悪役令息に転生したのでオメガだと隠していたのに、冷徹なはずの王子に正体がバレて「お前は俺の番だ」と溺愛されています

水凪しおん

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第7話「抑えられない衝動」

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 穏やかな日々も束の間、リオネルの身体に異変が訪れた。

 体が熱い。

 婚約者としてアシュレイの側にいる時間が増えたせいだろうか。今まで抑制剤で完璧に抑え込んできたオメガとしての性が、極上のアルファであるアシュレイのフェロモンに刺激され、暴走を始めたのだ。

 これは、オメガが発情期である『ヒート』の兆候だった。

 リオネルは急いで引き出しから、常備していた強力な抑制剤を取り出した。手のひらに汗がにじむ。これまでヒートは何度か経験したが、ここまでひどい状態になったのは初めてだ。

 荒い息が漏れる。身体が内側から燃えるように熱い。頭はぐらぐらと揺れ、理性の箍が外れていく。服の下でオメガのフェロモンが分泌され始め、甘くとろけるような香りがするのが自分でもわかった。

 ヒートを抑制する薬は、オメガの性を抑え込むだけではない。フェロモンをアルファのような苦い香りに変えたり、体調を無理やりアルファとして維持する機能を持つ。

 しかし、その日は薬が効かなかった。いや、薬を飲んでも、アシュレイの強力なアルファフェロモンを間近に感じるうちに、まるで火に油を注ぐかのように身体は激しく熱を発し始めたのだ。

「…嘘だ…まだ、周期じゃないのに…」

 意識が朦朧としてくる。部屋の中には、彼から放たれる甘いフェロモンが充満していた。オメガバースの世界で、ヒート中のオメガのフェロモンを嗅いだアルファは理性を失い、オメガを求める衝動に駆られる。それは、どんなに自制心の強いアルファでも抗えない本能だった。

 リオネルは自室のベッドに倒れ込み、シーツを固く握りしめた。抑制剤をさらにもう一錠飲むが、全く効果がない。

(誰かが来たら、どうしよう)

 混乱と恐怖に、彼は浅い呼吸を繰り返した。

 そのとき、部屋の扉を叩く音と、聞き慣れた声が聞こえた。

「リオネル。書類を持ってきた」

 それは、アシュレイの声だった。彼は普段通り、冷たく事務的な声でリオネルを呼んだ。

(駄目だ、ここに来ては駄目だ)

 意識は薄れ、全身から甘いフェロモンを止めどなく放ち始めたリオネルは、その場でパニックに陥った。
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