2 / 5
第1話「森の檻、花の溜息」
しおりを挟む
鬱蒼と茂る木々の隙間から、細い光の束がカーテンのように降り注いでいる。湿り気を帯びた苔の匂いと、腐葉土の深い香り。それらが混ざり合う森の空気は重く、肺に入れるたびに身体の芯まで冷やしていくようだった。
エリアルは古びた木の机に肘をつき、震える指先で小さなガラス瓶を見つめていた。瓶の中では、琥珀色の液体が揺れている。それは街の薬屋で手に入れた、オメガの発情を抑えるための抑制剤だ。
本来ならば、これを一本飲み干せば、体内で暴れ回る熱は嘘のように引くはずだった。呼吸は整い、思考はクリアになり、ただの人間として一日を過ごせるはずなのだ。
けれど、エリアルの身体は違った。
彼はゆっくりと、祈るような気持ちで瓶の栓を抜いた。鼻を刺す独特の薬臭さが広がる。一気に煽るようにして飲み干すと、喉の奥がカッと熱くなった。
苦い。舌が痺れるほどの苦味だ。
エリアルは目を閉じ、効果が現れるのを待った。一秒、十秒、一分。
やがて、彼は深いため息をついた。
効果がない。
身体の奥底、へその下のあたりでくすぶり続けている熾火のような熱は、消えるどころか、じりじりとその範囲を広げているようだった。肌が粟立ち、指先が微かに痺れる。視界の端がわずかに揺らぎ、世界が水彩画のように滲んで見える。
「……また、だめか」
つぶやく声は、枯れた葉のように乾いていた。
エリアルは空になった小瓶を机の端に置いた。そこには既に、何本もの空き瓶が並んでいる。どれも高価な薬だったが、彼にとってはただの色付きの水と変わらなかった。
彼の身体は、あらゆる薬を拒絶する。まるで、この身に宿る呪いを解くことなど許さないと言わんばかりに。
エリアルはふらつく足取りで窓辺へと向かった。窓の外には、彼が丹精込めて育てている薬草畑が広がっている。
青、紫、黄色。色とりどりの花々が風に揺れている。彼はその美しさに目を細めつつも、胸の奥に鉛のような重さを感じていた。
この森は、彼の家であり、職場であり、そして檻だった。
エリアルの身体から放たれる香りは、あまりにも特殊すぎた。それは万病を癒やす奇跡の光であり、同時に、理性のタガを外させる甘い毒でもある。
かつて、彼がまだ自分の特異さを知らなかった頃、不用意に街へ出たことがあった。その時、周囲のアルファたちがどのような反応を示したか、思い出すだけで背筋が凍る。
充血した目。荒い呼吸。まるで飢えた獣を見るような、粘り着く視線。
彼らは理性を失い、エリアルを奪い合おうとした。あの恐怖は、今も悪夢となって彼を苛む。
だから、エリアルは逃げた。誰も来ない、誰も自分を見つけられない、この深い森の奥へと。
「……誰にも、迷惑をかけたくないのに」
窓枠に額を押し付け、エリアルは独り言を言った。
熱い。身体が芯から熱い。
抑制剤の効かない発情期が近づいている予兆だった。これから数日間、彼は誰にも触れられることのない情欲の波に、たった一人で耐え続けなければならない。
自分の肌を自分で抱きしめるように、エリアルは両腕を擦った。
その時、風向きが変わった。
開け放たれた窓から、森の香りに混じって、彼の鼻腔をくすぐるものがあった。
それは、彼自身が放つ香りだった。
甘く、脳が痺れるような薬草と花の香り。完熟した果実が崩れる寸前のような、濃厚で妖艶な匂い。
自分の匂いなのに、それに当てられて頭がくらくらする。
癒やしの力を持つこの香りは、皮肉なことに、持ち主であるエリアル自身には何の救いももたらさない。ただ、孤独を際立たせるだけだ。
(この香りが、誰かに届いてしまったら……)
不安が胸をよぎる。この森には強力な結界を張っているつもりだが、それでも完全に遮断できているわけではない。
もしも、この香りを嗅ぎつけた獣や、あるいは人間が迷い込んできたとしたら。
エリアルは身震いをした。
そんなことはあってはならない。自分はここで、誰にも知られず、静かに朽ちていくべき存在なのだ。
彼は窓を閉め、鍵をかけた。外界とのつながりを絶つように。
だが、閉ざされた室内には、彼自身の香りがより一層濃く充満していく。
逃げ場など、どこにもなかった。
エリアルは部屋の隅にある粗末なベッドに倒れ込んだ。古びたシーツを頭から被り、小さく丸まる。
世界から隠れてしまいたかった。
自分の存在そのものが、間違いであるかのように感じられた。
涙が滲み、枕を濡らす。
外では、鳥たちのさえずりさえ聞こえなくなっていた。まるで森全体が、これから訪れる何かを予感して、息を潜めているかのようだった。
孤独の檻の中で、エリアルはただ、嵐が過ぎ去るのを待つ小動物のように震えていた。
その静寂を破る足音が、すぐそこまで迫っていることになど、気づきもしないまま。
***
森の入り口付近。
そこには、数頭の馬と、金属の鎧をまとった男たちの姿があった。
「団長、この森は……妙ですね」
若い騎士が、不安げに周囲を見回しながら言った。
先頭を進む男、ジークフリートは手綱を握る手を休めず、鋭い視線を前方に向けていた。
「ああ。空気が違う」
ジークフリートの声は低く、よく響く。
彼の身体を包む白銀の鎧は、使い込まれているが手入れが行き届いており、木漏れ日を反射して鈍く光っている。
整った顔立ちには、常に厳格な色が浮かんでいるが、その奥にある瞳は深い湖のように静かだ。
だが、今、その瞳にはわずかな警戒心が宿っていた。
王都では、原因不明の流行り病が猛威を振るっていた。高熱と激痛をもたらし、多くの民が苦しんでいる。医師たちの懸命な治療も虚しく、特効薬は見つかっていない。
そんな中、古い文献に記された「森の奥に住む聖なる癒やし手」の伝説だけが、唯一の希望だった。
王命を受けたジークフリート率いる精鋭部隊は、藁にもすがる思いでこの森へ足を踏み入れたのだ。
「魔物の気配もありません。静かすぎます」
「油断するな。静けさは、時に雄弁に危険を語る」
ジークフリートは短く答え、腰の剣に手を添えた。
その時だった。
風に乗って、微かな、しかし強烈な香りが漂ってきたのは。
「……なんだ、この匂いは」
部下の一人が鼻をひくつかせた。
ジークフリートもまた、その香りを感じ取っていた。
それは、今まで嗅いだことのない香りだった。
清涼な薬草のようでいて、胸の奥を鷲掴みにするような甘さがある。脳髄に直接響くような、抗いがたい引力。
(これは……)
ジークフリートの心臓が、ドクリと大きく跳ねた。
騎士として鍛え上げられた強靭な精神が、一瞬だけ揺らいだ。
ただの良い匂いではない。これは、もっと根源的な、生物としての本能を揺さぶる何かだ。
「団長、なんだか……熱くなってきました」
後ろの騎士が、妙に艶っぽい声で言った。
振り返ると、部下たちの目が少し潤み、頬が紅潮しているのが見て取れた。
「口を閉じろ。鼻で呼吸をするな」
ジークフリートは鋭く命じた。
「正気を保て。何かに、誘われている」
彼は自分自身にも言い聞かせるように言った。
額にじわりと汗が滲む。血管の中を流れる血が、沸騰したように騒ぎ出している。
行かなければならない。この香りの発生源へ。
そこに何があるのかはわからない。だが、本能が叫んでいる。
そこに行けば、求めている「答え」があると。
そして、それ以上に危険な「何か」もまた、そこで待っていると。
ジークフリートは愛馬の腹を蹴った。
馬もまた、何かに怯えるように、あるいは興奮するように鼻息を荒くしている。
「行くぞ。遅れるな」
一行は速度を上げ、森の深部へと突き進んでいった。
その先に待ち受ける運命の出会いが、国を、そして彼ら自身の人生を大きく変えることになるなどとは知らずに。
静謐な森は、彼らを飲み込むように深く、暗く、口を開けていた。
甘い毒のような香りを、道しるべとして。
エリアルは古びた木の机に肘をつき、震える指先で小さなガラス瓶を見つめていた。瓶の中では、琥珀色の液体が揺れている。それは街の薬屋で手に入れた、オメガの発情を抑えるための抑制剤だ。
本来ならば、これを一本飲み干せば、体内で暴れ回る熱は嘘のように引くはずだった。呼吸は整い、思考はクリアになり、ただの人間として一日を過ごせるはずなのだ。
けれど、エリアルの身体は違った。
彼はゆっくりと、祈るような気持ちで瓶の栓を抜いた。鼻を刺す独特の薬臭さが広がる。一気に煽るようにして飲み干すと、喉の奥がカッと熱くなった。
苦い。舌が痺れるほどの苦味だ。
エリアルは目を閉じ、効果が現れるのを待った。一秒、十秒、一分。
やがて、彼は深いため息をついた。
効果がない。
身体の奥底、へその下のあたりでくすぶり続けている熾火のような熱は、消えるどころか、じりじりとその範囲を広げているようだった。肌が粟立ち、指先が微かに痺れる。視界の端がわずかに揺らぎ、世界が水彩画のように滲んで見える。
「……また、だめか」
つぶやく声は、枯れた葉のように乾いていた。
エリアルは空になった小瓶を机の端に置いた。そこには既に、何本もの空き瓶が並んでいる。どれも高価な薬だったが、彼にとってはただの色付きの水と変わらなかった。
彼の身体は、あらゆる薬を拒絶する。まるで、この身に宿る呪いを解くことなど許さないと言わんばかりに。
エリアルはふらつく足取りで窓辺へと向かった。窓の外には、彼が丹精込めて育てている薬草畑が広がっている。
青、紫、黄色。色とりどりの花々が風に揺れている。彼はその美しさに目を細めつつも、胸の奥に鉛のような重さを感じていた。
この森は、彼の家であり、職場であり、そして檻だった。
エリアルの身体から放たれる香りは、あまりにも特殊すぎた。それは万病を癒やす奇跡の光であり、同時に、理性のタガを外させる甘い毒でもある。
かつて、彼がまだ自分の特異さを知らなかった頃、不用意に街へ出たことがあった。その時、周囲のアルファたちがどのような反応を示したか、思い出すだけで背筋が凍る。
充血した目。荒い呼吸。まるで飢えた獣を見るような、粘り着く視線。
彼らは理性を失い、エリアルを奪い合おうとした。あの恐怖は、今も悪夢となって彼を苛む。
だから、エリアルは逃げた。誰も来ない、誰も自分を見つけられない、この深い森の奥へと。
「……誰にも、迷惑をかけたくないのに」
窓枠に額を押し付け、エリアルは独り言を言った。
熱い。身体が芯から熱い。
抑制剤の効かない発情期が近づいている予兆だった。これから数日間、彼は誰にも触れられることのない情欲の波に、たった一人で耐え続けなければならない。
自分の肌を自分で抱きしめるように、エリアルは両腕を擦った。
その時、風向きが変わった。
開け放たれた窓から、森の香りに混じって、彼の鼻腔をくすぐるものがあった。
それは、彼自身が放つ香りだった。
甘く、脳が痺れるような薬草と花の香り。完熟した果実が崩れる寸前のような、濃厚で妖艶な匂い。
自分の匂いなのに、それに当てられて頭がくらくらする。
癒やしの力を持つこの香りは、皮肉なことに、持ち主であるエリアル自身には何の救いももたらさない。ただ、孤独を際立たせるだけだ。
(この香りが、誰かに届いてしまったら……)
不安が胸をよぎる。この森には強力な結界を張っているつもりだが、それでも完全に遮断できているわけではない。
もしも、この香りを嗅ぎつけた獣や、あるいは人間が迷い込んできたとしたら。
エリアルは身震いをした。
そんなことはあってはならない。自分はここで、誰にも知られず、静かに朽ちていくべき存在なのだ。
彼は窓を閉め、鍵をかけた。外界とのつながりを絶つように。
だが、閉ざされた室内には、彼自身の香りがより一層濃く充満していく。
逃げ場など、どこにもなかった。
エリアルは部屋の隅にある粗末なベッドに倒れ込んだ。古びたシーツを頭から被り、小さく丸まる。
世界から隠れてしまいたかった。
自分の存在そのものが、間違いであるかのように感じられた。
涙が滲み、枕を濡らす。
外では、鳥たちのさえずりさえ聞こえなくなっていた。まるで森全体が、これから訪れる何かを予感して、息を潜めているかのようだった。
孤独の檻の中で、エリアルはただ、嵐が過ぎ去るのを待つ小動物のように震えていた。
その静寂を破る足音が、すぐそこまで迫っていることになど、気づきもしないまま。
***
森の入り口付近。
そこには、数頭の馬と、金属の鎧をまとった男たちの姿があった。
「団長、この森は……妙ですね」
若い騎士が、不安げに周囲を見回しながら言った。
先頭を進む男、ジークフリートは手綱を握る手を休めず、鋭い視線を前方に向けていた。
「ああ。空気が違う」
ジークフリートの声は低く、よく響く。
彼の身体を包む白銀の鎧は、使い込まれているが手入れが行き届いており、木漏れ日を反射して鈍く光っている。
整った顔立ちには、常に厳格な色が浮かんでいるが、その奥にある瞳は深い湖のように静かだ。
だが、今、その瞳にはわずかな警戒心が宿っていた。
王都では、原因不明の流行り病が猛威を振るっていた。高熱と激痛をもたらし、多くの民が苦しんでいる。医師たちの懸命な治療も虚しく、特効薬は見つかっていない。
そんな中、古い文献に記された「森の奥に住む聖なる癒やし手」の伝説だけが、唯一の希望だった。
王命を受けたジークフリート率いる精鋭部隊は、藁にもすがる思いでこの森へ足を踏み入れたのだ。
「魔物の気配もありません。静かすぎます」
「油断するな。静けさは、時に雄弁に危険を語る」
ジークフリートは短く答え、腰の剣に手を添えた。
その時だった。
風に乗って、微かな、しかし強烈な香りが漂ってきたのは。
「……なんだ、この匂いは」
部下の一人が鼻をひくつかせた。
ジークフリートもまた、その香りを感じ取っていた。
それは、今まで嗅いだことのない香りだった。
清涼な薬草のようでいて、胸の奥を鷲掴みにするような甘さがある。脳髄に直接響くような、抗いがたい引力。
(これは……)
ジークフリートの心臓が、ドクリと大きく跳ねた。
騎士として鍛え上げられた強靭な精神が、一瞬だけ揺らいだ。
ただの良い匂いではない。これは、もっと根源的な、生物としての本能を揺さぶる何かだ。
「団長、なんだか……熱くなってきました」
後ろの騎士が、妙に艶っぽい声で言った。
振り返ると、部下たちの目が少し潤み、頬が紅潮しているのが見て取れた。
「口を閉じろ。鼻で呼吸をするな」
ジークフリートは鋭く命じた。
「正気を保て。何かに、誘われている」
彼は自分自身にも言い聞かせるように言った。
額にじわりと汗が滲む。血管の中を流れる血が、沸騰したように騒ぎ出している。
行かなければならない。この香りの発生源へ。
そこに何があるのかはわからない。だが、本能が叫んでいる。
そこに行けば、求めている「答え」があると。
そして、それ以上に危険な「何か」もまた、そこで待っていると。
ジークフリートは愛馬の腹を蹴った。
馬もまた、何かに怯えるように、あるいは興奮するように鼻息を荒くしている。
「行くぞ。遅れるな」
一行は速度を上げ、森の深部へと突き進んでいった。
その先に待ち受ける運命の出会いが、国を、そして彼ら自身の人生を大きく変えることになるなどとは知らずに。
静謐な森は、彼らを飲み込むように深く、暗く、口を開けていた。
甘い毒のような香りを、道しるべとして。
20
あなたにおすすめの小説
出戻り王子が幸せになるまで
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
初恋の相手と政略結婚した主人公セフィラだが、相手には愛人ながら本命がいたことを知る。追及した結果、離縁されることになり、母国に出戻ることに。けれど、バツイチになったせいか父王に厄介払いされ、後宮から追い出されてしまう。王都の下町で暮らし始めるが、ふと訪れた先の母校で幼馴染であるフレンシスと再会。事情を話すと、突然求婚される。
一途な幼馴染×強がり出戻り王子のお話です。
※他サイトにも掲載しております。
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした
水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。
強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。
「お前は、俺だけのものだ」
これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
エリートαとして追放されましたが、実は抑制剤で隠されたΩでした。辺境で出会った無骨な農夫は訳あり最強αで、私の運命の番らしいです。
水凪しおん
BL
エリートαとして完璧な人生を歩むはずだった公爵令息アレクシス。しかし、身に覚えのない罪で婚約者である王子から婚約破棄と国外追放を宣告される。すべてを奪われ、魔獣が跋扈する辺境の地に捨てられた彼を待っていたのは、絶望と死の淵だった。
雨に打たれ、泥にまみれたプライドも砕け散ったその時、彼を救ったのは一人の無骨な男、カイ。ぶっきらぼうだが温かいスープを差し出す彼との出会いが、アレクシスの運命を根底から覆していく。
畑を耕し、土に触れる日々の中で、アレクシスは自らの体に隠された大きな秘密と、抗いがたい魂の引力に気づき始める。
――これは、偽りのαとして生きてきた青年が、運命の番と出会い、本当の自分を取り戻す物語。追放から始まる、愛と再生の成り上がりファンタジー。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる