【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん

文字の大きさ
13 / 24

第12話「君を助けたい」

しおりを挟む
「いなくならないで!」

 アッシュの言葉を聞いた瞬間、僕は思わず叫んでいた。
 僕の手から離れようとする彼の手を、両手でぎゅっと掴んで引き留める。

「どこにも行かないで、アッシュ……! 一人にしないで……!」

「フィン……」

 いつもおっとりしている僕が、こんなに必死な姿を見せるのは初めてだったのだろう。アッシュは驚いたように目を見開き、僕の顔をじっと見つめていた。その瞳が、悲しげに揺れている。

「でも、このままではお前を巻き込む。呪いが暴走すれば、この土地ごと……」

「僕が、アッシュを助ける!」

 僕は彼の言葉を遮るように、強く言った。
 そうだ、助ければいいんだ。呪いが彼を苦しめるなら、その呪いを僕が消してしまえばいい。

「僕のこの力で、絶対にアッシュを助けてみせるから!」

 何の根拠もなかった。でも、僕の中には不思議な確信があった。
 僕のスキル【土壌改良】は、ただの土いじりじゃない。作物の成長を異常に早めたり、食べた者の体に良い影響を与えたりする。昨夜だってお粥に力を込めたら、アッシュの苦痛が和らいだ。
 この力は、もっとすごいことができるはずだ。

 僕は昔、実家の書庫で読んだ古い本の内容を必死に思い出していた。
 確か、どんな呪いも浄化する力を持つという、伝説の植物の話が書かれていたはずだ。その名は、『聖なる光草』。
 神聖な力を持つ土地でしか育たないと言われる、幻の植物。

 神聖な土地なんて、どこにあるか分からない。でも、僕には【土壌改良】がある。
 僕のこの力が、土に生命力を与える力なのだとしたら。この土地そのものを、聖なる土地に変えることだって、できるんじゃないだろうか。

「アッシュ、聞いて。聖なる光草っていう植物を知ってる?」

「……伝説上のものだ。現存しないと言われている」

「僕が、それを育ててみる。この畑で」

 僕は決意を固め、アッシュの目をまっすぐに見つめた。
 僕の必死な姿に、アッシュは心を揺さぶられているようだった。彼はしばらく黙り込んだ後、僕の手をそっと握り返してきた。

「……分かった。お前を、信じる」

 その言葉は、僕にとって何よりも力強いものだった。
 アッシュを救う。その一心で、僕は伝説に挑むことを決めたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される

木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...