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第13話「これは恋だ」
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ダリウスの過去を知り、彼の孤独に触れたあの日から、俺の中で何かが決定的に変わってしまった。
最初は生き延びるためだった。
処刑されたくない一心でラスボスである彼を懐柔しようとした。
彼の好みを調べ、彼の気を引く言葉を選び、彼が喜ぶであろう行動を計算して実行した。
全ては破滅の運命から逃れるための、計画的な行動だったはずだ。
だが今はどうだ?
執務中にふと彼のことを考えている。
彼が執務室に現れると心が安らぐのを感じる。
セドリックと彼が俺を挟んで火花を散らすと、面倒だとは思うが、同時に自分に向けられる独占欲がどうしようもなく嬉しいと感じてしまう。
そして彼が俺を絶対的に信じてくれた、あの瞬間。
牢獄の中で俺がただ一人信じていたのと同じように、彼もまた、世界中が敵に回っても俺を信じてくれた。
その事実が俺の心の最も柔らかい部分を、強く揺さぶった。
俺は気づいてしまったのだ。
彼の不器用な優しさを知るたびに、彼の深い孤独に触れるたびに、そして俺だけに向ける真っ直ぐな執着を向けられるたびに、俺の心は計画とは全く別の方向に走り出していたことに。
これは破滅回避のための演技なんかじゃない。
俺はダリウス・ナイトレイヴンという一人の男に、心から惹かれているのだ。
その自覚はまるで雷に打たれたかのような衝撃だった。
執務室で羽ペンを握ったまま、俺は完全にフリーズしていた。
(俺がダリウスを……?)
前世の俺は恋愛経験など皆無に等しかった。
最初は、破滅回避計画が揺らぐことへの焦りだと思っていた。
彼が他の誰かに興味を移せば、俺の命綱が断たれるのだから。
だが、本当にそれだけだっただろうか。
オズワルドの罠から救い出された時、心の底から安堵した。
彼の孤独な過去を知った時、胸が張り裂けそうになった。
これは計画の駒に対する感情ではない。
仕事に追われ、趣味のゲームに没頭する毎日。
ましてや相手は男性だ。
そんなこと考えたこともなかった。
だが胸に問いかけてみれば、答えはあまりにも明確だった。
彼が誰かと親しく話しているのを見ると胸がざわつく。
彼が俺にだけ見せるわずかな笑みに、心臓が跳ね上がる。
彼の隣にいたい。
彼の孤独を俺が埋めてあげたい。
そう心から願っている自分がいる。
「……これは、恋だ」
誰に言うでもなくつぶやいた言葉は、静かな執務室に吸い込まれていった。
認めてしまえば、今までのもやもやとした感情がすっと腑に落ちるようだった。
そうだ、俺は彼に恋をしていたのだ。
だがその事実は俺を新たな問題に直面させた。
俺たちの関係はあくまで利害の一致から始まったものだ。
彼が俺に向ける感情は初めて自分を理解してくれた人間への執着や信頼であって、それが恋愛感情なのかは分からない。
もし俺のこの気持ちがただの勘違いだったら?
もし彼にそのつもりが全くなかったとしたら?
今の良好な関係が壊れてしまうかもしれない。
それは俺の破滅回避計画にとっても致命的なことだった。
「どうしたものか……」
頭を抱える俺の耳に不意に、低い声が届いた。
「何を悩んでいる」
いつの間にかダリウスが俺の背後に立っていた。
驚いて振り返ると、彼は不思議そうな顔で俺の顔を覗き込んでいる。
「い、いや、何でもない! 国の予算について少しな!」
慌てて取り繕う俺の言葉にダリウスは納得していない様子だったが、それ以上は追及してこなかった。
彼はただ俺の隣の椅子に腰を下ろすと、黙って俺の顔を見つめている。
その真っ直ぐな視線に、俺の心臓はまた大きく音を立て始めた。
自覚してしまったこの想いを、俺はこれからどうすればいいのだろうか。
破滅回避という当初の目的と、芽生えてしまった恋心との間で、俺の心は複雑に揺れ動くのだった。
最初は生き延びるためだった。
処刑されたくない一心でラスボスである彼を懐柔しようとした。
彼の好みを調べ、彼の気を引く言葉を選び、彼が喜ぶであろう行動を計算して実行した。
全ては破滅の運命から逃れるための、計画的な行動だったはずだ。
だが今はどうだ?
執務中にふと彼のことを考えている。
彼が執務室に現れると心が安らぐのを感じる。
セドリックと彼が俺を挟んで火花を散らすと、面倒だとは思うが、同時に自分に向けられる独占欲がどうしようもなく嬉しいと感じてしまう。
そして彼が俺を絶対的に信じてくれた、あの瞬間。
牢獄の中で俺がただ一人信じていたのと同じように、彼もまた、世界中が敵に回っても俺を信じてくれた。
その事実が俺の心の最も柔らかい部分を、強く揺さぶった。
俺は気づいてしまったのだ。
彼の不器用な優しさを知るたびに、彼の深い孤独に触れるたびに、そして俺だけに向ける真っ直ぐな執着を向けられるたびに、俺の心は計画とは全く別の方向に走り出していたことに。
これは破滅回避のための演技なんかじゃない。
俺はダリウス・ナイトレイヴンという一人の男に、心から惹かれているのだ。
その自覚はまるで雷に打たれたかのような衝撃だった。
執務室で羽ペンを握ったまま、俺は完全にフリーズしていた。
(俺がダリウスを……?)
前世の俺は恋愛経験など皆無に等しかった。
最初は、破滅回避計画が揺らぐことへの焦りだと思っていた。
彼が他の誰かに興味を移せば、俺の命綱が断たれるのだから。
だが、本当にそれだけだっただろうか。
オズワルドの罠から救い出された時、心の底から安堵した。
彼の孤独な過去を知った時、胸が張り裂けそうになった。
これは計画の駒に対する感情ではない。
仕事に追われ、趣味のゲームに没頭する毎日。
ましてや相手は男性だ。
そんなこと考えたこともなかった。
だが胸に問いかけてみれば、答えはあまりにも明確だった。
彼が誰かと親しく話しているのを見ると胸がざわつく。
彼が俺にだけ見せるわずかな笑みに、心臓が跳ね上がる。
彼の隣にいたい。
彼の孤独を俺が埋めてあげたい。
そう心から願っている自分がいる。
「……これは、恋だ」
誰に言うでもなくつぶやいた言葉は、静かな執務室に吸い込まれていった。
認めてしまえば、今までのもやもやとした感情がすっと腑に落ちるようだった。
そうだ、俺は彼に恋をしていたのだ。
だがその事実は俺を新たな問題に直面させた。
俺たちの関係はあくまで利害の一致から始まったものだ。
彼が俺に向ける感情は初めて自分を理解してくれた人間への執着や信頼であって、それが恋愛感情なのかは分からない。
もし俺のこの気持ちがただの勘違いだったら?
もし彼にそのつもりが全くなかったとしたら?
今の良好な関係が壊れてしまうかもしれない。
それは俺の破滅回避計画にとっても致命的なことだった。
「どうしたものか……」
頭を抱える俺の耳に不意に、低い声が届いた。
「何を悩んでいる」
いつの間にかダリウスが俺の背後に立っていた。
驚いて振り返ると、彼は不思議そうな顔で俺の顔を覗き込んでいる。
「い、いや、何でもない! 国の予算について少しな!」
慌てて取り繕う俺の言葉にダリウスは納得していない様子だったが、それ以上は追及してこなかった。
彼はただ俺の隣の椅子に腰を下ろすと、黙って俺の顔を見つめている。
その真っ直ぐな視線に、俺の心臓はまた大きく音を立て始めた。
自覚してしまったこの想いを、俺はこれからどうすればいいのだろうか。
破滅回避という当初の目的と、芽生えてしまった恋心との間で、俺の心は複雑に揺れ動くのだった。
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