【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん

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第11話「聖剣の呪い、進行」

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 穏やかな日々が戻り、僕とアッシュの関係も少しずつ変化していた。僕は自分の恋心を自覚し、彼の一つ一つの言動にドキドキしてしまう毎日だった。

 そんなある夜のことだった。
 隣の部屋から、うめき声が聞こえてきた。それは、獣が喉を鳴らすような、ひどく苦しそうな声だった。

「アッシュ!?」

 僕は慌てて彼の部屋へ飛び込んだ。
 そこには、ベッドの上で体を丸め、シーツを掻きむしるようにして苦しむアッシュの姿があった。
 彼の顔は蒼白で、額には脂汗がびっしょりと浮かんでいる。そして、服の袖から覗く左腕の黒い痣が、以前よりも濃く、そして範囲を広げているように見えた。

「呪いが……っ、ぐ……!」

 彼は苦悶の声を漏らす。

「しっかりして、アッシュ!」

 僕は必死に彼の体を揺さぶるが、アッシュの意識は朦朧としているようだった。彼の体は火のように熱く、時折、黒い瘴気のようなものが体から立ち上っては消えていく。
 これが、聖剣の呪い。英雄の彼を、ここまで苦しめるものなのか。

 何か、僕にできることはないだろうか。
 そうだ、僕の野菜なら。
 僕は台所へ駆け込むと、薬草の中から特に生命力の強いものを選び出し、細かく刻んでお粥に混ぜた。そして、スキル【土壌改良】を、野菜ではなく、お粥そのものに直接注ぎ込むイメージで発動させた。「アッシュを助けたい」と、ただ一心に願いながら。
 すると、お粥からふわりと温かい光が立ち上った。

 完成した特製の薬草粥を、スプーンで少しずつアッシュの口元へ運ぶ。
 最初は抵抗していた彼も、お粥の匂いに気づいたのか、ゆっくりと口を開けてくれた。
 一口、また一口と、お粥を飲み込んでいくうちに、アッシュの荒い呼吸が少しずつ穏やかになっていく。痙攣していた体から力が抜け、顔色もわずかにだが良くなってきた。

 夜が明ける頃、ようやくアッシュは落ち着き、浅い眠りについた。
 僕は彼のそばで、一睡もせずに看病を続けた。
 やがて、目を覚ましたアッシュは、疲れ切った顔で僕を見つめた。

「……すまない、フィン。また、助けられたな」

「ううん。でも、前よりひどくなってる……」

 僕の言葉に、アッシュは唇を噛んだ。呪いが以前よりも強力になっていることは、彼自身が一番よく分かっているのだろう。

「……俺のせいで、お前を危険に晒すわけにはいかない」

 アッシュは、僕から離れることを示唆するような、弱々しい声でそう言った。

「俺はもう、ここにはいられない……」
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