無能と捨てられたオメガですが、AI搭載の最強ゴーレムを作ったら、執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん

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第5話「守護者の暴力」

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 森から現れたのは、オークの変種らしき魔獣の群れだった。
 赤黒い皮膚に、鋭い牙。手には粗末な武器を持っているが、その腕力は人間を容易く引き裂く。数は三十体ほど。通常なら、小隊規模の騎士団が必要な戦力だ。
 俺はテラスから身を乗り出し、戦況を見守った。
 オルトは、たった一人で群れの正面に立ちはだかった。

「グルァァァァッ!」

 先頭のオークが咆哮し、棍棒を振り上げて突進してくる。
 オルトは動かない。
 棍棒が振り下ろされる寸前、彼の手が霞んだ。
 ドォン! という鈍い音が響き、オークの上半身が弾け飛ぶ。
 ただの正拳突きだ。だが、その質量と速度は砲弾に匹敵する。
 泥人形だったはずの彼の体は、今や超高密度の剛体と化していた。

「非効率な動きだ。予測演算の必要すらない」

 オルトが冷淡につぶやく。
 返り血を浴びても、彼は眉一つ動かさない。
 後続の魔獣たちが怯んだ隙を逃さず、ワーカーたちが側面から強襲した。
 多脚型ワーカーが素早い動きで魔獣の足を払い、転倒したところをアーム型が、農具から改造したパイルバンカーで脳天を貫く。
 農作業のために最適化された連携動作が、そのまま殺戮の舞踏へと転用されていた。
 土を耕すように肉を裂き、雑草を刈るように首を落とす。
 それは戦闘というより、事務的な「処理」だった。

「マスターの安眠を妨げる騒音源は、排除する」

 オルトが地面を蹴る。
 爆発的な加速。
 群れのボスらしき巨大な個体の懐に潜り込み、その胸板に掌を当てる。
 魔力が奔流となって掌に集中する。

『ゼロ距離、魔力破砕(マナ・バースト)』

 閃光。
 ボスの巨体が内側から破裂し、肉片となって四散した。
 圧倒的だった。
 魔法を使えないはずのゴーレムが、純粋な魔力放出だけで魔獣を粉砕したのだ。
 残りの魔獣たちは、恐怖に駆られて逃げ出そうとしたが、オルトはそれを許さなかった。
 彼は地面に手を突き刺し、大地そのものを隆起させて逃げ道を塞いだ。

「逃がさない。マスターに恐怖を与えた罪は、死で償え」

 そこからは一方的な蹂躙だった。
 最後の 一匹が動かなくなるまで、オルトは機械的に、しかし執拗に攻撃を続けた。
 静寂が戻る。
 血の海の中に佇むオルトは、ゆっくりとこちらを振り返った。
 全身を赤く染め、金色の瞳だけが異様に輝いている。その姿は、神話の英雄のようでもあり、地獄から這い出た悪魔のようでもあった。
 彼は瞬時に俺の元へ跳躍して戻ってきた。
 着地の衝撃を完全に殺し、音もなくテラスに降り立つ。
 そして、俺に触れようとして――自分の手が血で汚れていることに気づき、ハッとして手を引っ込めた。

「申し訳ありません、マスター。汚れてしまいました。これではあなたに触れられない」

 その悲痛なまでの表情に、俺は言葉を失った。
 彼は大量殺戮を行った直後だというのに、気にしているのは「俺を汚さないか」という一点のみだったのだ。
 恐怖よりも先に、胸が締め付けられるような愛おしさが込み上げてきた。
 俺は躊躇なく一歩踏み出し、血に濡れた彼の手を取った。

「カイル様……?」
「構わない。お前が俺を守ってくれた証だ」
「ですが……」
「ありがとう、オルト。お前は強くて、美しいよ」

 俺はハンカチを取り出し、彼の頬についた血を拭った。
 オルトは恍惚とした表情で目を細め、俺の掌に頬をすり寄せた。

「ああ……マスター。あなたの体温、匂い、鼓動……全てが私の回路を焼き尽くすほどに愛おしい」

 彼は俺の手首を掴み、その内側に唇を寄せた。
 脈打つ動脈の上。吸血鬼が噛み付くような位置に、口付けを落とす。
 ゾクリ、と腰のあたりに痺れが走った。
 その口付けは、忠誠の儀式を超えて、所有のマーキングに近い濃厚なものだった。
 俺はこの時、気づくべきだったのだ。
 彼の中に芽生えている感情が、単なる忠誠心などではなく、もっと重く、暗く、底知れない執着へと進化していることに。
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