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第12話「反撃の狼煙」
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長い冬が終わり、アークライトの地に春の息吹が訪れ始めた頃、ついにその報はもたらされた。
兄エドガー率いる討伐軍、総勢五百が、王都を出立した、と。対するこちらのアークライトの戦力は、ユリウスと、訓練を積んだ村の男たちを合わせても、わずか五十名。絶望的な戦力差だった。
領民たちの間に、動揺が走る。だが、それはもはや以前のような諦観や絶望ではなかった。誰もが、リアム様と共に戦うのだという、固い決意を瞳に宿していた。
「皆、聞いてくれ!」
俺は広場に集まった領民たちの前に立ち、声を張り上げた。
「敵は五百、我らは五十。普通に戦えば、勝ち目はない。だが、俺たちには、この土地という最大の味方がいる!」
俺は地図を広げ、これから始まる戦いの作戦を説明した。
「我々は、籠城はしない。それではジリ貧になるだけだ。我々が仕掛けるのは、ゲリラ戦だ」
俺の作戦は、アークライト領を取り巻く広大な森と、険しい山岳地帯を最大限に利用するものだった。
土地勘のない討伐軍を森の奥深くに誘い込み、罠や奇襲で少しずつ敵の兵力を削いでいく。そして、敵が疲弊しきったところで、決戦を挑む。
「これは、俺たちの村、俺たちの家族を守るための戦いだ! 必ず、生きて帰ってこい!」
「「「おおーっ!!」」」
領民たちの雄叫びが、春の空に響き渡った。
数日後、エドガー率いる討伐軍が、ついにアークライト領の入り口に姿を現した。
整然と隊列を組んで進軍してくる様は、まさに正規軍の威容だ。先頭で馬にまたがるエドガーの顔には、勝利を確信した傲慢な笑みが浮かんでいた。
「ふん、哀れな反逆者どもめ。今頃、震え上がっていることだろう」
エドガーがせせら笑ったその時だった。彼の足元で、轟音と共に地面が爆ぜた。
「な、何だ!?」
それは、俺が仕掛けさせた簡易な爆薬の罠だった。殺傷力はないが、敵の度肝を抜き、混乱させるには十分だ。
混乱する討伐軍の側面の森から、無数の矢が放たれる。
「敵襲! 敵襲だ!」
兵士たちが慌てて盾を構えるが、矢は彼らを狙ったものではなく、彼らの足元に突き刺さる。矢の先には、油を染み込ませた布が巻かれていた。
「火を放て!」
俺の合図で、火矢が放たれる。瞬く間に、討伐軍の周囲は火の海となった。煙が視界を奪い、兵士たちは咳き込みながら右往左往する。
「落ち着け! 隊列を乱すな!」
エドガーがヒステリックに叫ぶが、混乱は収まらない。
その隙を突き、俺たちの部隊は一斉に奇襲をかけた。ユリウスを先頭に、村の男たちが雄叫びを上げて突撃する。狙うは、敵の補給部隊だ。
戦いは乱戦となった。正規軍の兵士は手強いが、こちらは地の利がある。木々の間を自在に駆け回り、一撃離脱を繰り返す。ユリウスの剣は、今日も冴え渡っていた。彼の前に立つ兵士は、面白いように斬り伏せられていく。
「撤退! いったん撤退だ!」
不意を突かれ、大きな損害を出した討伐軍は、たまらず後退していった。
森の中に引き上げた俺たちを、村の男たちが興奮した様子で迎える。
「やった! やったぞ、リアム様!」
「俺たちでも、やれるんだ!」
初戦の勝利は、彼らに大きな自信をもたらした。だが、俺は兜の緒を締める。
「まだ始まったばかりだ。敵は必ず態勢を立て直してくる。次の一手を準備するぞ」
俺たちの本当の戦いは、ここからだった。
アークライトの森を舞台にした、知略と勇気が試される戦いが、今、幕を開けたのだ。
兄エドガー率いる討伐軍、総勢五百が、王都を出立した、と。対するこちらのアークライトの戦力は、ユリウスと、訓練を積んだ村の男たちを合わせても、わずか五十名。絶望的な戦力差だった。
領民たちの間に、動揺が走る。だが、それはもはや以前のような諦観や絶望ではなかった。誰もが、リアム様と共に戦うのだという、固い決意を瞳に宿していた。
「皆、聞いてくれ!」
俺は広場に集まった領民たちの前に立ち、声を張り上げた。
「敵は五百、我らは五十。普通に戦えば、勝ち目はない。だが、俺たちには、この土地という最大の味方がいる!」
俺は地図を広げ、これから始まる戦いの作戦を説明した。
「我々は、籠城はしない。それではジリ貧になるだけだ。我々が仕掛けるのは、ゲリラ戦だ」
俺の作戦は、アークライト領を取り巻く広大な森と、険しい山岳地帯を最大限に利用するものだった。
土地勘のない討伐軍を森の奥深くに誘い込み、罠や奇襲で少しずつ敵の兵力を削いでいく。そして、敵が疲弊しきったところで、決戦を挑む。
「これは、俺たちの村、俺たちの家族を守るための戦いだ! 必ず、生きて帰ってこい!」
「「「おおーっ!!」」」
領民たちの雄叫びが、春の空に響き渡った。
数日後、エドガー率いる討伐軍が、ついにアークライト領の入り口に姿を現した。
整然と隊列を組んで進軍してくる様は、まさに正規軍の威容だ。先頭で馬にまたがるエドガーの顔には、勝利を確信した傲慢な笑みが浮かんでいた。
「ふん、哀れな反逆者どもめ。今頃、震え上がっていることだろう」
エドガーがせせら笑ったその時だった。彼の足元で、轟音と共に地面が爆ぜた。
「な、何だ!?」
それは、俺が仕掛けさせた簡易な爆薬の罠だった。殺傷力はないが、敵の度肝を抜き、混乱させるには十分だ。
混乱する討伐軍の側面の森から、無数の矢が放たれる。
「敵襲! 敵襲だ!」
兵士たちが慌てて盾を構えるが、矢は彼らを狙ったものではなく、彼らの足元に突き刺さる。矢の先には、油を染み込ませた布が巻かれていた。
「火を放て!」
俺の合図で、火矢が放たれる。瞬く間に、討伐軍の周囲は火の海となった。煙が視界を奪い、兵士たちは咳き込みながら右往左往する。
「落ち着け! 隊列を乱すな!」
エドガーがヒステリックに叫ぶが、混乱は収まらない。
その隙を突き、俺たちの部隊は一斉に奇襲をかけた。ユリウスを先頭に、村の男たちが雄叫びを上げて突撃する。狙うは、敵の補給部隊だ。
戦いは乱戦となった。正規軍の兵士は手強いが、こちらは地の利がある。木々の間を自在に駆け回り、一撃離脱を繰り返す。ユリウスの剣は、今日も冴え渡っていた。彼の前に立つ兵士は、面白いように斬り伏せられていく。
「撤退! いったん撤退だ!」
不意を突かれ、大きな損害を出した討伐軍は、たまらず後退していった。
森の中に引き上げた俺たちを、村の男たちが興奮した様子で迎える。
「やった! やったぞ、リアム様!」
「俺たちでも、やれるんだ!」
初戦の勝利は、彼らに大きな自信をもたらした。だが、俺は兜の緒を締める。
「まだ始まったばかりだ。敵は必ず態勢を立て直してくる。次の一手を準備するぞ」
俺たちの本当の戦いは、ここからだった。
アークライトの森を舞台にした、知略と勇気が試される戦いが、今、幕を開けたのだ。
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