オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に

水凪しおん

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第10話「新しい世界の夜明け」

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 アルファとオメガのペアによる「双星杯」優勝。それはアウレリア魔法学園の長い歴史の中で初めての快挙であり、そのニュースは瞬く間に国中に広まった。ユキとカイの存在は、これまでアルファに庇護されるだけの弱い存在と見なされ不当な扱いを受けてきた多くのオメガたちにとって大きな希望の光となった。

「オメガでも、アルファと対等に戦える」
「運命の番とは、魂で結ばれる対等なパートナーなのだ」

 彼らの勝利は旧弊な社会の価値観に大きな一石を投じた。

 卒業後、カイは多くの反対を押し切りエーレンベルク家の次期当主という立場と、その強大な権力を最大限に利用した。彼はオメガの社会的地位の向上と、その権利を法的に保護することを目的とした大々的な社会改革に乗り出したのだ。

 それは決して平坦な道のりではなかった。古い考えに固執する貴族たちからの猛烈な反発、既得権益にしがみつく者たちの妨害。しかしカイの隣には常にユキがいた。

 ユキはその卓越した魔法の知識と人を惹きつける真摯な人柄で、カイの活動を支えた。彼は自らがオメガとして経験してきた苦しみや理不尽さを、自身の言葉で人々に訴えかけた。その説得力のある言葉と何よりも「双星杯」の覇者という実績は多くの人々の心を動かし、改革への賛同者を着実に増やしていった。

 二人の周りにはいつしか多くの仲間が集まっていた。親友のリオはもちろん、かつては敵対していた兄のゼノンも、決勝戦で弟たちの絆の力を見せつけられてからは考えを改め、今では彼らの最も強力な協力者の一人だ。

 長い年月をかけた彼らの活動は少しずつ、しかし確実に実を結び、世界は変わり始めていた。オメガが性別によって進路を制限されることはなくなり、アルファとオメガが対等なパートナーとして社会の要職に就くことももはや珍しいことではなくなっていた。

 ある日の夕暮れ。
「オメガ権利保護法」の成立を記念して建てられた小高い丘の上で、ユキとカイは二人きりで沈む夕日を眺めていた。

「ここまで長かったな」

 カイが穏やかな声で呟いた。

「うん。でもカイがいてくれたから乗り越えられた」

 ユキはカイの肩にそっと頭をもたせかけた。出会った頃の刺々しい空気はどこにもない。ただ穏やかで満ち足りた時間が流れている。

「ユキ」

 カイはユキの体を自分の方へと向かせると、その瞳をまっすぐに見つめた。そして懐から小さなベルベットの箱を取り出す。

「俺と正式な番になってほしい。これからの人生、永遠に俺の隣にいてくれ」

 箱の中には黄金の鎖をモチーフにした美しい指輪が静かに輝いていた。

 ユキの瞳に喜びの涙が溢れる。彼は声にならない声で何度も何度も、うなずいた。

 カイは優しくその指輪をユキの左手の薬指にはめた。そして夕日に照らされながら、二人は誓いのキスを交わす。

 それは二人を強引に縛っていた運命の鎖が、未来を共に創造し世界を照らす温かい黄金の絆へと変わったことを示す、優しいキスだった。

 彼らの物語は古い世界に終わりを告げ、愛と平等に満ちた新しい時代の幕開けを告げる永遠の伝説として語り継がれていくことになる。
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