自己肯定感ゼロの駄菓子屋オメガですが、なぜか執着系スパダリαにロックオンされました

水凪しおん

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第6話「理性の限界点」

 薬が効かない。
 それどころか、さっき飲んだはずの抑制剤が、まるで焚き火に油を注いだかのように熱を煽っている気がする。
 これが、「運命の番」に出会ったときのヒートなのか。

「湊、しっかりしろ!」

「はぁ、ぁ……あつい、西園寺さん……」

 僕の口から漏れる吐息は、自分でも驚くほど甘ったるい。
 部屋中に充満する僕のフェロモン。完熟した果実が崩れる寸前のような、濃厚な香り。
 西園寺さんの顔が苦痛に歪むのが見えた。

「くっ……!」

 彼は奥歯を噛み締め、必死に理性を保とうとしている。
 アルファにとって、発情期のオメガのフェロモンは劇薬だ。しかも、相性の良い相手なら尚更、抗うことは拷問に近い。
 それなのに、彼は僕を襲おうとしない。
 ただ強く抱きしめ、背中をさすってくれるだけだ。

「大丈夫だ。俺がついている。何も怖いことはない」

「でも……あなたが、つらい……」

「気にするな。これくらい、どうということはない」

 嘘だ。
 彼の額には玉のような汗が浮かび、抱きしめる腕は小刻みに震えている。
 僕の下半身に押し付けられた硬いものが、彼の興奮を物語っていた。

 欲しい。
 本能が叫ぶ。
 彼に噛み付いてほしい。首筋に、彼のものである証を刻んでほしい。
 中をかき乱して、彼の種で満たしてほしい。

「西園寺さん……抱いて……」

「……ッ!」

 懇願すると、西園寺さんの動きが止まった。
 彼の瞳が、金色に輝いている。理性の鎖が千切れる音が聞こえた気がした。

「……本気か? 一度繋がれば、もう二度と離さないぞ。君の意思に関係なく、一生俺の傍に縛り付けることになる」

「いいよ……あなたが、いい」

 もう、身分差もコンプレックスもどうでもよかった。
 ただ、この人と一つになりたい。
 それだけが真実だった。

 西園寺さんは唸るような声を上げると、僕をソファに押し倒した。
 覆いかぶさる彼の身体は大きくて、重くて、安心する。
 彼の手が、僕のシャツの中に滑り込む。
 熱い。溶ける。

「湊……愛してる」

 耳元で囁かれた言葉は、どんな催淫剤よりも僕を昂ぶらせた。

「僕も……好きです、蓮さん」

 初めて名前で呼んだ。
 蓮さんは、今まで見たことがないほど優しく、そして獰猛な笑みを浮かべた。

「いい子だ。たっぷり可愛がってやる」

 唇が重なる。
 それは挨拶のような軽いものではなく、酸素も魂もすべて奪い取るような、深くて貪欲なキスだった。
 雨音はもう聞こえない。
 世界には、僕たち二人しかいなかった。

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