グレートボアがいた場所には何も残っていなかった。いや、正確には、黒く焦げた地面と、パラパラと舞い落ちる灰だけが残っていた。一瞬で、消し炭にされたのだ。

 僕はあまりに圧倒的な光景に、声も出なかった。
 アッシュは聖剣を鞘に戻すと、光は消え、また元の古びた剣に戻った。そして、何事もなかったかのように僕の方を振り返る。

「……見てしまったか」

「アッシュ、あなた……一体……」

「俺は、アッシュ・ライオネル。かつて、魔王を倒した……元英雄だ」

 彼は静かにそう告げた。伝説の英雄。物語の中にしか存在しないはずの、雲の上の存在。そんな人が、なぜこんな辺境にいるのだろうか。
 僕の疑問を察したように、アッシュは苦々しい顔で自分の左腕を見せた。服をまくり上げると、そこには黒い痣のようなものが不気味に広がっていた。

「これは、聖剣の呪いだ。魔王を倒した代償に、俺の体を内側から蝕んでいる。お前の作る野菜を食べる時だけ、この痛みが和らぐんだ」

 彼の告白は、僕が思っていたよりもずっと重く、そして切実なものだった。
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