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第34話「番の温もり(カイル視点)」
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王太子軍を退けた後、俺はすぐに城へと帰還した。
砦の事後処理は、副団長に任せれば問題ない。
俺が、今、一番会いたい人間は一人しかいなかった。
リアム。
彼が、城で俺の帰りを待っている。
そう思うだけで、戦いで昂った心が不思議と鎮まっていくのを感じた。
城に戻ると、リアムは礼拝堂で静かに祈りを捧げていた。
その後ろ姿は、どこか神々しくさえ見えた。
俺の気配に気づいたのか、彼がゆっくりと振り返る。
その青い瞳が俺の姿を捉えた瞬間、ぱあっと花が咲くように輝いた。
「カイル様…!」
彼は、俺の元へと駆け寄ってくる。
そして、ためらうことなく俺の胸にその身を預けてきた。
「お帰りなさい…!ご無事で、よかった…!」
その声は、安堵と喜びに震えていた。
俺は、彼の体を強く抱きしめ返す。
戦場から帰ってきて、こうして番が出迎えてくれる。
これが、こんなにも心を満たすものだとは知らなかった。
「ああ。ただいま、リアム」
俺は、彼の銀色の髪に顔をうずめる。
甘い花の香りが、俺の心を癒やしていく。
ふと、俺はリアムの顔色が少し悪いことに気づいた。
目の下には、うっすらと隈ができている。
「…眠っていないのか」
「え…」
「お前、俺が出陣してから、ずっとここで祈っていたのか?」
彼は、ばつが悪そうに視線を逸らした。
「…少しでも、カイル様のお力になれれば、と…」
彼は、遠く離れた戦場にいる俺や騎士たちのために、自分の浄化の魔力を祈りと共に送り続けてくれていたのだ。
だから、俺たちは誰一人大きな怪我をすることなく、戦いを終えることができたのかもしれない。
なんて、健気でいじらしいのだろう。
だが同時に、自分の身を顧みないその危うさが、ひどく心配になった。
「馬鹿者」
俺は、彼の頬を両手で包み込んだ。
「お前のその力は、お前自身の命を削るものだということを忘れたか」
「でも…」
「俺のために、お前が傷つくことなど俺は望んでいない。俺が、お前に望むのはただ一つだ」
俺は、彼の瞳をまっすぐに見つめた。
「お前が、笑顔で、健やかに俺のそばにいてくれること。ただ、それだけでいい」
俺の言葉に、リアムの青い瞳が潤んでいく。
「カイル様…」
「分かったら、もう無茶はするな」
「…はい」
彼は、素直にこくりとうなずいた。
その仕草が、たまらなく愛おしくて。
俺は、もう自分の気持ちを抑えることができなかった。
今、この瞬間に、彼に伝えなければならない。
「リアム」
「はい」
「今回の戦いで、俺ははっきりと分かったことがある」
俺は、一度言葉を切った。
覚悟を決めて、彼の心に踏み込む。
「俺は、お前がいないと駄目らしい」
「え…?」
「お前がいない世界など、俺にとってはなんの価値もない。お前を守れるなら、俺は国を敵に回すことも、世界を敵に回すことも厭わない」
だから、と俺は続けた。
「俺の、そばにいてくれないか。これからは、ただの保護者としてではなく…」
俺の、たった一人の、番として。
そう、告げようとした、その時だった。
リアムが、そっと人差し指を俺の唇に当ててきた。
彼の、驚くべき行動に、俺は言葉を失う。
彼は少し赤らんだ顔で、でも、どこまでも真剣な瞳で俺を見上げていた。
そして、震える声でこう言ったのだ。
「その言葉の、続きは…全てが終わってから、聞かせてください」
「リアム…?」
「今は、まだその時ではないと、思うから…」
彼は、まだ王都との問題が完全に解決していないことを、気にしているのだ。
自分の幸せよりも、俺の立場を優先しようとしている。
どこまで、優しく、思慮深いのだろうか。
俺は、彼のそのいじらしさに、胸が締め付けられる思いだった。
「…分かった」
俺は、彼の気持ちを尊重することにした。
「だが、覚えておけ。全てが終わったら、もう逃がしはしないからな」
俺がそう言って、少し意地悪く笑うと。
彼は、顔を真っ赤にしながらも、今までで一番美しい笑顔でうなずいてくれた。
その笑顔を、俺は一生かけて守り抜いてみせる。
心に、再び固く誓った。
砦の事後処理は、副団長に任せれば問題ない。
俺が、今、一番会いたい人間は一人しかいなかった。
リアム。
彼が、城で俺の帰りを待っている。
そう思うだけで、戦いで昂った心が不思議と鎮まっていくのを感じた。
城に戻ると、リアムは礼拝堂で静かに祈りを捧げていた。
その後ろ姿は、どこか神々しくさえ見えた。
俺の気配に気づいたのか、彼がゆっくりと振り返る。
その青い瞳が俺の姿を捉えた瞬間、ぱあっと花が咲くように輝いた。
「カイル様…!」
彼は、俺の元へと駆け寄ってくる。
そして、ためらうことなく俺の胸にその身を預けてきた。
「お帰りなさい…!ご無事で、よかった…!」
その声は、安堵と喜びに震えていた。
俺は、彼の体を強く抱きしめ返す。
戦場から帰ってきて、こうして番が出迎えてくれる。
これが、こんなにも心を満たすものだとは知らなかった。
「ああ。ただいま、リアム」
俺は、彼の銀色の髪に顔をうずめる。
甘い花の香りが、俺の心を癒やしていく。
ふと、俺はリアムの顔色が少し悪いことに気づいた。
目の下には、うっすらと隈ができている。
「…眠っていないのか」
「え…」
「お前、俺が出陣してから、ずっとここで祈っていたのか?」
彼は、ばつが悪そうに視線を逸らした。
「…少しでも、カイル様のお力になれれば、と…」
彼は、遠く離れた戦場にいる俺や騎士たちのために、自分の浄化の魔力を祈りと共に送り続けてくれていたのだ。
だから、俺たちは誰一人大きな怪我をすることなく、戦いを終えることができたのかもしれない。
なんて、健気でいじらしいのだろう。
だが同時に、自分の身を顧みないその危うさが、ひどく心配になった。
「馬鹿者」
俺は、彼の頬を両手で包み込んだ。
「お前のその力は、お前自身の命を削るものだということを忘れたか」
「でも…」
「俺のために、お前が傷つくことなど俺は望んでいない。俺が、お前に望むのはただ一つだ」
俺は、彼の瞳をまっすぐに見つめた。
「お前が、笑顔で、健やかに俺のそばにいてくれること。ただ、それだけでいい」
俺の言葉に、リアムの青い瞳が潤んでいく。
「カイル様…」
「分かったら、もう無茶はするな」
「…はい」
彼は、素直にこくりとうなずいた。
その仕草が、たまらなく愛おしくて。
俺は、もう自分の気持ちを抑えることができなかった。
今、この瞬間に、彼に伝えなければならない。
「リアム」
「はい」
「今回の戦いで、俺ははっきりと分かったことがある」
俺は、一度言葉を切った。
覚悟を決めて、彼の心に踏み込む。
「俺は、お前がいないと駄目らしい」
「え…?」
「お前がいない世界など、俺にとってはなんの価値もない。お前を守れるなら、俺は国を敵に回すことも、世界を敵に回すことも厭わない」
だから、と俺は続けた。
「俺の、そばにいてくれないか。これからは、ただの保護者としてではなく…」
俺の、たった一人の、番として。
そう、告げようとした、その時だった。
リアムが、そっと人差し指を俺の唇に当ててきた。
彼の、驚くべき行動に、俺は言葉を失う。
彼は少し赤らんだ顔で、でも、どこまでも真剣な瞳で俺を見上げていた。
そして、震える声でこう言ったのだ。
「その言葉の、続きは…全てが終わってから、聞かせてください」
「リアム…?」
「今は、まだその時ではないと、思うから…」
彼は、まだ王都との問題が完全に解決していないことを、気にしているのだ。
自分の幸せよりも、俺の立場を優先しようとしている。
どこまで、優しく、思慮深いのだろうか。
俺は、彼のそのいじらしさに、胸が締め付けられる思いだった。
「…分かった」
俺は、彼の気持ちを尊重することにした。
「だが、覚えておけ。全てが終わったら、もう逃がしはしないからな」
俺がそう言って、少し意地悪く笑うと。
彼は、顔を真っ赤にしながらも、今までで一番美しい笑顔でうなずいてくれた。
その笑顔を、俺は一生かけて守り抜いてみせる。
心に、再び固く誓った。
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