BLゲームの悪役令息に転生!破滅フラグを回避したいのに、同じく転生者のヤンデレ皇太子が「やっと見つけた」と異常な執着で迫って来る。

水凪しおん

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第11話「転生者の告白」

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 リナ・ベルの断罪劇から数日後。

 俺は、レオンの離宮で、相変わらず鳥籠の鳥のような生活を送っていた。
 あの事件以来、レオンの独占欲はさらに強まり、俺が一人になる時間はほとんどなくなった。
 彼が公務に行く時でさえ、転移魔法で日に何度も様子を見に戻ってくるほどだ。

 学園では、俺は「皇太子の最愛の番」として、畏敬の念で見られるようになった。
 もう誰も、俺に軽々しく声をかけてくる者はいない。
 平穏といえば平穏だが、それは俺が望んでいた種類の平穏ではなかった。

 その日の夜、俺たちは寝室のバルコニーで、並んで夜空を眺めていた。
 星々が、宝石のように瞬いている。

「レオン」

「なんだ、エリアス」

「……君は、一体何者なんだ?」

 ずっと胸の中にあった疑問を、俺はついに口にした。
 リナ・ベルの悪事を、あまりにも容易く、完璧に暴いてみせた彼。
 まるで、物語の結末を全て知っているかのような、その立ち振る舞い。
 俺の中に芽生えた仮説を、確かめずにはいられなかった。

 俺の問いに、レオンは少しだけ黙り込んだ。
 そして、夜空から俺へと視線を移し、静かに口を開いた。

「……その質問は、こう言い換えるべきだな。『お前も、俺と同じなのか?』と」

 その言葉に、俺は息を呑んだ。
 同じ……?
 まさか。

「お前は、『聖グランヴェル魔導学園の恋詩』というゲームを知っているな?」

 心臓が、大きく跳ねた。
 やはり、そうだ。
 俺の予感は、当たっていた。

「どうして……それを……」

「俺も、お前と同じだからだ。あのゲームを、何度も、何度も……飽きるほどプレイした、ただのプレイヤーだった」

 レオンの告白は、俺の想像を絶するものだった。
 彼もまた、俺と同じ転生者。

「信じられない……。君が、あのレオンハルトが……」

「ああ。最初は、お前と同じように混乱したさ。だが、すぐに理解した。ここは、俺が望んだ世界なのだと」

 レオンは、遠い目をして語り始めた。
 彼は、前世でこのゲームの全ての攻略対象を、全てのルートでクリアしたのだという。

「ハッピーエンドも、バッドエンドも、全て見た。だが、どの結末にも、俺は満足できなかった」

「……どうしてなんだ?」

「どのルートでも、必ず一人の男が不幸になるからだ」

 彼の視線が、俺をまっすぐに射抜く。

「悪役令息、エリアス・フォン・アルドリング。お前だ」

「……!」

「お前は、いつも最後に断罪され、全てを失う。ヒロインと攻略対象が幸せになるための、ただの踏み台として。それが、俺にはどうしても許せなかった」

 彼の声には、深い悔恨と、そして激しい怒りが込められていた。

「何度も周回プレイを重ねるうちに、俺の心は、ヒロインでも他の攻略対象でもなく、ただ一人、お前にだけ向かっていった。手に入らないからこそ、欲しくてたまらなくなった。ゲームの中では、決して攻略することのできない、唯一の存在。それが、お前だったんだ、エリアス」

 だから、彼はこの世界に転生した時、決めたのだという。
 今度こそ、ゲームのシナリオなどクソ喰らえだ、と。
 自分の全てを懸けて、エリアス・フォン・アルドリングを、絶対に手に入れるのだ、と。

「俺が最初からお前に執着したのも、ヒロインを無視したのも、全てはそのためだ。お前を確実に俺のものにするための、計画だった」

「じゃあ、俺が破滅フラグを回避しようと必死になっていたのを、君は……」

「ああ。全て知っていた。必死に俺から逃げようとするお前が、可愛くて仕方がなかったよ」

 レオンは、心底楽しそうに笑った。
 俺は、全身の力が抜けていくのを感じた。
 俺の奮闘は、全て彼の手のひらの上で転がされていたに過ぎなかったのだ。

「ひどい……。なんて奴だ、君は……」

「そうだな。俺は、お前を手に入れるためなら、どんな汚い手でも使う。俺は、そういう男だ」

 彼は俺の身体を引き寄せ、強く抱きしめた。

「だが、これだけは信じてくれ。俺のお前への気持ちは、本物だ。ゲームのキャラクターへの執着なんかじゃない。俺は、魂の底から、エリアス、お前を愛している」

 耳元で囁かれた、真摯な愛の告白。
 もう、彼から逃げることはできない。
 いや、逃げたいとすら、思わなくなっている自分に気づいた。

 俺が転生したことも、彼が転生したことも、全ては俺たちがここで出会い、結ばれるための運命だったのかもしれない。
 ゲームのシナリオを越えた、俺たちだけの物語。

 俺は、彼の背中にそっと腕を回した。

「……俺もだ、レオン」

 その一言で、全てが伝わったのだろう。
 レオンは、歓喜に震える声で、何度も俺の名前を呼んだ。
 そして、俺たちは、どちらからともなく唇を重ねた。

 それは、全ての誤解とすれ違いが解けた、真実の愛を誓うキスだった。
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