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第13話「君の隣が、俺の帰る場所」
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国の危機が去り、王都には少しずつ日常が戻りつつあった。
浄化の光は、人々の心に残っていた不安の影をも拭い去ってくれたようだった。街には活気が戻り、子供たちの笑い声が響いている。
俺とカイは、王城の一室を与えられ、しばらくそこに滞在していた。
カイは、次期国王として、戦後処理や国の復興計画の指揮を執ることになった。アルフォンスが王位継承権を失った今、彼が国を継ぐのは当然の流れだった。
姿を消していた第一王子が生きていたこと、そして彼が国の英雄リヒトと共に災厄を打ち払ったというニュースは、瞬く間に国中に広まり、民は新しい王の誕生を歓迎していた。
「忙しそうだな」
執務室で、山のような書類と格闘しているカイに、俺は紅茶を差し出した。
「ああ……柄じゃないんだがな」
カイは疲れたようにため息をつくと、俺の淹れた紅茶を一口のんだ。
「……美味い」
「よかった」
俺は彼の隣の椅子に座り、窓の外を眺める。すっかり元の青さを取り戻した空が、どこまでも広がっていた。
「なあ、カイ」
「なんだ」
「あんたが王様になったら、俺は……どうなるんだろうな」
ぽつりと、心の奥にあった不安がこぼれた。
王と、元騎士。身分の差は、あまりにも大きい。今は良くても、いずれ俺の存在が、彼の足枷になる時が来るかもしれない。
俺の不安を感じ取ったのか、カイはペンを置くと、俺の手を取った。
「リヒト」
真剣な眼差しで、俺の名前を呼ぶ。
「俺は、お前を離すつもりはない」
「でも……」
「俺が王になるのは、この国を、民を守るためだ。だが、それだけじゃない。王という絶対的な力があれば、誰にもお前を傷つけさせずに済む。お前を俺の隣に置くことに、文句を言わせないためだ」
彼の言葉は、あまりにもまっすぐで、俺の心の不安を溶かしていく。
「リヒト。俺と、生涯を共にしてほしい。俺の妃として、この国で、俺の隣で生きてくれないか」
それは、プロポーズだった。
王からの、正式な。
俺の目から、涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。嬉しくて、幸せで、どうしようもなかった。
「……俺で、いいのか」
「お前がいい。お前じゃなきゃ、駄目だ」
俺は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、力強く頷いた。
「……はい」
その返事を聞いて、カイは安堵したように息をつくと、俺を強く抱きしめた。
「ありがとう、リヒト」
「礼を言うのは、俺の方だ。カイ。見つけてくれて、ありがとう」
失ったものは大きかった。けれど、それ以上に大きなものを、俺はこの腕の中に得ることができた。
数ヶ月後、カイの即位式が、盛大に執り行われた。
新しい王の隣には、性別など関係ないとばかりに、寄り添う俺の姿があった。貴族の中には眉をひそめる者もいたが、民は国の英雄である俺たち二人を、心から祝福してくれた。
王冠を戴いたカイは、王の威厳に満ちていたが、俺に向ける眼差しは、森で出会った頃と何も変わらない、不器用で優しい光を宿していた。
この人の隣が、俺の帰る場所だ。
もう、迷うことはない。
俺たちは、これから始まる新しい未来に向かって、手を取り合って歩き出した。
この国で、たくさんの幸せを、二人で築いていくために。
浄化の光は、人々の心に残っていた不安の影をも拭い去ってくれたようだった。街には活気が戻り、子供たちの笑い声が響いている。
俺とカイは、王城の一室を与えられ、しばらくそこに滞在していた。
カイは、次期国王として、戦後処理や国の復興計画の指揮を執ることになった。アルフォンスが王位継承権を失った今、彼が国を継ぐのは当然の流れだった。
姿を消していた第一王子が生きていたこと、そして彼が国の英雄リヒトと共に災厄を打ち払ったというニュースは、瞬く間に国中に広まり、民は新しい王の誕生を歓迎していた。
「忙しそうだな」
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「……美味い」
「よかった」
俺は彼の隣の椅子に座り、窓の外を眺める。すっかり元の青さを取り戻した空が、どこまでも広がっていた。
「なあ、カイ」
「なんだ」
「あんたが王様になったら、俺は……どうなるんだろうな」
ぽつりと、心の奥にあった不安がこぼれた。
王と、元騎士。身分の差は、あまりにも大きい。今は良くても、いずれ俺の存在が、彼の足枷になる時が来るかもしれない。
俺の不安を感じ取ったのか、カイはペンを置くと、俺の手を取った。
「リヒト」
真剣な眼差しで、俺の名前を呼ぶ。
「俺は、お前を離すつもりはない」
「でも……」
「俺が王になるのは、この国を、民を守るためだ。だが、それだけじゃない。王という絶対的な力があれば、誰にもお前を傷つけさせずに済む。お前を俺の隣に置くことに、文句を言わせないためだ」
彼の言葉は、あまりにもまっすぐで、俺の心の不安を溶かしていく。
「リヒト。俺と、生涯を共にしてほしい。俺の妃として、この国で、俺の隣で生きてくれないか」
それは、プロポーズだった。
王からの、正式な。
俺の目から、涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。嬉しくて、幸せで、どうしようもなかった。
「……俺で、いいのか」
「お前がいい。お前じゃなきゃ、駄目だ」
俺は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、力強く頷いた。
「……はい」
その返事を聞いて、カイは安堵したように息をつくと、俺を強く抱きしめた。
「ありがとう、リヒト」
「礼を言うのは、俺の方だ。カイ。見つけてくれて、ありがとう」
失ったものは大きかった。けれど、それ以上に大きなものを、俺はこの腕の中に得ることができた。
数ヶ月後、カイの即位式が、盛大に執り行われた。
新しい王の隣には、性別など関係ないとばかりに、寄り添う俺の姿があった。貴族の中には眉をひそめる者もいたが、民は国の英雄である俺たち二人を、心から祝福してくれた。
王冠を戴いたカイは、王の威厳に満ちていたが、俺に向ける眼差しは、森で出会った頃と何も変わらない、不器用で優しい光を宿していた。
この人の隣が、俺の帰る場所だ。
もう、迷うことはない。
俺たちは、これから始まる新しい未来に向かって、手を取り合って歩き出した。
この国で、たくさんの幸せを、二人で築いていくために。
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