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第16話:初めての「好き」
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シリウスの腕の中は、暖かくて、安心できる匂いがした。さっきまでの恐怖が、嘘のように溶けていく。
「怪我は……ないか? 酷いことはされなかったか?」
俺の髪を優しく撫でながら、彼は心配そうに尋ねる。その顔には、いつもの冷徹な仮面はなく、ただ俺を案じる一人の男の顔があった。ところどころに切り傷や擦り傷をこさえているのは、俺ではなく、彼の方だったというのに。
「俺は、大丈夫です……。あなたこそ、怪我を……」
俺が彼の頬に残る傷にそっと触れると、シリウスは驚いたように目を見開いた。そして、まるで宝物に触れるかのように、俺の手に自分の手を重ねた。
「こんなもの、傷のうちに入らん」
そう言う彼の声が、少しだけ震えていることに、俺は気づいた。
「……お前を失うかと思った」
絞り出すように呟かれたその言葉に、俺の心臓が大きく跳ねた。
「もし、お前に何かあったら……私は……」
彼の銀色の瞳が、苦しげに揺れている。それは、俺がこれまでずっと見てきた「演技」や「偽り」なんかではなかった。彼の心の奥底からの、偽らざる本心。
俺は、なんて馬鹿だったんだろう。
破滅フラグだの、偽装婚約だの、全部、全部、俺の勝手な思い込みだったんだ。
この人は、ただ純粋に、俺を心配し、俺を大切に想ってくれていただけなのに。俺は、その気持ちをずっと疑って、彼を傷つけていたのかもしれない。
「……シリウス様」
俺は自然と、彼の名前を呼んでいた。
「俺……ずっと、勘違いしてました」
「勘違い?」
「あなたの優しさも、婚約も、全部、俺を陥れるための罠なんだって……勝手に思い込んで……」
俺の告白に、シリウスは少しだけ驚いたような顔をしたが、やがて全てを理解したように、ふっと穏やかに微笑んだ。
「……そうか。だからお前は、いつも何かに怯えているような顔をしていたのか」
彼は俺の頬を優しく包み込むと、まっすぐに俺の目を見つめた。
「ならば、改めて言おう。アレン。私は、お前を愛している。この世界の何よりも、誰よりも」
その真摯な告白に、俺の涙腺は完全に決壊した。
嬉しくて、愛おしくて、そして申し訳なくて、涙が止まらない。
「俺も……っ……俺も、です……」
しゃくりあげながら、俺は必死に言葉を紡いだ。
「あなたのことが……好き、です……!」
初めて、自分の本当の気持ちを、自分の言葉で伝えることができた。
俺の言葉を聞いたシリウスは、この世の全ての幸福を手に入れたかのような、優しい笑顔を見せた。そして、ゆっくりと顔を近づけると、俺の涙を拭うように、その唇を重ねた。
それは、甘くて、優しい、初めてのキスだった。
「怪我は……ないか? 酷いことはされなかったか?」
俺の髪を優しく撫でながら、彼は心配そうに尋ねる。その顔には、いつもの冷徹な仮面はなく、ただ俺を案じる一人の男の顔があった。ところどころに切り傷や擦り傷をこさえているのは、俺ではなく、彼の方だったというのに。
「俺は、大丈夫です……。あなたこそ、怪我を……」
俺が彼の頬に残る傷にそっと触れると、シリウスは驚いたように目を見開いた。そして、まるで宝物に触れるかのように、俺の手に自分の手を重ねた。
「こんなもの、傷のうちに入らん」
そう言う彼の声が、少しだけ震えていることに、俺は気づいた。
「……お前を失うかと思った」
絞り出すように呟かれたその言葉に、俺の心臓が大きく跳ねた。
「もし、お前に何かあったら……私は……」
彼の銀色の瞳が、苦しげに揺れている。それは、俺がこれまでずっと見てきた「演技」や「偽り」なんかではなかった。彼の心の奥底からの、偽らざる本心。
俺は、なんて馬鹿だったんだろう。
破滅フラグだの、偽装婚約だの、全部、全部、俺の勝手な思い込みだったんだ。
この人は、ただ純粋に、俺を心配し、俺を大切に想ってくれていただけなのに。俺は、その気持ちをずっと疑って、彼を傷つけていたのかもしれない。
「……シリウス様」
俺は自然と、彼の名前を呼んでいた。
「俺……ずっと、勘違いしてました」
「勘違い?」
「あなたの優しさも、婚約も、全部、俺を陥れるための罠なんだって……勝手に思い込んで……」
俺の告白に、シリウスは少しだけ驚いたような顔をしたが、やがて全てを理解したように、ふっと穏やかに微笑んだ。
「……そうか。だからお前は、いつも何かに怯えているような顔をしていたのか」
彼は俺の頬を優しく包み込むと、まっすぐに俺の目を見つめた。
「ならば、改めて言おう。アレン。私は、お前を愛している。この世界の何よりも、誰よりも」
その真摯な告白に、俺の涙腺は完全に決壊した。
嬉しくて、愛おしくて、そして申し訳なくて、涙が止まらない。
「俺も……っ……俺も、です……」
しゃくりあげながら、俺は必死に言葉を紡いだ。
「あなたのことが……好き、です……!」
初めて、自分の本当の気持ちを、自分の言葉で伝えることができた。
俺の言葉を聞いたシリウスは、この世の全ての幸福を手に入れたかのような、優しい笑顔を見せた。そして、ゆっくりと顔を近づけると、俺の涙を拭うように、その唇を重ねた。
それは、甘くて、優しい、初めてのキスだった。
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