追放された聖騎士は、辺境の森で謎の男に溺愛される~俺を陥れた聖女と王子は、国が滅ぶ寸前になって戻ってこいと言い出したがもう遅い~

水凪しおん

文字の大きさ
13 / 16

第12話「浄化の光と王の断罪」

しおりを挟む
 瘴気の柱は、まるで天を貫く巨大な竜巻のようだった。その中心から、おびただしい数の魔物が、黒い影となって溢れ出してくる。
「総員、迎撃せよ!」
 騎士団長が叫び、騎士たちが一斉に魔物の群れへと突撃していく。だが、数が多すぎる。次々と現れる魔物に、騎士たちはじりじりと後退を余儀なくされていた。

「リヒト! 瘴気の発生源を叩く! 俺が道を開ける!」
「ああ!」
 俺たちはアイコンタクトを交わし、中庭へと駆け出した。
 カイは、まるで黒い疾風だった。彼の振るう剣は、面白いように魔物を屠っていく。その圧倒的な強さは、騎士たちの士気を奮い立たせた。
 俺もカイの背中を追いながら、迫りくる魔物を黒剣で薙ぎ払う。この剣は、魔の属性を持つものに対して絶大な威力を発揮する。聖なる力を持つ俺が使うことで、その力はさらに増幅されていた。

 瘴気の柱の中心。そこには、恐怖に腰を抜かしたイザベラが座り込んでいた。彼女の身体から、黒い靄が絶え間なく溢れ出し、瘴気の柱へと吸い込まれている。
「やめろ、イザベラ! お前が力の供給を止めれば、門は閉じるはずだ!」
 俺が叫ぶと、イザベラは狂ったように笑い出した。
「もう遅いのよ! あの御方との契約は、もう止められない! この国が滅びれば、私は不老不死の身体を手に入れて、リヒト、あなたと永遠に結ばれるの!」
 歪んだ願望。そのために、国ひとつを犠牲にするというのか。
「ふざけるな!」
 俺は彼女に向かって駆け出そうとする。だが、その前に、柱から一際巨大な魔物が姿を現し、道を塞いだ。
「カイ!」
「任せろ!」
 カイが巨大な魔物を引き受けてくれる。その隙に、俺はイザベラのもとへ。
「どうすれば、契約を破棄できる!?」
「無駄よ! あの御方は、この世界の理の外にいる存在……人の力では、どうにもならない!」

『理の外……』

 ならば、こちらも理の外の力を使うまでだ。
 俺は黒剣を地面に突き刺し、目を閉じて意識を集中させる。
 血筋の奥深くに眠る、古代から受け継がれてきた浄化の力を、呼び覚ます。
 身体の芯が、熱くなる。温かい光が、俺の身体から溢れ出し始めた。それは、太陽のように眩しく、優しい光だった。
「な、何……その光は……」
 イザベラが、信じられないものを見る目で俺を見つめる。
「これが、俺の一族が代々受け継いできた、真の浄化の力だ」
 俺は両手を天に掲げ、全ての力を解放した。
 光が爆発的に広がり、王都全体を包み込む。
 光に触れた魔物たちが、苦しみの声を上げながら次々と消滅していく。空を覆っていた分厚い暗雲が晴れ、久しぶりに青い空が顔を覗かせた。
 瘴気の柱も、聖なる光に浄化され、急速に勢いを失っていく。
「いやぁぁぁっ!」
 イザベラが絶叫する。彼女と契約していた邪神とやらが、浄化の光に耐えきれず、繋がりを断ち切ったのだろう。力の源を失ったイザベラは、急速にその若さと美貌を失い、老婆のように萎びていった。
「そんな……嘘……私の美しさが……」
 呆然と自分の手を見つめるイザベラ。それが、彼女の迎えた末路だった。

 全ての魔物が消え去り、王都に静寂が戻る。
 騎士も民も、呆然と空を見上げていた。そして、誰からともなく、歓声が上がった。
 俺は力の使いすぎで膝をつく。すかさず、カイが駆け寄ってきて、その身体を支えてくれた。
「よくやったな、リヒト」
「カイこそ……」
 俺たちは、互いに微笑み合った。

 ***

 後日、玉座の間で、正式な裁きが行われた。
 全ての力を失い、老婆となったイザベラは、国を滅ぼそうとした大罪人として、地下牢の最下層に生涯幽閉されることが決まった。
 そして、アルフォンス。
 彼は聖女の言いなりになり、国を危機に陥れた責任を問われ、王位継承権を剥奪。辺境の地で、生涯をかけて国の復興に尽くすよう命じられた。
「……リヒト・アーデルハイト。本当に、すまなかった」
 罪人として引き立てられていくアルフォンスが、最後に俺に向かって深く頭を下げた。俺は何も言わず、ただその姿を見送った。

 全てが終わり、国王が俺とカイの前に進み出た。
「リヒト殿。君は、この国の救世主だ。君の望むものは何でも与えよう。地位も、名誉も、富も」
「……俺が望むものは、一つだけです」
 俺は、隣に立つカイの手を、ぎゅっと握った。
 そして、国王に向かって、はっきりと告げる。
「俺の居場所は、カイの隣だけです。彼と共に、静かに暮らすこと。それが、俺の唯一の望みです」
 俺の言葉に、カイが少し驚いたように目を見開く。
 国王は、俺たちの握られた手を見ると、全てを察したように、穏やかに微笑んだ。
「……そうか。カイン、お前は良い伴侶を見つけたな」
 それは、二人の関係を認める、という王からの言葉だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~

なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。 傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。 家のため、領民のため、そして―― 少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。 だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。 「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」 その冷たい声が、彼の世界を壊した。 すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。 そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。 人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。 アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。 失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。 今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

処理中です...