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第5話「芽生えた信頼と、小さな変化」
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ダリウスの城に運び込まれた俺は、すぐに彼の私室で手当を受けた。
幸い腕の傷は見た目ほど深くはなく、上質なポーションと彼の魔力が込められた包帯のおかげで、痛みはすぐに引いていった。
「すまない、迷惑をかけた」
ベッドの上で体を起こしながら俺が言うと、そばの椅子に腰かけていたダリウスは静かに首を振った。
「お前が謝ることではない。俺が守りきれなかっただけだ」
彼の赤い瞳には悔恨の色が浮かんでいた。
自分の領地で俺を危険な目に合わせたことが、彼のプライドを傷つけたのかもしれない。
「君のおかげで助かった。改めて礼を言うよ、ダリウス」
俺が彼の名を呼んで微笑むと、彼は少し驚いたように目を瞬かせ、そして気まずそうに視線を逸らした。
「さて、怪我も大したことないし、計画の続きをしようか」
俺は気を取り直して、森の呪いの核心について説明を再開した。
「あのヒュドラは想定外だったが、やはり呪いの原因は祭壇の地下にある古代の結界が弱まっていることだ。これを修復するには、竜の血を引く君の魔力を直接、結界の中枢に注ぎ込む必要がある」
それは非常に繊細で危険な作業だった。
一歩間違えば術者の魔力が暴走しかねない。
ゲームでは主人公のセドリックが持つ光の力でダリウスをサポートすることで、これを成功させていた。
だが今の俺にはそんな力はない。
あるのはゲーム知識と、彼を信じる心だけだ。
「……お前は、俺を信じると?」
ダリウスが半信半疑といった表情で俺を見た。
「もちろんだ。君にしかできないことだ。俺は宰相として君の力を信じている」
俺は彼の瞳をまっすぐに見つめて言った。
嘘偽りのない本心だった。
俺の真摯な眼差しに、ダリウスは何かを諦めたように小さくため息をついた。
「……分かった。やってみよう」
翌日、俺たちは再び祭壇跡を訪れた。
ダリウスは祭壇の中央に立ち、静かに瞳を閉じて精神を集中させる。
彼の足元から竜の紋様を描くように青白い光が溢れ出し、地面に吸い込まれていく。
俺はただ固唾をのんで見守ることしかできない。
時折ダリウスの表情が苦痛に歪む。
彼の膨大な魔力が弱った結界とせめぎ合っているのだ。
「ダリウス、しっかりしろ!」
俺は彼の名を呼び続ける。
俺の声が届いているのかは分からない。
だがそうせずにはいられなかった。
長い、長い時間が過ぎたように感じられた。
やがてダリウスの体から放たれる光が最大になったかと思うと、ふっと森全体が光に包まれた。
そして今まで森を覆っていた重苦しい瘴気が、嘘のように晴れていくのが分かった。
木々の間から太陽の光が差し込み、鳥のさえずりが聞こえてくる。
「……終わった、のか?」
魔力を使い果たしたダリウスが、その場に膝をつく。
俺は慌てて駆け寄り、彼の体を支えた。
「大丈夫か、ダリウス!」
「……ああ。問題ない」
彼は疲労困憊といった様子だったが、その赤い瞳には確かな達成感が宿っていた。
数日後、森の呪いが解けたという知らせは、すぐに領民たちの間に広まった。
城に戻る途中、領民たちが俺たちに駆け寄り、口々に感謝の言葉を述べてきた。
「宰相閣下、魔竜公様、ありがとうございます!」
「もうあの森を怖がらなくて済むんですね!」
人々がダリウスに向ける眼差しは、もはや恐怖や畏怖だけではなかった。
そこには確かに感謝と敬愛の色が混じっている。
領民たちに感謝され戸惑うダリウスの横顔を、俺は静かに見つめていた。
今まで自分の力を疎んできた彼が、人々に感謝される。
その光景は俺にとっても感慨深いものだった。
この男の力を「祝福」だと言ったのは俺だ。
そしてそれを証明できた。
彼の凍てついていた心の中に、じんわりと温かい何かが芽生え始めているのが、そのぎこちない表情から見て取れた。
幸い腕の傷は見た目ほど深くはなく、上質なポーションと彼の魔力が込められた包帯のおかげで、痛みはすぐに引いていった。
「すまない、迷惑をかけた」
ベッドの上で体を起こしながら俺が言うと、そばの椅子に腰かけていたダリウスは静かに首を振った。
「お前が謝ることではない。俺が守りきれなかっただけだ」
彼の赤い瞳には悔恨の色が浮かんでいた。
自分の領地で俺を危険な目に合わせたことが、彼のプライドを傷つけたのかもしれない。
「君のおかげで助かった。改めて礼を言うよ、ダリウス」
俺が彼の名を呼んで微笑むと、彼は少し驚いたように目を瞬かせ、そして気まずそうに視線を逸らした。
「さて、怪我も大したことないし、計画の続きをしようか」
俺は気を取り直して、森の呪いの核心について説明を再開した。
「あのヒュドラは想定外だったが、やはり呪いの原因は祭壇の地下にある古代の結界が弱まっていることだ。これを修復するには、竜の血を引く君の魔力を直接、結界の中枢に注ぎ込む必要がある」
それは非常に繊細で危険な作業だった。
一歩間違えば術者の魔力が暴走しかねない。
ゲームでは主人公のセドリックが持つ光の力でダリウスをサポートすることで、これを成功させていた。
だが今の俺にはそんな力はない。
あるのはゲーム知識と、彼を信じる心だけだ。
「……お前は、俺を信じると?」
ダリウスが半信半疑といった表情で俺を見た。
「もちろんだ。君にしかできないことだ。俺は宰相として君の力を信じている」
俺は彼の瞳をまっすぐに見つめて言った。
嘘偽りのない本心だった。
俺の真摯な眼差しに、ダリウスは何かを諦めたように小さくため息をついた。
「……分かった。やってみよう」
翌日、俺たちは再び祭壇跡を訪れた。
ダリウスは祭壇の中央に立ち、静かに瞳を閉じて精神を集中させる。
彼の足元から竜の紋様を描くように青白い光が溢れ出し、地面に吸い込まれていく。
俺はただ固唾をのんで見守ることしかできない。
時折ダリウスの表情が苦痛に歪む。
彼の膨大な魔力が弱った結界とせめぎ合っているのだ。
「ダリウス、しっかりしろ!」
俺は彼の名を呼び続ける。
俺の声が届いているのかは分からない。
だがそうせずにはいられなかった。
長い、長い時間が過ぎたように感じられた。
やがてダリウスの体から放たれる光が最大になったかと思うと、ふっと森全体が光に包まれた。
そして今まで森を覆っていた重苦しい瘴気が、嘘のように晴れていくのが分かった。
木々の間から太陽の光が差し込み、鳥のさえずりが聞こえてくる。
「……終わった、のか?」
魔力を使い果たしたダリウスが、その場に膝をつく。
俺は慌てて駆け寄り、彼の体を支えた。
「大丈夫か、ダリウス!」
「……ああ。問題ない」
彼は疲労困憊といった様子だったが、その赤い瞳には確かな達成感が宿っていた。
数日後、森の呪いが解けたという知らせは、すぐに領民たちの間に広まった。
城に戻る途中、領民たちが俺たちに駆け寄り、口々に感謝の言葉を述べてきた。
「宰相閣下、魔竜公様、ありがとうございます!」
「もうあの森を怖がらなくて済むんですね!」
人々がダリウスに向ける眼差しは、もはや恐怖や畏怖だけではなかった。
そこには確かに感謝と敬愛の色が混じっている。
領民たちに感謝され戸惑うダリウスの横顔を、俺は静かに見つめていた。
今まで自分の力を疎んできた彼が、人々に感謝される。
その光景は俺にとっても感慨深いものだった。
この男の力を「祝福」だと言ったのは俺だ。
そしてそれを証明できた。
彼の凍てついていた心の中に、じんわりと温かい何かが芽生え始めているのが、そのぎこちない表情から見て取れた。
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