【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん

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第16話「王都からの陰謀」

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 僕たちが辺境で穏やかな愛を育んでいた頃、遠く離れた王都では、僕にまつわる噂が新たな火種を生んでいた。
 次兄ゲオルグが、命からがら屋敷に逃げ帰り、僕の土地が信じられないほど豊かになっていること、そして僕のそばに正体不明の強力な用心棒がいることを、大げさに報告したのだ。

 その報告を聞き、邪な野望を抱いたのが、フィンの実家であるアトウッド伯爵家を継いだ長兄、リヒャルトだった。
 リヒャルトは冷酷で、家の利益のためならどんな手段も厭わない男だ。

「ハズレスキルのはずのフィンが、痩せた土地を穀倉地帯に変えただと? 面白い。その力、我がアトウッド家が、いや、私が有効活用してやろう」

 彼はゲオルグの失態と、僕の力の噂を利用することを思いつく。
 リヒャルトはすぐに王家に働きかけた。旧知の仲である宰相に取り入り、「辺境の地に、国家の食糧問題を解決しうる奇跡の力を持つ者がいる。しかし、彼はその力を私的に利用しているだけだ。国家に貢献する義務がある」と、巧みな言葉で吹き込んだのだ。
 元々、天候不順による食糧不足に悩まされていた王家は、その話にすぐに飛びついた。

 そして数日後。
 僕たちの元に、王家の紋章が入った一通の公式な召喚状が届いた。
 差出人は、国王陛下。
 内容は、「その類稀なる力を国家のために役立てるべく、直ちに王都へ出頭し、王家に仕えよ」という、強制的な命令だった。

「……長兄の仕業だな」

 召喚状を読んだアッシュが、冷たく吐き捨てた。

「これは、お前の力を独占し、軍事利用しようという魂胆だ。作物の生産能力は、そのまま兵站能力に繋がる。戦争をする上で、最も重要な力の一つだからな」

「軍事利用……? 僕が?」

 そんなこと、考えたこともなかった。僕はただ、美味しい野菜を作って、アッシュと平和に暮らしたいだけなのに。
 もちろん、答えは決まっている。

「行かないよ。僕の力は、僕と、アッシュと、この土地のために使うものだ」

 僕がそうきっぱりと断ると、アッシュは満足そうに頷いた。
 しかし、僕たちのこの決断が、長兄の次なる卑劣な手段の引き金を引くことになるとは、まだ予想できていなかった。
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