異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん

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第10話「二人の王、夜明けの世界」

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 人間の国に戻った俺を待っていたのは、歓迎ではなく、冷たい敵意の目だった。
「魔王に魂を売った裏切り者」――神殿が流した噂は、人々の心に深く根付いていた。
 俺はすぐに捕らえられ、神殿の地下牢に幽閉されてしまった。

「やはり、愚かなことをしましたね、元・勇者よ」

 牢の前に現れたのは、俺を召喚した神官長だった。
 その目は、狂信的な光を宿している。

「世界に必要なのは、秩序です。そして秩序のためには、絶対的な悪が必要不可欠。魔王こそ、そのための礎。あなたはその礎を壊そうとした」
「違う! 平和を望まないあんたたちの方が、よっぽど悪じゃないか!」
「口答えは無用です。あなたは魔王を誘き出すための、良い餌となってもらいます。あなたを処刑すると発表すれば、あの魔王は必ずやこの国に攻め込んでくるでしょう。そうなれば、我々の正義が再び証明される」

 彼らの目的は、俺を囮にして、ゼノンを悪役に仕立て上げ、再び戦争を起こすことだった。
 あまりにも身勝手な言い分に、怒りで体が震えた。

 公開処刑の日。
 俺が広場の処刑台に引きずり出されると、集まった民衆から罵声が飛ぶ。
 誰も俺の言葉を信じようとはしない。
 神官長が高らかに俺の罪状を読み上げた、その時だった。

 空が、にわかに黒い雲で覆われた。
 そして、雷鳴と共に、巨大な黒い竜が広場に舞い降りた。
 竜の背中から優雅に降り立ったのは、漆黒の衣装をまとった魔王、ゼノンだった。

「――俺のハルキに、指一本でも触れてみろ。この国を、灰にしてくれる」

 その圧倒的な存在感と殺気に、広場は水を打ったように静まり返る。

「来たか、魔王!」

 神官長は勝ち誇ったように叫んだ。
 だが、ゼノンは彼を一瞥もせず、真っ直ぐに俺だけを見つめていた。

「迎えに来たぞ、ハルキ」

 その言葉だけで、不安だった心が温かくなる。俺は一人じゃない。
 神殿の騎士たちがゼノンに襲いかかるが、彼の張った結界に阻まれ、近づくことすらできない。

「やめて、ゼノン!」

 俺は叫んだ。彼が本気になれば、この国は本当に滅んでしまう。

「彼らを傷つけないで。これは、俺たちの問題だ」

 俺の声に、ゼノンは動きを止めた。
 その隙に、俺は最後の力を振り絞り、自分を拘束していた鎖を引きちぎった。
 そして、民衆に向かって叫んだ。

「みんな、目を覚ましてくれ! 本当の敵は魔王じゃない! 憎しみを利用して、自分たちの都合のいいように世界を動かそうとしている者たちだ!」

 その時、俺の言葉に呼応するように、広場の外から騎士団が現れた。
 彼らを率いる騎士団長が、神官長に剣を突きつける。

「神官長、貴殿を神への冒涜と、王国転覆の容疑で拘束する!」

 騎士団長は、俺の言葉を信じ、独自に神殿の内情を探っていたのだ。
 真実が明らかになり、民衆は動揺する。
 神官長とその一派は、なすすべもなく捕らえられた。

 こうして、人間と魔族の長きにわたる戦いは、ようやく終わりを告げた。

 数日後、魔王城と人間の王宮との間で、正式な和平条約が結ばれた。
 俺は、勇者という役目を終え、魔王の唯一の伴侶として、ゼノンの隣で生きることを選んだ。

「本当にいいのか? 人間の世界にはもう戻れなくなるかもしれんぞ」
「いいんだ。俺の居場所は、もうお前の隣しかないから」

 俺たちが手を取り合う姿を、朝日が優しく照らしていた。
 それは、二つの種族が手を取り合って生きていく、新しい世界の夜明けでもあった。
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