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第22話「二人で紡ぐ未来の設計図」
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アシュレイが目覚めたことで、王宮は再び活気を取り戻した。
彼の回復は驚異的だった。まるで俺が彼に代わって国を守っていた間の疲労を、すべて吸い取ってくれたかのようだった。
彼は俺が皇太子代理として政務を行っていたことを知ると、最初はひどく驚いていた。
そして俺が大臣たちと堂々と渡り合っていたと聞いて、少しだけ拗ねたような顔をした。
「……私がいない間に、ずいぶんと逞しくなったものだ」
「当たり前だ。お前の番だからな」
俺が胸を張ってそう言うと、彼は嬉しそうに、そして少しだけ寂しそうに笑った。
「……もう君は、私が守らなくても生きていけるのかもしれないな」
その言葉に、俺は思わず彼の頬を両手で包み込んだ。
「馬鹿なことを言うな」
俺は彼の目をまっすぐに見つめた。
「俺はお前に守られたいんだ。お前が俺を守ってくれるから、俺は強くいられるんだ。……わかるか?」
俺の必死の言葉に、アシュレイは目を見開いた。
そして次の瞬間、彼は力強く俺を抱きしめた。
「……ああ、わかる。わかるよ、ルシアン」
彼の声は安堵で震えていた。
「すまない。また君を不安にさせてしまった」
「……わかれば、いい」
俺たちはしばらくそうして、お互いの温もりを確かめ合った。
もうすれ違うことはない。
俺たちの心は以前よりもさらに固く、強く結ばれていた。
国王陛下もアシュレイの回復を心から喜んだ。
そしてアシュレイが完全に公務に復帰した日、国王は一つの重大な決断を下した。
「……わしは王位をアシュレイに譲ることにした」
その言葉に、玉座の間にいたすべての大臣が息をのんだ。
「まだ早いのでは、と言う者もおるだろう。だがわしは見たのだ。アシュレイが不在の間、この国がどれほど見事に機能していたかを」
国王の視線が俺に向けられる。
「それはひとえにルシアン君の功績だ。そして君を妃として選び、育てたアシュレイの功績でもある。この二人になら安心してこの国を任せられる。わしはそう確信した」
俺はただ呆然と、その言葉を聞いていた。
アシュレイが皇帝に。
そして俺が皇妃に……。
「……ルシアン」
隣に立つアシュレイが、俺の手を強く握った。
見れば彼はいつもの自信に満ちた、不敵な笑みを浮かべている。
「……二人でこの国を、もっと良い国にしよう」
「……ああ」
俺はこくりとうなずいた。
もう迷いはなかった。
彼と共に歩んでいく。
そう決めたのだから。
数カ月後、戴冠式が厳かに執り行われた。
新しい皇帝アシュレイ・エル・クレスメントと、その伴侶である皇妃ルシアン・フォン・ヴァイスハイトの誕生の瞬間だった。
俺たちは教会のバルコニーから、眼下に広がる民衆の歓声に手を振って応えた。
隣に立つアシュレイの横顔が、誇らしげに輝いている。
「なあ、アシュレイ」
俺は彼にしか聞こえない声で囁いた。
「俺さ、悪役令息に転生して、本当に良かったって今、心の底から思ってるよ」
もし俺が別の誰かに転生していたら、きっと彼と出会うことはなかっただろう。
彼を愛することもなかっただろう。
「……私もだ」
アシュレイが俺の耳元で囁き返す。
「私がこの世界のただの登場人物に転生して、本当に良かった。そうでなければ君という唯一無二の宝物を、見つけることはできなかったのだから」
俺たちは顔を見合わせ、笑った。
それはゲームのシナリオでも、誰かが決めた運命でもない。
俺たちが自分たちの手で掴み取った、幸せの形。
これから俺たちは二人で、この国の未来を描いていく。
それはまるで真っ白な設計図に、二人で線を引いていくような作業だろう。
時には間違えることもあるかもしれない。
喧嘩をすることもあるかもしれない。
でもきっと大丈夫。
二人で描く未来図は、きっと誰にも真似できないような素晴らしいものになる。
俺はそう確信していた。
民衆の鳴り止まない歓声の中で、俺は新しい皇帝陛下の唇をそっと盗んだ。
驚く彼の顔を見て、俺は悪戯っぽく笑ってやった。
俺たちの新しい物語は、まだ始まったばかりなのだから。
彼の回復は驚異的だった。まるで俺が彼に代わって国を守っていた間の疲労を、すべて吸い取ってくれたかのようだった。
彼は俺が皇太子代理として政務を行っていたことを知ると、最初はひどく驚いていた。
そして俺が大臣たちと堂々と渡り合っていたと聞いて、少しだけ拗ねたような顔をした。
「……私がいない間に、ずいぶんと逞しくなったものだ」
「当たり前だ。お前の番だからな」
俺が胸を張ってそう言うと、彼は嬉しそうに、そして少しだけ寂しそうに笑った。
「……もう君は、私が守らなくても生きていけるのかもしれないな」
その言葉に、俺は思わず彼の頬を両手で包み込んだ。
「馬鹿なことを言うな」
俺は彼の目をまっすぐに見つめた。
「俺はお前に守られたいんだ。お前が俺を守ってくれるから、俺は強くいられるんだ。……わかるか?」
俺の必死の言葉に、アシュレイは目を見開いた。
そして次の瞬間、彼は力強く俺を抱きしめた。
「……ああ、わかる。わかるよ、ルシアン」
彼の声は安堵で震えていた。
「すまない。また君を不安にさせてしまった」
「……わかれば、いい」
俺たちはしばらくそうして、お互いの温もりを確かめ合った。
もうすれ違うことはない。
俺たちの心は以前よりもさらに固く、強く結ばれていた。
国王陛下もアシュレイの回復を心から喜んだ。
そしてアシュレイが完全に公務に復帰した日、国王は一つの重大な決断を下した。
「……わしは王位をアシュレイに譲ることにした」
その言葉に、玉座の間にいたすべての大臣が息をのんだ。
「まだ早いのでは、と言う者もおるだろう。だがわしは見たのだ。アシュレイが不在の間、この国がどれほど見事に機能していたかを」
国王の視線が俺に向けられる。
「それはひとえにルシアン君の功績だ。そして君を妃として選び、育てたアシュレイの功績でもある。この二人になら安心してこの国を任せられる。わしはそう確信した」
俺はただ呆然と、その言葉を聞いていた。
アシュレイが皇帝に。
そして俺が皇妃に……。
「……ルシアン」
隣に立つアシュレイが、俺の手を強く握った。
見れば彼はいつもの自信に満ちた、不敵な笑みを浮かべている。
「……二人でこの国を、もっと良い国にしよう」
「……ああ」
俺はこくりとうなずいた。
もう迷いはなかった。
彼と共に歩んでいく。
そう決めたのだから。
数カ月後、戴冠式が厳かに執り行われた。
新しい皇帝アシュレイ・エル・クレスメントと、その伴侶である皇妃ルシアン・フォン・ヴァイスハイトの誕生の瞬間だった。
俺たちは教会のバルコニーから、眼下に広がる民衆の歓声に手を振って応えた。
隣に立つアシュレイの横顔が、誇らしげに輝いている。
「なあ、アシュレイ」
俺は彼にしか聞こえない声で囁いた。
「俺さ、悪役令息に転生して、本当に良かったって今、心の底から思ってるよ」
もし俺が別の誰かに転生していたら、きっと彼と出会うことはなかっただろう。
彼を愛することもなかっただろう。
「……私もだ」
アシュレイが俺の耳元で囁き返す。
「私がこの世界のただの登場人物に転生して、本当に良かった。そうでなければ君という唯一無二の宝物を、見つけることはできなかったのだから」
俺たちは顔を見合わせ、笑った。
それはゲームのシナリオでも、誰かが決めた運命でもない。
俺たちが自分たちの手で掴み取った、幸せの形。
これから俺たちは二人で、この国の未来を描いていく。
それはまるで真っ白な設計図に、二人で線を引いていくような作業だろう。
時には間違えることもあるかもしれない。
喧嘩をすることもあるかもしれない。
でもきっと大丈夫。
二人で描く未来図は、きっと誰にも真似できないような素晴らしいものになる。
俺はそう確信していた。
民衆の鳴り止まない歓声の中で、俺は新しい皇帝陛下の唇をそっと盗んだ。
驚く彼の顔を見て、俺は悪戯っぽく笑ってやった。
俺たちの新しい物語は、まだ始まったばかりなのだから。
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