14 / 16
第13話「吹雪の夜の奇跡と、三人目の家族」
季節が再び巡り、冬が訪れた頃。
臨月を迎えた私は、大きなお腹を抱えて暖炉の前の揺り椅子に座っていた。
外は猛吹雪だ。窓ガラスがガタガタと音を立て、風の音が唸りを上げている。
「……予定日はもう少し先のはずなんだけど」
お腹の張りが強くなっている気がする。
グリーグ様は、私の隣で心配そうに本を読んであげていた。胎教に良いと聞いて、毎日こうして物語を聞かせているのだ。
その時、ズキリとした痛みが走った。
「っ……!」
「ジュリアン!? どうした!」
グリーグ様が本を放り出し、私の顔を覗き込む。
「……陣痛かもしれません。少し早いけど……」
痛みの間隔が、少しずつ短くなっていく。
彼は顔色を変え、すぐに医師と産婆を呼びに走った。
嵐の夜の出産となった。
外の吹雪よりも激しい痛みが、波のように押し寄せてくる。
「うぅっ……痛い、痛い……!」
「頑張れ、ジュリアン! 俺がついている!」
グリーグ様はずっと私の手を握りしめ、汗を拭いてくれた。彼の手も冷や汗で濡れている。
医師と産婆が懸命に処置をする中、私は意識が朦朧としていた。
痛みで気が遠くなりそうになるたび、グリーグ様の声が私を現実に引き戻してくれた。
「息を吸って! もう少しだ、頭が見えている!」
「がんばれ、あと少しだ!」
私は渾身の力を込めていきんだ。
――オギャア! オギャア!
元気な産声が、部屋の中に響き渡った。
一瞬、時が止まったような静寂が訪れ、次に歓喜の声が上がった。
「生まれました! 元気な男の子です!」
産婆が、きれいに産湯を使った赤ちゃんを抱いて見せてくれた。
真っ赤な顔で、一生懸命に泣いている小さな命。
黒い髪に、宝石のようなアメジスト色の瞳。
グリーグ様の髪色と、私の瞳の色を受け継いだ子供だ。
「……ジュリアン、よくやった。本当に、よく頑張った」
グリーグ様が、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で私を抱きしめた。
私も涙が止まらない。
産婆から赤ちゃんを受け取ると、ずっしりとした命の重みが腕に伝わってきた。
「……こんにちは、赤ちゃん。やっと会えたね」
赤ちゃんは泣き止み、私の顔をじっと見つめた。そして、小さな手で私の指をぎゅっと握った。
その瞬間、世界中のどんな宝物よりも尊いものが、ここにあると感じた。
「名前は、もう決めているんだろう?」
グリーグ様が優しく尋ねた。
「はい。……レオン。レオン・ヴォルファートです」
「レオンか。……強く、勇敢な名前だ。いい名前だ」
彼は大きな人差し指で、レオンの頬をそっとつついた。
その夜、吹雪は止み、空には美しいオーロラが広がった。
まるで、新しい家族の誕生を祝福するかのように。
私たちは三人で寄り添い、眠りについた。
これが、私たちの新しい始まりだった。
臨月を迎えた私は、大きなお腹を抱えて暖炉の前の揺り椅子に座っていた。
外は猛吹雪だ。窓ガラスがガタガタと音を立て、風の音が唸りを上げている。
「……予定日はもう少し先のはずなんだけど」
お腹の張りが強くなっている気がする。
グリーグ様は、私の隣で心配そうに本を読んであげていた。胎教に良いと聞いて、毎日こうして物語を聞かせているのだ。
その時、ズキリとした痛みが走った。
「っ……!」
「ジュリアン!? どうした!」
グリーグ様が本を放り出し、私の顔を覗き込む。
「……陣痛かもしれません。少し早いけど……」
痛みの間隔が、少しずつ短くなっていく。
彼は顔色を変え、すぐに医師と産婆を呼びに走った。
嵐の夜の出産となった。
外の吹雪よりも激しい痛みが、波のように押し寄せてくる。
「うぅっ……痛い、痛い……!」
「頑張れ、ジュリアン! 俺がついている!」
グリーグ様はずっと私の手を握りしめ、汗を拭いてくれた。彼の手も冷や汗で濡れている。
医師と産婆が懸命に処置をする中、私は意識が朦朧としていた。
痛みで気が遠くなりそうになるたび、グリーグ様の声が私を現実に引き戻してくれた。
「息を吸って! もう少しだ、頭が見えている!」
「がんばれ、あと少しだ!」
私は渾身の力を込めていきんだ。
――オギャア! オギャア!
元気な産声が、部屋の中に響き渡った。
一瞬、時が止まったような静寂が訪れ、次に歓喜の声が上がった。
「生まれました! 元気な男の子です!」
産婆が、きれいに産湯を使った赤ちゃんを抱いて見せてくれた。
真っ赤な顔で、一生懸命に泣いている小さな命。
黒い髪に、宝石のようなアメジスト色の瞳。
グリーグ様の髪色と、私の瞳の色を受け継いだ子供だ。
「……ジュリアン、よくやった。本当に、よく頑張った」
グリーグ様が、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で私を抱きしめた。
私も涙が止まらない。
産婆から赤ちゃんを受け取ると、ずっしりとした命の重みが腕に伝わってきた。
「……こんにちは、赤ちゃん。やっと会えたね」
赤ちゃんは泣き止み、私の顔をじっと見つめた。そして、小さな手で私の指をぎゅっと握った。
その瞬間、世界中のどんな宝物よりも尊いものが、ここにあると感じた。
「名前は、もう決めているんだろう?」
グリーグ様が優しく尋ねた。
「はい。……レオン。レオン・ヴォルファートです」
「レオンか。……強く、勇敢な名前だ。いい名前だ」
彼は大きな人差し指で、レオンの頬をそっとつついた。
その夜、吹雪は止み、空には美しいオーロラが広がった。
まるで、新しい家族の誕生を祝福するかのように。
私たちは三人で寄り添い、眠りについた。
これが、私たちの新しい始まりだった。
あなたにおすすめの小説
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています
水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。
そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。
アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。
しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった!
リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。
隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか?
これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。
もふもふ聖獣様に拾われた不遇オメガは、空に浮かぶ島で運命の番として極上の溺愛を注がれる
水凪しおん
BL
「オメガがいるから、村に災いが降りかかったのだ」
理不尽な理由で村人たちから忌み嫌われ、深い雪の森へと生贄として捨てられた十九歳の青年、ルカ。
凍える寒さの中、絶望に目を閉じた彼の前に現れたのは、見上げるほど巨大で美しい「白銀の狼」だった。
伝説の聖獣である狼に拾われたルカが目を覚ましたのは、下界の汚れから切り離された雲海に浮かぶ美しい島。
狼は人間の姿——流れるような銀髪と黄金の瞳を持つ壮麗なアルファの偉丈夫、レオンへと変化し、ルカにこう告げる。
「君は、俺の運命の番だ」
これまで虐げられ、自分を穢れた存在だと思い込んでいたルカは、レオンの甘く深いアルファの香りと、恐ろしいほどの優しさに戸惑うばかり。
温かい食事、美しい庭園、そして決して自分を傷つけない大きな手。
極上の溺愛に包まれるうち、ルカの心に固く巻きついていた冷たい恐怖の糸は、少しずつほどけていく。
そして、ルカを捨てた村人たちが強欲にも島へ足を踏み入れたとき、ルカは自らの意志とオメガとしての本当の力に目覚める——。
これは、孤独だった不遇のオメガが、伝説の聖獣の番として永遠の幸せと自分の居場所を見つけるまでの、心温まる溺愛ファンタジー。
悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます
水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。
しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。
このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。
そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。
俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。
順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。
家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。
だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。
偽りベータの宮廷薬師は、氷の宰相に匂いを嗅がれ溺愛される
水凪しおん
BL
「お前の匂いがないと、私は息ができない」
宮廷薬師のルチアーノは、オメガであることを隠し、自作の抑制薬でベータと偽って生きてきた。
しかしある日、冷徹無比と恐れられる「氷の宰相」アレクセイにその秘密がバレてしまう。
処刑を覚悟したルチアーノだったが、アレクセイが求めたのは、ルチアーノの身体から香る「匂い」だった!?
強すぎる能力ゆえに感覚過敏に苦しむ宰相と、彼の唯一の安らぎとなった薬師。
秘密の共有から始まる、契約と執着のオメガバース・ロマンス!
追放された『無能』オメガ、実は最強の薬師でした。~辺境でSSS級冒険者に溺愛され、実家の薬屋をざまぁします~
水凪しおん
BL
「お前のようなフェロモンの薄い無能オメガは、我が家には不要だ!」
実家の名門薬店『白龍堂』を追放された白蓮華(ハク・レンカ)。
しかし彼には、植物の「声」が聞こえるという秘密の能力があった。
傷心のまま辿り着いた辺境の村で、蓮華は小さな薬屋を開業する。
そこで倒れていた瀕死の男を助けたことが、彼の運命を大きく変えることに――。
その男は、国最強と謳われるSSS級冒険者(アルファ)、蒼龍牙(ソウ・リュウガ)だった!
「俺の古傷を治せるのは、お前の薬だけだ」
無自覚な天才薬師(オメガ)×強面スパダリ冒険者(アルファ)。
辺境でのんびり薬屋を営むはずが、いつの間にか国中から注目され、実家を見返す大逆転劇へ発展!?
偽りの罪で追放された俺の【緑の手】は伝説級の力だった。不毛の地で運命の番に溺愛され、世界一の穀倉地帯を作って幸せになります
水凪しおん
BL
「君はもう、一人じゃない」
偽りの罪で全てを奪われ、国で最も不毛な土地へ追放された美貌の公爵令息、エリアス。彼が持つ【緑の手】の力は「地味で役立たない」と嘲笑され、その心は凍てついていた。
追放の地で彼を待っていたのは、熊のような大男の領主カイ。無骨で飾らない、けれど太陽のように温かいアルファだった。
カイの深い愛に触れ、エリアスは自らの能力が持つ、伝説級の奇跡の力に目覚めていく。痩せた大地は豊かな緑に覆われ、絶望は希望へと変わる。これは、運命の番と出会い、本当の居場所と幸福を見つけるまでの、心の再生の物語。
王都が犯した過ちの代償を払う時、二人が選ぶ未来とは――。
ざまぁあり、溺愛あり、美味しい作物たっぷりの異世界スローライフ・ボーイズラブ、ここに開幕。
温泉旅館の跡取り、死んだら呪いの沼に転生してた。スキルで温泉郷を作ったら、呪われた冷血公爵がやってきて胃袋と心を掴んで離さない
水凪しおん
BL
命を落とした温泉旅館の跡取り息子が転生したのは、人々から忌み嫌われる「呪いの沼」だった。
終わりなき孤独と絶望の中、彼に与えられたのは【万物浄化】と【源泉開発】のスキル。
自らを浄化し、極上の温泉を湧き出させた彼の前に現れたのは、呪いにより心と体を凍てつかせた冷血公爵クロード。
半信半疑で湯に浸かった公爵は、生まれて初めての「安らぎ」に衝撃を受ける。
「この温泉郷(ばしょ)ごと、君が欲しい」
孤独だった元・沼の青年アオイと、温もりを知らなかった冷血公爵クロード。
湯けむりの向こうで出会った二人が、最高の温泉郷を作り上げながら、互いの心の傷を癒やし、かけがえのない愛を見つけていく。
読む者の心まですべて解きほぐす、極上の癒やしと溺愛のファンタジーロマンス、ここに開湯。