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第10話「芽生えた独占欲」
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一つ目の遺物である聖杯を手に入れたカイルは、急いで魔の森の古城へと帰還した。
城門をくぐると、玉座の間から尋常ではない魔力が揺らめいているのを感じる。カイルが留守の間、レイルは彼の身を案じ、魔力を不安定にさせていたのだ。
「レイルさん、ただいま戻りました!」
カイルが玉座の間に駆け込むと、レイルは驚いたように顔を上げた。その表情はすぐにいつもの不機嫌そうなものに戻ったが、瞳の奥に安堵の色が浮かんだのを、カイルは見逃さなかった。
「……遅かったではないか」
「すみません。これを、見てください!」
カイルは誇らしげに聖杯を掲げてみせる。そして、早速その力を使うことにした。聖杯に泉の水を注ぐと、水はまばゆい光を放ち始めた。
「レイルさん、これを」
カイルが光る水を差し出すと、レイルは訝しげにそれを受け取り、一気に飲み干した。
すると、驚くべきことが起こった。
レイルの全身を苛んでいた黒い茨の呪いが、すっと薄らいだのだ。完全に消えたわけではないが、苦痛は明らかに和らいでいるようだった。
「……ああ」
レイルは信じられないといった様子で、自らの手を見つめている。
絶え間なく続いていた激痛が、今は穏やかな痺れに変わっている。これほど体が軽いのは、何百年ぶりのことだろうか。
痛みが和らいだことで、彼の表情もまた、本来の穏やかなものへと変わっていた。険が取れ、涼やかな目元が際立ち、その人間離れした美しさがより一層引き立つ。
そして、彼はカイルに向き直ると、ふっと、柔らかく微笑んだ。
「……よく、やったな。カイル」
それは、カイルが初めて見る、レイルの心からの笑顔だった。
その瞬間、カイルは自分の顔にカッと熱が集まるのを感じた。心臓が早鐘のように鳴り響く。不覚にも、美しい、と思ってしまった。
今まで彼を救いたいという一心だったが、その笑顔を見て、別の感情が芽生え始めていることに気づかされる。
「い、いえ! これくらい、当然です!」
カイルは慌てて顔を背け、赤くなったのを悟られまいと必死になった。
レイルは、そんなカイルの初々しい反応を興味深そうに眺めていた。
自分を恐れず、真っ直ぐに向かってきてくれるただ一人の人間。自分のために危険を冒し、そして今、自分の笑顔一つで顔を真っ赤にしている。
その姿が、レイルの胸の奥に、今まで感じたことのない強い感情を芽生えさせた。
愛おしい。手放したくない。誰にも渡したくない。
それは、永い孤独を生きてきた魔王が初めて覚える、温かくて、少しだけ息苦しいほどの庇護欲と、そして強烈な独占欲だった。
レイルは、そんな己の心の変化に少し戸惑いながらも、カイルという存在が自分にとって唯一無二のものになりつつあることを、はっきりと自覚していた。
城門をくぐると、玉座の間から尋常ではない魔力が揺らめいているのを感じる。カイルが留守の間、レイルは彼の身を案じ、魔力を不安定にさせていたのだ。
「レイルさん、ただいま戻りました!」
カイルが玉座の間に駆け込むと、レイルは驚いたように顔を上げた。その表情はすぐにいつもの不機嫌そうなものに戻ったが、瞳の奥に安堵の色が浮かんだのを、カイルは見逃さなかった。
「……遅かったではないか」
「すみません。これを、見てください!」
カイルは誇らしげに聖杯を掲げてみせる。そして、早速その力を使うことにした。聖杯に泉の水を注ぐと、水はまばゆい光を放ち始めた。
「レイルさん、これを」
カイルが光る水を差し出すと、レイルは訝しげにそれを受け取り、一気に飲み干した。
すると、驚くべきことが起こった。
レイルの全身を苛んでいた黒い茨の呪いが、すっと薄らいだのだ。完全に消えたわけではないが、苦痛は明らかに和らいでいるようだった。
「……ああ」
レイルは信じられないといった様子で、自らの手を見つめている。
絶え間なく続いていた激痛が、今は穏やかな痺れに変わっている。これほど体が軽いのは、何百年ぶりのことだろうか。
痛みが和らいだことで、彼の表情もまた、本来の穏やかなものへと変わっていた。険が取れ、涼やかな目元が際立ち、その人間離れした美しさがより一層引き立つ。
そして、彼はカイルに向き直ると、ふっと、柔らかく微笑んだ。
「……よく、やったな。カイル」
それは、カイルが初めて見る、レイルの心からの笑顔だった。
その瞬間、カイルは自分の顔にカッと熱が集まるのを感じた。心臓が早鐘のように鳴り響く。不覚にも、美しい、と思ってしまった。
今まで彼を救いたいという一心だったが、その笑顔を見て、別の感情が芽生え始めていることに気づかされる。
「い、いえ! これくらい、当然です!」
カイルは慌てて顔を背け、赤くなったのを悟られまいと必死になった。
レイルは、そんなカイルの初々しい反応を興味深そうに眺めていた。
自分を恐れず、真っ直ぐに向かってきてくれるただ一人の人間。自分のために危険を冒し、そして今、自分の笑顔一つで顔を真っ赤にしている。
その姿が、レイルの胸の奥に、今まで感じたことのない強い感情を芽生えさせた。
愛おしい。手放したくない。誰にも渡したくない。
それは、永い孤独を生きてきた魔王が初めて覚える、温かくて、少しだけ息苦しいほどの庇護欲と、そして強烈な独占欲だった。
レイルは、そんな己の心の変化に少し戸惑いながらも、カイルという存在が自分にとって唯一無二のものになりつつあることを、はっきりと自覚していた。
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