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第8話:隣国の王子は嵐を呼ぶ
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平穏(?)な学園生活に、ある日、大きな波乱が巻き起こった。
隣国ファルベールから、王子のカイ・ランカスターが短期留学生としてやってきたのだ。
太陽のように明るい金髪に、快活な緑色の瞳。彼は初日から、その人懐っこい笑顔と気さくな性格で、あっという間に学園の人気者になった。
俺としては、王族なんてシリウス公爵と同じくらい関わりたくない人種だ。破滅フラグの匂いしかしない。俺はいつものように、壁のシミ作戦に徹することに決めていた。
しかし、そんな俺のささやかな願いは、いとも簡単に打ち砕かれる。
「やあ! 君がアレン・フォン・ヴァイスだね? 君の作るクッキー、すごく美味しいって評判だよ!」
昼休み、中庭のベンチでリリアと話していると、噂のカイ王子が満面の笑みで話しかけてきた。周囲の生徒たちが「きゃあ!」と色めき立つ。やめてくれ、こっちを見ないでくれ。
「……どうも」
「そんなに畏まらなくてもいいよ! 俺のことはカイって呼んで。ねえ、今度俺にもそのクッキー、作ってくれないかな?」
ぐいぐいと距離を詰めてくるカイに、俺は完全にタジタジだった。彼は典型的な陽キャアルファで、俺のような陰キャ転生者とは住む世界が違う。
だが、太陽のような彼の笑顔を前に、無下に断ることもできない。俺が「は、はあ……」と曖昧に頷くと、カイは「やったあ!」と子供のようにはしゃいだ。
それ以来、なぜかカイ王子は俺にまとわりつくようになった。
「アレン、今日の昼飯、一緒に食おうぜ!」
「アレン、次の授業ってなんだっけ?」
彼には悪意がないのが分かるだけに、強く拒絶することもできず、俺は彼のペースに巻き込まれていく。リリアは「アレン様は人気者ですね」と微笑んでいるが、俺の心は少しも休まらなかった。
そして、この事態を最も快く思っていない人物がいた。言うまでもなく、シリウス・フォン・クラーヴァイン公爵だ。
毎日のように学園まで迎えに来る馬車の中で、彼の機嫌は日に日に悪くなっていった。
「今日も、あの王子と一緒にいたそうだな」
「え? あ、はい。成り行きで……」
「……そうか」
たったそれだけの返事なのに、馬車の中の温度が五度くらい下がった気がする。怖い。めちゃくちゃ怖い。
ある日の放課後、カイ王子が「どうしても見せたいものがあるんだ!」と言って、俺の腕を掴んで走り出した。連れてこられたのは、学園の裏手にある薔薇園だった。
「綺麗だろ? 俺の国の薔薇なんだ」
咲き誇る色とりどりの薔薇に、俺も思わず感嘆の声を漏らした。カイは満足そうに笑うと、一輪の赤い薔薇を摘み取り、俺に差し出した。
「君に似合うと思って」
「え、いや、でも……」
俺が戸惑っている、まさにその時だった。
「――人のものに、気安く触れるな」
地を這うような低い声が、薔薇園に響き渡った。声の主は、いつの間に現れたのか、凍てつくような嫉妬の炎をその銀色の瞳に宿したシリウスだった。
彼の登場に、さっきまで和やかだった空気は一瞬で凍りつく。
カイ王子とシリウス公爵。二人の強大なアルファが、俺を挟んで火花を散らす。
俺は、自分がとんでもない修羅場の中心にいることを悟り、ただ青ざめることしかできなかった。どうしてこうなるんだ!
隣国ファルベールから、王子のカイ・ランカスターが短期留学生としてやってきたのだ。
太陽のように明るい金髪に、快活な緑色の瞳。彼は初日から、その人懐っこい笑顔と気さくな性格で、あっという間に学園の人気者になった。
俺としては、王族なんてシリウス公爵と同じくらい関わりたくない人種だ。破滅フラグの匂いしかしない。俺はいつものように、壁のシミ作戦に徹することに決めていた。
しかし、そんな俺のささやかな願いは、いとも簡単に打ち砕かれる。
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昼休み、中庭のベンチでリリアと話していると、噂のカイ王子が満面の笑みで話しかけてきた。周囲の生徒たちが「きゃあ!」と色めき立つ。やめてくれ、こっちを見ないでくれ。
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ぐいぐいと距離を詰めてくるカイに、俺は完全にタジタジだった。彼は典型的な陽キャアルファで、俺のような陰キャ転生者とは住む世界が違う。
だが、太陽のような彼の笑顔を前に、無下に断ることもできない。俺が「は、はあ……」と曖昧に頷くと、カイは「やったあ!」と子供のようにはしゃいだ。
それ以来、なぜかカイ王子は俺にまとわりつくようになった。
「アレン、今日の昼飯、一緒に食おうぜ!」
「アレン、次の授業ってなんだっけ?」
彼には悪意がないのが分かるだけに、強く拒絶することもできず、俺は彼のペースに巻き込まれていく。リリアは「アレン様は人気者ですね」と微笑んでいるが、俺の心は少しも休まらなかった。
そして、この事態を最も快く思っていない人物がいた。言うまでもなく、シリウス・フォン・クラーヴァイン公爵だ。
毎日のように学園まで迎えに来る馬車の中で、彼の機嫌は日に日に悪くなっていった。
「今日も、あの王子と一緒にいたそうだな」
「え? あ、はい。成り行きで……」
「……そうか」
たったそれだけの返事なのに、馬車の中の温度が五度くらい下がった気がする。怖い。めちゃくちゃ怖い。
ある日の放課後、カイ王子が「どうしても見せたいものがあるんだ!」と言って、俺の腕を掴んで走り出した。連れてこられたのは、学園の裏手にある薔薇園だった。
「綺麗だろ? 俺の国の薔薇なんだ」
咲き誇る色とりどりの薔薇に、俺も思わず感嘆の声を漏らした。カイは満足そうに笑うと、一輪の赤い薔薇を摘み取り、俺に差し出した。
「君に似合うと思って」
「え、いや、でも……」
俺が戸惑っている、まさにその時だった。
「――人のものに、気安く触れるな」
地を這うような低い声が、薔薇園に響き渡った。声の主は、いつの間に現れたのか、凍てつくような嫉妬の炎をその銀色の瞳に宿したシリウスだった。
彼の登場に、さっきまで和やかだった空気は一瞬で凍りつく。
カイ王子とシリウス公爵。二人の強大なアルファが、俺を挟んで火花を散らす。
俺は、自分がとんでもない修羅場の中心にいることを悟り、ただ青ざめることしかできなかった。どうしてこうなるんだ!
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