異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん

文字の大きさ
3 / 13

第2話「囚われの鳥、金色の籠」

しおりを挟む
 目が覚めると、そこは天蓋付きの巨大なベッドの上だった。
 見たこともないほど豪華な部屋。窓の外には、紫色の空に二つの月が浮かんでいた。
 ここは、魔王城の一室らしい。

「……夢じゃ、なかったのか」

 体を起こそうとして、自分が着ていたはずのボロボロの鎧ではなく、肌触りの良いシルクの寝間着に着替えさせられていることに気づく。
 昨日の出来事が一気に蘇り、血の気が引いた。
 俺は魔王に捕まったんだ。

「お目覚めか、勇者」

 声のした方に顔を向けると、ゼノンが椅子に腰かけ、優雅に足を組んでこちらを見ていた。
 いつからそこにいたのか、全く気配を感じさせなかった。

「……仲間たちはどうした」
「案ずるな。城の外へ放り出してやった。お前さえいれば、他はどうでもいい」

 その言葉に、わずかに安堵する。だけど、俺自身の状況は最悪だ。

「俺をどうする気だ」
「言ったはずだ。お前は俺のものだと。この城で、俺のそばで暮らせばいい」

 まるで恋人に語りかけるような口調に、背筋がぞっとした。この男は本気らしい。

「ふざけるな! 俺は勇者だぞ。お前とは敵同士だ!」

 ベッドから飛び降りてドアに向かおうとしたが、ゼノンは一瞬で俺の目の前に移動していた。
 腕を掴まれ、いとも簡単にベッドに押し倒される。

「敵? それはもう終わったことだ。お前は俺に負けた」
「くっ……!」

 見下ろしてくる赤い瞳には、絶対的な支配者の色が浮かんでいる。
 抵抗が無意味なことは、嫌というほどわかっていた。

 やがて、侍女たちが食事を運んできた。
 テーブルに並べられたのは、見たこともない豪華な料理の数々。

「さあ、食え。腹が減っているだろう」

 ゼノンに促されるが、俺はそっぽを向いた。
 敵の情けで食事なんて、冗談じゃない。

「……いらない」
「そうか」

 ゼノンはため息をつくと、スープの皿を手に取り、スプーンで一口すくった。
 そして、俺の口元にそれを差し出す。

「食え」
「断る!」

 俺が頑なに口を閉じていると、ゼノンは自分の口にスープを含み、俺の顎を掴んで無理やり唇を合わせた。
 流し込まれる温かい液体と、彼の舌の感触に、頭が真っ白になる。

「ごふっ……! な、何するんだ!」
 口で食べないのなら、こうするまでだ。お前が俺の手でしか生きられないよう、ゆっくりと教えてやろう。

 楽しそうに笑う彼の顔を見て、俺は恐怖で体が震えた。
 この男は、俺の尊厳も意思も、何もかもを奪い去り、自分だけの色に染め上げようとしている。
 金色の鳥かごに囚われた鳥のように、俺の自由はもうどこにもないのだと、絶望的な気持ちで理解した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

処理中です...