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第10話「社交界デビューは突然に」
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平和な同棲生活に、ついに終わりの時……ではなく、試練が訪れた。
西園寺グループ主催のチャリティーパーティー。
政財界の大物が集まるその場所に、蓮さんは僕を連れて行くと言い出したのだ。
「無理です! 絶対無理! マナーも知らないし、ダンスも踊れないし!」
「大丈夫だ。俺の横で笑っていればいい」
「笑えませんよ、緊張で顔が引きつります!」
抵抗も虚しく、僕は蓮さんが手配したスタイリストによって磨き上げられた。
用意されたのは、淡いシャンパンゴールドのタキシード。
鏡の中にいる自分を見て、誰だこれ、と思った。
髪をセットし、少しメイクを施された僕は、自分で言うのもなんだけれど、悪くない見栄えだった。
「……美しい」
着替え終わった僕を見た蓮さんは、しばらく言葉を失い、それから熱っぽい溜息をついた。
「このまま連れ去って、閉じ込めておきたいくらいだ」
「やめてください、本気にするから」
「本気だ。だが、今日は世界中に見せつけてやらなければならない。俺が選んだパートナーが、どれほど素晴らしいかを」
会場のホテルは、目がくらむほど豪華絢爛だった。
シャンデリアの輝き、高級な香水の入り混じる香り、洗練された音楽。
足が震える僕の腰を、蓮さんの腕がしっかりと支える。
「堂々としていろ。君は西園寺蓮の番だ」
その言葉が、魔法のようにお守りになる。
会場に入ると、一斉に視線が集まった。
好奇心、値踏み、嫉妬。様々な感情が突き刺さる。
以前の僕なら、きっと逃げ出していただろう。でも今は、隣に彼がいる。
「あの方が、噂の……」
「駄菓子屋の店主だとか?」
「でも、なんて品のある立ち居振る舞いなの……」
ひそひそ話が聞こえてくるが、蓮さんは意に介さない。
次々と挨拶に来る大物たちに、彼は僕を堂々と紹介した。
「私のパートナーの、古賀湊です」
卑下することも、過度に飾ることもなく。
ただ、大切な宝物を紹介するように。
途中、意地悪な質問をしてくる夫人がいた。
「庶民の方には、このワインの味はお分かりにならないんじゃなくて?」と。
僕は緊張しながらも、正直に答えた。
「ええ、専門的なことは分かりません。でも、大切な人と飲むものは、ラムネ一本でも最高に美味しいということは知っています」
場が一瞬静まり、それから蓮さんが吹き出した。
「ははっ! その通りだ。一本百円のラムネも、君と飲めばヴィンテージワインより美味い」
蓮さんが笑うと、周りの空気も和んだ。
夫人は少し顔を赤らめて引き下がった。
ダンスの時間。
蓮さんは僕の手を取り、フロアの中央へ導く。
ステップなんて分からない。
でも、彼に身を任せているだけで、身体が自然と動いた。
まるで、二人だけの世界にいるみたいだ。
「よくやった、湊。最高だ」
「……蓮さんのおかげです」
きらめく光の中で、僕たちは見つめ合う。
住む世界が違うなんて、もう思わない。
僕たちは、魂の部分で繋がっているのだから。
西園寺グループ主催のチャリティーパーティー。
政財界の大物が集まるその場所に、蓮さんは僕を連れて行くと言い出したのだ。
「無理です! 絶対無理! マナーも知らないし、ダンスも踊れないし!」
「大丈夫だ。俺の横で笑っていればいい」
「笑えませんよ、緊張で顔が引きつります!」
抵抗も虚しく、僕は蓮さんが手配したスタイリストによって磨き上げられた。
用意されたのは、淡いシャンパンゴールドのタキシード。
鏡の中にいる自分を見て、誰だこれ、と思った。
髪をセットし、少しメイクを施された僕は、自分で言うのもなんだけれど、悪くない見栄えだった。
「……美しい」
着替え終わった僕を見た蓮さんは、しばらく言葉を失い、それから熱っぽい溜息をついた。
「このまま連れ去って、閉じ込めておきたいくらいだ」
「やめてください、本気にするから」
「本気だ。だが、今日は世界中に見せつけてやらなければならない。俺が選んだパートナーが、どれほど素晴らしいかを」
会場のホテルは、目がくらむほど豪華絢爛だった。
シャンデリアの輝き、高級な香水の入り混じる香り、洗練された音楽。
足が震える僕の腰を、蓮さんの腕がしっかりと支える。
「堂々としていろ。君は西園寺蓮の番だ」
その言葉が、魔法のようにお守りになる。
会場に入ると、一斉に視線が集まった。
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以前の僕なら、きっと逃げ出していただろう。でも今は、隣に彼がいる。
「あの方が、噂の……」
「駄菓子屋の店主だとか?」
「でも、なんて品のある立ち居振る舞いなの……」
ひそひそ話が聞こえてくるが、蓮さんは意に介さない。
次々と挨拶に来る大物たちに、彼は僕を堂々と紹介した。
「私のパートナーの、古賀湊です」
卑下することも、過度に飾ることもなく。
ただ、大切な宝物を紹介するように。
途中、意地悪な質問をしてくる夫人がいた。
「庶民の方には、このワインの味はお分かりにならないんじゃなくて?」と。
僕は緊張しながらも、正直に答えた。
「ええ、専門的なことは分かりません。でも、大切な人と飲むものは、ラムネ一本でも最高に美味しいということは知っています」
場が一瞬静まり、それから蓮さんが吹き出した。
「ははっ! その通りだ。一本百円のラムネも、君と飲めばヴィンテージワインより美味い」
蓮さんが笑うと、周りの空気も和んだ。
夫人は少し顔を赤らめて引き下がった。
ダンスの時間。
蓮さんは僕の手を取り、フロアの中央へ導く。
ステップなんて分からない。
でも、彼に身を任せているだけで、身体が自然と動いた。
まるで、二人だけの世界にいるみたいだ。
「よくやった、湊。最高だ」
「……蓮さんのおかげです」
きらめく光の中で、僕たちは見つめ合う。
住む世界が違うなんて、もう思わない。
僕たちは、魂の部分で繋がっているのだから。
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